ゲ謎後に鬼太郎6期を完走した記録

ついにアマプラで「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」、いわゆるゲ謎が配信開始したので、ここらでアニメ鬼太郎6期について感想をまとめておこうと思います。

きっかけとか

TVシリーズは元々気になってはいたのだけども、機会がなくて見れず。それで昨年11月末にゲ謎きっかけで水木作品沼にドボンして、12〜1月で6期完走(その後布教がてらもう一周した)。

ちなみに今は5期を牛歩で見つつNHKオンデマンドでゲゲゲの女房見てる。

6期マラソン序盤のころは周囲に「なんで今更鬼太郎見てるの?」と言われてたのが、後半になるにつれ「ああ〜、今流行ってるもんね」というリアクションになってきて、これがバズってるってことか…と噛み締めた2ヶ月弱。

最初はゲ謎の答え合わせとして見ようって程度だったけど、終わってみたら予想以上に贅沢な鑑賞体験だった。

筆者の鬼太郎遍歴

鬼太郎アニメを見たことがある人なら、誰しも「世代」があると思うんだけど、私の場合はおそらく4期。年寄りをぞんざいに扱ってた女子高生が、自分もおばあさんになっちゃう話だけ異様に印象に残っており、それ以外はほぼ記憶がない。確か夕飯の前にやってたから3期の再放送かもしれないけど。

なのでどちらかというと記憶に残ってるのは高山みなみさんの5期。

5期放送時はニチアサ見るような年頃ではなかったけど、同時期にノイタミナでやってた墓場アニメにかなりハマってたので、そのついでに見てた。アマビエちゃん可愛い。

あとはこれも確か同時期にやってた実写ウエンツ版。特にファンでもないのにちゃんと映画館で見た記憶。

それから10年後の6期はリアタイ時のTwitterの感想だけ見る程度だったけど、後述の理由で自分の好みに合いそうだなと思ってたのでマイリスには入れてた。


総評

レビューサイトとかだと賛否両論だったけど、個人的にはめちゃくちゃ好みだし刺さりました。地獄少女とか、ムヒョとロージーの魔法律相談事務所の後味悪い回が大好きなので。

個々のストーリーもかなり練られてて、最近の、特にリメイク作品にありがちな「とりあえずYouTuberとかドローンとか出しとけば今風になるやろ!」って感じではなくて、一歩踏み込んで現代社会の闇を描いてたのが上手かったと思う。

原作はあまり読んでないからわからないんだけど、原作要素も丁寧に散りばめてたみたいだし。


ニチアサって長丁場だから、どうしても回ごとのクオリティにばらつきが出がちというか、こう言ったら申し訳ないけど捨て回、みたいなのもあるイメージで。だから重要そうな回だけかいつまんで見るか!と思ってたのに、いざ見始めたらどの回も面白くて全然飽きなかった。

布教する時用におすすめ回のメモもしてたんだけど、そのメモに結局ほぼ全話入っちゃってるという……。


いやーしかし、出てくる人間が揃いも揃ってド畜生ばっかりで(面白いけど)ストレスはすごい!!鬼太郎はただただ可哀想!

その一方で、筆者は孤独なヒーローもこれまた大好物なので……ごめんきたちゃん……

なんか鬼太郎周りが全般的に「誰かの願いが叶うころ」の歌詞みたいな世界観なのがさぁ……つらいけど沁みるよねぇ……


キャラごとの所感

ねずみ

なんかさぁ……ゲ謎での描写を差し引いても、凄く印象に残るキャラだったね、ねずみ男。

今までねずみ男ってコメディリリーフというか、話を転がすキャラってイメージが強かったけど、6期のねずみは序盤からちょっと様子が違うぞ……?となりながら見守ってた。

なんなんだよ、あの「鬼太郎と食べるラーメン」の重みはよ、おかしいだろ

私が愛してやまない、「超えられないライバルに目が眩んで愛憎入り混じってる二番手」タイプのキャラじゃん……龍馬伝の岩崎弥太郎とか、ウィキッドのグリンダみたいな……

社会的、あるいは第三者的には自分の方が成功してるのに、どうにもあいつには勝てた気がしねえ、って劣等感拗らせてるやつ。しかもライバルのほうも敵意むき出しにしてくれてたらいいのに、向こうはなんやかんやで自分のこと親友って思ってるっぽい。妬ましくて眩しくて、逆光でよく見えないけど、向こうがこっちに向かって邪気のない微笑みを返してくれていることはわかる。だから余計それが悔しい……そんな関係性。最高に人間臭くて(人間じゃないけど)好き。

名無し編で鬼太郎に喝を入れたのも、終盤に鬼太郎を殺されて人類滅ぼそうとしたのも、ねずみじゃなきゃできなかったと思わせるところがニクい。

普段は鬼太郎を騙すわ利用するわで酷い扱いしてる癖に、最後にねずみ男が希望を託すのは鬼太郎なんだよな……

そして普段の所業を棚に上げて縋れるのも、奴のキャラクターだからこそできること。

それはねこ娘でもまなちゃんでもない、ねずみ男にしか立てなかったポジションだ、って描き方が最高だった。

それにしても、鬼太郎とは昔からの腐れ縁っぽかったけど、一体昔何があったのか気になる。水木とねずみが面識あるので、恐らく水木絡みなんじゃないかとは思うけど。ねこ娘とかに出会うより前に何かでかい出来事があった気がするんだよな……

まなちゃん

まなちゃん大好きです。というか最終回が尊過ぎてまなさんて呼んでます。変に母性も女性性も託されず、等身大の同年代の友達、て感じが令和の人間側主人公(あえてヒロインとは言わない)って感じで良かった。恋愛を持ち込まなかった制作陣の判断は大英断としか言いようがない。同性とは割とベタベタ絡むけど、異性とは一歩引いてる感じがリアルな女子中学生だなって思った。

あと、この手の主人公に近いヒロインって、やたらと善良さを強調されすぎて聖人化しがちだけど、等身大に失敗するし浅はかなキャラだからこそ、彼女の持つ善性がご都合やお為ごかしじゃない確かなものだって信じられた。

有名な、のび太の結婚前夜でしずかちゃんのパパがのび太を評する台詞に「あの青年は人のしあわせを願い、人の不幸を悲しむことのできる人だ。それがいちばん人間にとってだいじなことなんだからね」ってやつがあるけど、まなちゃんもまさにそれを体現してる子だなあと思う。

あとは細かいところだけど、漢字表記が「真名」だとわかる展開はかっこいいよね!名無しに名前をあげる展開も、物に生命を吹き込む一般人ヒロイン、っていう点でハウルのソフィー(話し掛けたものにその内容通りのアイデンティティを与える)を想起させてカッコいいわ〜。


鬼太郎

5期の印象強くて、そこから比べるとめっちゃコミュ障だな!てのが第一印象。

ゲ謎鑑賞後に5期鬼太郎とウエンツ鬼太郎も見たのですが、なるほどこうして見ると、6期以外の鬼太郎たちの背後には水木の影がない……。人間ではなく人外にまっすぐすくすくと育てられた感じがある。

反面6期鬼太郎はなんかこう、危うさがすごい。曲がりなりにも他の期とは違って、五体満足な(言い方)親が居たのに何故!?と思ったけど、逆にだからこそ他の鬼太郎よりも、妖怪としてのアイデンティティが揺らいでるのかな……とも思う。

他の期だと完全に人外側として、人間の気持ちはわかりません!てスタンスで接してたりとか、逆に強い存在として、下位存在である人間を保護してる、みたいな印象が強い(全期見たわけじゃないので的外れなこと言ってたら申し訳ない)。対して6期は妖怪と人間、双方の気持ちも事情も汲めるだけに余計立場が苦しくなってる……

そして制作側もその立場の苦しさにフォーカスして問いを投げかけるような話が多かった。

個人的お気に入り回

全然絞れてない……そして挙げた以外にも良い回いっぱいあります。ホントにどの回も良くて……
核心は書いてないけど、オチの傾向は分かるように書いてるのでネタバレ注意。

ギャグ

・河童社畜回(9話)
 河童×社畜という組み合わせが既に面白いのに、後半のバトル(?)のテンポがものすごくて笑った

・インスタ女回(67話)
 老舗アニメでありがちなインフルエンサーを面白おかしく取り上げた回だけど、ちゃんちゃんこが映えバトルに引きずり出されたところで笑った。あと縄文人と絡めてきたアイデアもすごい

・鳥取回(65話)
 アニメのギャグ回として5年、あるいは10年に一度の破壊力だった。あの伝説の(筆者調べ)境界の彼方6話に匹敵すると思う。その上彰司おじさん実在するとかずるすぎるでしょ
彰司おじさんの活躍は序盤(16話)でも見られるぞ!


ほっこり

・妖怪アパート回(23話)
 好き度で言うと全エピソード中ナンバーワンかも。昭和史とほっこり人情ものが合わさってすごく綺麗にまとまってる。

 その後の回で住人たちのその後のエピがあるのも嬉しい。

・雪女&ギャルゲ回(39話)
 カルチャーギャップネタとギャルゲにひたすら笑わされた後、真面目に恋愛ものしてたのがよき。最後に映される複数の〇〇含めて好き


熱い

・バックベアード編全般
 西洋妖怪だからか、絵面がMCUとかDC作品っぽくておもろい。というかとにかくアニエスのキャラクターが魔女っ子としての完成度高すぎ。最後まで「鬼太郎にこんなイマドキの美少女いていいのか……?」て謎の罪悪感に駆られながら見てた。


情緒破壊系

・おどろおどろ回(43話)
 あれ?シチュエーションが詰んでる!!最後の依頼人の一言だけでも辛いのに、それがのちに繋がってくるとか容赦ねえよ……

・黒坊主回(62話)
 ねずみのところに書いたこと全部この回に詰まってる。チャーシューの重みよ……。

・まぼろしの汽車(93話)
 鬼太郎でループもの、というだけで面白いけど、6期のねこ娘だからこその切迫感のある物語で固唾を呑んで見守ってた。


ヒヤリ

・幽霊電車(7話)
 地獄少女っぽい雰囲気&オチで良かった。鬼太郎が「あちら側」の回は総じて良作。ちなみにこの回が最高視聴率らしい。

・さら小僧回(40話)
個人的に好きな自業自得系ホラー。あとくしゃがら的な現実に浸食してくる怖さもある。

・泥田坊回(54話)
 後味悪さナンバーワン。誰かが決定的に悪いわけじゃない問題ほど、辛いよねぇ…鬼太郎のこと抱きしめてよしよししてあげたい。

・サボテン&マンション回(59話)
 スタッフのガチのジャパニーズホラーをやるぜ!て意気込みが凄かった。オチも(ホラーとして)美しい。

・多頭飼い回(77話)
 野木亜紀子脚本か!?て思うぐらいガチ社会問題ネタだったな…。猫関連ということもあり、猫娘がいつもの鬼太郎ポジションになって、彼の辛い立場を追体験することになる構成も上手い。

・妖怪大同盟(95話)
 まごうことなきトラウマ回。いい歳した大人なのに「大人なんて信じられねえ!」て叫びたくなる。あと被弾描写が妙に生々しいのも最悪

おわりに

ニチアサ帯アニメでこれだけ脚本も作画も安定してるの素直に凄いなって思う。

他の期に比べて暗い、とか色々言われてるけど、少なくとも大人は見て損しないと思うから是非見てほしい。
……まあこれを読んでいる人の8割はゲ謎履修済みだと思いますので、もっと作品世界を知りたいのなら6期は必修だよ、とだけ言っておきたい。
思った以上にすべての回に養父の存在がちらつくので、細かい台詞や鬼太郎および目玉の一挙手一投足にキャッキャできるよ!

※ただ、みんなが集団幻覚見てるほのぼの日常はTVシリーズにもやっぱりありません。なんで……?どこ……?

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