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ちょっと長めの図書紹介⑱

「ゆっくりでいいんだよ」──。
お言葉に甘えていたら
発売日から1年以上も経過してしまった。
書斎の積読スペースに手を伸ばすと
「ゆっくりでいいんだよ」
「あせらなくていいんだよ」──と
言われているようで、
甘えっぱなしの日々、いや月々であった。
……そんな反省の意味も込めて
レビューしてみる。

本書のテーマは、
不登校と子どもの権利で貫徹されている。
理論本ではなく実践本であることから
体験記が多く読みやすい。
しかし、そのスケールは大きい。
序章から
「国連(スイス・ジュネーブ)
 へ行こう」と始まる。
その目的は、
国連「子どもの権利委員会審査会」傍聴──
しかも、旅慣れているわけでもなく
「ここに至るまでには、
 躊躇と戸惑いが
 ずいぶんあ」ったと述べている(p.11)。
それを後押ししたのが、
家族や仲間の存在だったともある。
きっと著者の熱い想いが
周囲を動かしていったのだろう。
「審査会」の報告内容もさることながら
著者周囲の〈出会い〉にも注目したい。

第1部は、
ご子息について書かれている。
「気がつけば不登校の壁を乗り越えていた
 第二の誕生を迎える」と題し、
「不登校のシグナル」(第1章)から、
「不登校からのたびだち」(第2章)を経て、
「鳩間島への単身転校」(第3章)
「夢への挑戦」(第4章)が綴られている。

「まさかわが子が不登校に」(p.20)
中学へ進学後、5月の連休明け──
「玄関先で体が固まって動けな」い、
「息子の固まった体にさわった夫が驚」き、
「学校に行かなくていい」と叫んだ(p.21)。
これが不登校の始まりだったと書かれている。
その後、
「不登校は、
 自分に突き刺さってくる社会への抗議」
「大人は、子どもたちの声や
 思いをしっかり受け止めて、
 人間らしい社会と歴史を
 つくって行きましょう」(三上満氏・談)
という言葉に出会い、
「不登校に対する
 認識が変わ」ったという(p.22)。

本人も
「ネパール1か月の旅」(p.25)を経て
〈学ぶとは、学校とは〉という価値観の再考
そして、鳩間島への転校を決意した。
(「鳩間島」:沖縄県竹富町)
■https://www.town.taketomi.lg.jp/about/hatoma/
書かれているエピソード、
そのほとんどは
都会では体験できない貴重なものである。
著者の言葉で表せば、
「遊びは子どもの主食!
 子どもを生き返らせる
 エネルギーの源」(p.37)体験であろう。
これらの経験が
「不登校の子どもを持つ
 親たちの交流のつどい」(2004)に繋がり
2006年に誕生した
「山梨不登校の子どもを持つ
 親たちの会『ぶどうの会』」へと発展した。
■https://budonokai.jimdofree.com/

その定例相談会は
今月(2023年11月末)で206回目を迎え、
コロナ禍を経てZoomによる
オンライン参加も可能となっている。
 ・親が「一息つける場」
 ・聞いているだけでもいい
 ・初めての人歓迎ですよ
 ・関係情報のお知らせ
 ・不登校ミニ講座
 ・自由に何でもしゃべれる雰囲気
──以上のコンセプトは同会ブログより引用
■https://budounokai88.blog.fc2.com/

続く、第2部では
「わが子と歩む
 学校事務職員人生42年」が綴られている。
ここでも「人生の転機」(p.61)とされた
出会いから始まり、
その実践が紹介されている。
やはり、キーワードは出会いである。
ここでわたしと著者の出会いを紹介しよう。
約15年前に書いた実践連載の一部で
約20年前の出会いを記している(ややこし)。

 その大会のレポート集を読むと、
 「子どもにアンケートをしている」という
 山梨のH.Sさんの
 レポートが載っていました。
 この時が子どもアンケートと
 子どもの権利条約との出逢いでした。
 当日、この方に是非逢いたい! と、
 思い夕食会場で名札をチェック。
 「あっ! H.Sさん」と、
 つい声に出してしまうほどの喜びでした。
 彼女からいただいた
 たくさんの資料の中に
 校内研修の資料があり、
 学校事務職員が関わっていることが
 わかりました。
 その後、早速実践。
 それからずっと続いています。
──「出逢いを紡ぎ、わたしを織り成す」
『学校事務2010年3月号』(学事出版)

このH.Sさんこそ、
著者──鈴木はつみさんである。
本書で紹介されている
「校内研究会」での提案や
「生徒むけ、父母むけ『学校事務だより』」、
「子どもの権利条約」実現のための
「学校のことアンケート」
そのすべてを真似してみました。
そう考えるといまのわたし、
その半分くらいは、
〈鈴木はつみ〉でできているのだ(笑)。

学校現場は離れたものの
子どもの権利を第一に考えた理念や実践、
前出「ぶどうの会」事務局をはじめ、
子どもの権利・教育財政デザインスペース代表
子どもの権利条約市民・NGOの会共同代表
子どもの権利条約31条の会会員
山梨の子ども白書編集委員など(奥付参照)
まだまだ最前線でご活躍されている。

そして、
巻末には本書の協力者として名を連ねている
梅原利夫氏(和光大学名誉教授)と
増山均氏(早稲田大学名誉教授)との座談会
「ゆっくりでも大丈夫」が収録されている。
「お二人との出会いがあったから
 今の私があるのです」(p.149)
まさに、ここでも出会いが語れている──。

やはり出会いと仲間、
そして家族がキーワードの本といえるだろう。

微妙な図書紹介となってしまったので、
秀一な出版社の紹介文を
引用して終わろう(笑)。

 わが子の不登校、
 小中学校事務職員としての実践、
 そして不登校の子どもを持つ親たちの会の
 代表としての活動。
 そこからあそびの大切さ、
 文化・地域の力をいかしていく
 余暇の大切さ、
 子どもの声を聴き活かしていく大切さが
 生き生き語られ、
 子どもの権利条約に繋がる。
 自分らしくあることが権利として
 保障されているとわかる本。


#子どもの権利条約
#児童憲章
#学校事務職員
#不登校
---
https://www.shinnihon-net.co.jp/general/product/9784406066556

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