アカシア属論争について考える

ミモザの名で知られている、フサアカシアはオーストラリア原産のマメ科ネムノキ亜科の植物で、ポンポンのような花や、鳥の羽のような葉は、オジギソウやネムノキに似た いかにもマメ科という感じの植物です。春先に鮮やかな黄色い花をつけることから、イタリアやフランスでは春の花として好まれているようです。

名前のとおりアカシアのなかまで、学名はAcacia dealbata。このアカシアの名前、なかなかの歴史を持った名前でした。

もともとアカシアといわれてAcacia niloticaと名付けられていた植物の現在の学名はVachellia niloticaです。
Kewscience(https://powo.science.kew.org/)によれば、この植物(Acacia nilotica)は、3500年以上前のエジプト王朝時代に薬として使われていました。西暦40年から90年に、ギリシャ人医師で植物学の父と呼ばれているペダニウス・ディオスコリデスは、医薬物についての本に、葉や果実のさやからの抽出物の調製についての記述をしており、そのなかでアカシア属に由来するものを「akakia」と呼んでいます。
アカシア属の名前は、リンネ以前の文献で広く使われていました。
1753年、リンネはそのなかの39の種類をミモサ属に入れ、これらの内2種をMimosa scorpioidesとMimosa niloticaとしました。これらはのちに、アカシアに変えられ、その中のMimosa scorpioidesがAcacia niloticaだと考えられている 。
このあたりからアカシアをミモザと呼ぶようになったのでしょう。

アカシア属はおよそ1350種が世界中に分布しており、そのうちおよそ1000種類がオーストラリアに分布しています 。形態学的および生化学的性質に基づき、1986年にPedleyによって、アカシア(Acacia)属161種、セネガリア(Senegalia)属231種、ラコスペルマ(Racosperma)属960種に分けることが提案された 。この案ではAcacia niloticaが属しているAcacia属は最も小さい属になっています。アフリカの植物学者は、Acacia niloticaは、アカシア属として初めての名前づけられたものでありアフリカ原産であることから、アカシア属の名前は、アカシアニロティカを含んだものにすべきだと主張しました。
これに対して、960種類のラコスペルマ属Racospermaとして提案された多くの種はオーストラリアに見られます。2003年、オーストラリアの植物学者は、アカシアはオーストラリアのシンボルでもあるので、オーストラリアのアカシアはラコスペルマ属ではなくアカシア属にすべきだと考えていました。このオーストラリアの提案は2005年の第17回国際植物学会議で認められました。しかし、その後もオーストラリアとアフリカの論争は継続されました。2011年の第18回国際植物学会議でこの問題を解決するために、8人の分類学の権威者がアカシア属の再命名について実用的な面からの見解を示しました。最終的に、アカシア属をオーストラリアの種のみに使うということが第18回国際植物学会議で承認され、この論争は決着しました 。
その後、南アフリカの研究者は140種類の南アフリカの種を含めたアカシア属についての詳細な形態学的解析、DNAの解析に基づく系統学的研究を行い、この研究の結果からアフリカの樹種については、セネガリア(Senegalia)属とウァケリア(Vachellia)属に分類しました。その結果、アカシアニロティカ(Acacia nilotica)はヴァケリアニロティカ(Vachellia nilotica)になりました 。


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