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ちょっと長めの図書紹介⑪

「片づけの学校」──のように
片づけを学ぶ本はそれなりにあるが、
「学校の片づけ」を学ぶ本は多くない。
検索してみたところ
ヒットしたのは本書のほかに、
「職員室」と「保健室」の片づけ、
それに関係する本が1冊ずつだけだった。
(「お金の学校」本は多いが、
 「学校のお金」本は少ない現象と同様)

本書では
「片づけ」について
不要なモノを取り除き(整理)
乱れているモノを整え(整頓)
使うモノを使いやすくしまう(収納)
──という一連で定義している(p.30)
そのなかでも、
最初に取り組むことは
「整理」であり
「整理ができれば
 片づけは半分終わったようなもの」(p.31)
だと述べるくらい
重要なポイントとして「整理」を捉えている。
それくらいモノがあふれている時代であり、
それによりに
「片づけ術」の必要性も
叫ばれているのだろう。

個人的に
「片づけ」は好きなほうである。
それも「整理」と称した「廃棄」が大好きだ。
学校を異動すると
無性に「片づけ」たくなるが、
そのときに悩むのが「廃棄」物の選別である。
個人的には不要なモノだと思うが、
必要なひともいるかもしれない……。
そんなときに使う技は「隔離」である。
期間を1年間とし、どこかに「隔離」する。
独断と偏見だが、
1年間使わないモノは不要なモノである。
昨年4月に「隔離」したモノがあるが、
そろそろ「廃棄」してもいい時期が
やってくる。
──ワクワク♪

所々に置かれた「コラム」で
紹介されているスゴ技も試してみたくなる。
「ペットボトルのささくれないカット技」
「ラベルライターでつくったラベルを
 キレイに剥がす技」などは実践してみたい。
──ワクワク♪♪

しかし、ワクワクしながら
「片づけ」に着手する人間ばかりではないし、
「片づけ」は好きだが、
何から手を付けるべきかという問題もある。
個人的なモノや場所以外の
片づけはスタートが肝心となるのだ。
そのヒントとして本書には
「職員室の片づけの進め方」が
用意されている。
その具体は本書で確認してほしいが、
概説すれば、
みんなの意見を吸い上げ、
問題(改善が必要な点)を
見つける方法である。
ひとりで考えていても
浮かんでこない問題の洗い出しや
考え方の偏り(先の「隔離1年」論など)を
修正できそうである(pp.114-117)。

「片づけ」の音頭をとるのはだれか──
片づけを実行していく組織として
プロジェクトチームの結成が提案されている。
しかし、
このようなチーム編成が困難な場合は、
労働安全衛生法に基づく、
衛生委員会がその職務(片づけ)を
担えないだろうかと考える。
労働者の安全と健康を確保するとともに、
快適な職場環境の形成を促進することを
目的(第1条)とした法律に基づき、
その達成に向けて調査や審議をし、
事業者に対して意見を述べることができる組織
それが、衛生委員会(第18条)である。
文部科学省の調査(2017)によれば、
高等学校では99.7%、
小学校で89.5%、中学校でも87.5%とされ、
設置率も高いため、
新たに組織を立ち上げる負担も減るし、
校内編成予算だけでは
実現困難な問題も
衛生委員会から具申をあげることで
より問題解決に近づくだろうと考える。

事務職員の「片づけ」領域による活躍──
本書には事務職員が頻繁に登場しているし、
「おわりに」でもフィーチャーされている。
「片づけ」には
モノとカネが絡むからであろう。
文房具や消耗品の在庫管理、
設備保守や備品管理も事務職員の職務である。
しかし、
「片づけ」が事務職員の職務か──
という反証は当然ある。
たとえば、
文部科学省(2020)が示す、
事務職員の標準職務に「片づけ」はない。
事務職員の専門領域は「総務・財務」であり、
文部科学省の言葉を借りれば、
「学校組織で唯一の
 総務・財務に通じる専門職」とされている。

そして、
「片づけ」は趣味や感覚ではなく、
「片づけ術」として、
本書でも位置付けられ
〈理論的技術〉が必要な領域ともなっている。
そのため、
「総務・財務等」領域に通じて
事務職員がその専門性を通じ、
「片づけ」をつかさどる理論を高め、
研修により技術を向上させていくという
必要性や方向性も考えられなくもない。

本書の価値は、
「片づけ」の方法を示す説明書に留まらず、
「片づけ」の「仕組みを作り」を
進めるための理論書でもある。
多くの「片づけ」実践から知見を抽出し、
普遍的に「仕組み作り」を進めていくための
ノウハウ──分ける、色を使う、見える化する
      動作を楽にする、動線を整える
という仕組み作りに
必要な仕掛けが詰まったテキスト、
いやバイブルともいえるだろう。

「片づけ」の理論を学び、
「片づけ」を実践し、
それを校務分掌として
継続させていくためには
その領域の専門性をだれかに充てるか、
その専門職を
配置しなければならないと考える。
「片づく仕組み作りが
 働き方改革を進める」(p.7)と
いわれるように
「片づけ」の〈理論的技術〉を生かすことで
喫緊の課題である
「働き方改革」の
前進にも繋がると述べている。
それを事務職員が担い(関わり)、
「働き方改革」の取組として
「片づけ」へコミットメントしていくという
可能性も今後の働き方として
なくもないだろう。

冒頭で紹介した「学校の片づけ」本、
職員室と保健室の片づけに続き、
『事務室の片づけ術』が
事務職員により執筆され、
学事出版から
発刊される日も近いかもしれない。


編集担当・若染雄太さま、
ご恵贈ありがとうございました。

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