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コンプレックスを越える瞬間

 わたしの髪は癖毛である。それはもうくりんくりんで、もみあげがセーラームーンのようになる、と言えば伝わるだろうか、縦巻きにもみあげが乾くのだ。もみあげだけではなく、全体的に緩くウェーブがかかり、パーマ取れかけのようなヘアスタイルになる。

 パーマかけなくていいじゃん、と思われるかもしれないが、そんなことはない。パーマはゆるふわになって欲しいところがゆるふわになっているからこそ、かわいいのだ。前髪がゆるふわ縦巻きになったらそれは別に可愛くもなんともなくただの癖毛だ。

 前髪が縦巻きになる苦労を想像してみて欲しい。小雨が降ると前髪だけは濡れないよう死守しながら帰路を急いだ。雨の日や湿気の多い日が憂鬱になるような学生時代を過ごしていたのだ。

 このコンプレックスを解消してくれたのが縮毛矯正である。1階の美容室で4時間かかるのは苦痛だったが、雨が降っても平気だし、わたしの理想の女の子像「華奢で色白、黒髪ストレート」にひとつだけ近づいた気がして嬉しかった。余談だが、妹はパーマが1週間で取れるほどの硬いストレートヘアだった。お互いお金をかけ、私は縮毛矯正を、妹はパーマを当てる。お互い無い物ねだりだね、と笑っていた。

 おそらく15年くらい縮毛矯正をかけて、もうこれをかけなくなるときはおばあちゃんになるときくらいだろうと思っていたが、実はこの2年間、縮毛矯正をかけていない。

 もちろん、この状況下で美容室に行きにくいのもあったが、かなりロングヘアに片足突っ込み始めたことも理由に挙げられる。はねる、うねる髪も長さがあると重さで結構落ち着くものなのだ。ストレートアイロンを軽くかければそれほど気にならない。それに前髪も伸ばしてしまったので、はねる箇所がない。

 そして、縮毛矯正をしなくなったのを機に、セルフでカラーを入れるようになった。わたしの理想の女の子は「華奢で色白黒髪ストレート」で、ここからはどんどん離れてしまっているが、パーソナルカラーやら骨格診断を受けて自己分析を進めるうちに、髪の真っ直ぐにこだわるより、ヘアカラーで明るくすることを優先した方が自分には似合う、と思い至った。(かなり痛むのでカラーと縮毛矯正両方をする気はなかった)

 10年前あれだけこだわっていた縮毛矯正をやめたけれど、意外と「悪くないよね」と思っている。ショートヘアをこまめに維持するより、ちょっといいヘアケア用品を使ったとしても、ロングヘアでほったらかしの方がコスパも良いのでは?と思うくらいだ。ここまできたら傷んだ毛先を除いても31cm伸ばしてヘアドネーションできるところまで伸ばしてみようと思っている。



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