某ボーカリストを殺めかけた話。
人には絶体絶命のピンチに陥る事が人生でいくつかあると思う。
代表的なものは「不意な便意を我慢する時」だ。
これは誰しも必ず経験したことがあると言っても過言ではない。
あれは10年以上前の話だ。
とある曲のボーカルレコーディングをしており、プロデューサーとしてレコーディングに立ち会ってたいたが、作業が遅くなり深夜になってしまった。
ボーカリスト(女性)を自宅まで俺の車で送るのに、スタジオを一緒に出た。当時のランティスのスタジオから駐車場(コインパーキング)まで少々距離があり、そこまで歩いて向かった。
清算をしようとしたその時である。
奴が来た。終末の笛を鳴らしながら便意が突如俺を襲ったのだ。
しかも奴は丁寧にカウントダウンまで告げた。
便意「あと数分でアウトッス。強制射出します。」
そこから俺は無言になり、全神経と全チャクラを肛門に集中させた。
ボーカリストが何か話しかけてくるが、もう聴覚が役に立っておらず正直何を言っているかわからない状態だった。
脳内ではミサイル格納庫の入り口が煙を出して開閉しようとしているのを、エンジニアが「地球を滅ぼしてはならん!」と一生懸命隔壁を閉じようと孤軍奮闘している状態だったからだ。
さらに頭の中では最寄りのトイレへのルートの最適解を弾き出すのに精一杯だった。無言でボーカリストを車に乗せ車を出し、ランティスの地下スタジオに戻った。まだエンジニアがいればチャンスがある。白井君ならまだいるに違いない!!
が。
もうエンジニアが鍵を閉めて帰っていたのだ。
白井ィィーーーー!!!!!!
お前何帰ってんだよ!!!!(作業が終わったから)
絶望と共に進む破滅へのカウントダウン。
BGMはなぜかXの「Say Anything」が流れてた。
まだだ。まだ戦える。
でももうダメかも。
そんな思いが交差していた。
たまらんのはボーカリストの方だ。
今日のレコーディングの結果を聞きたかったのが話しかけても完全に無視され、「えっ、今日ダメだったのかな…」「bambooさん、なんか機嫌悪くなってる…」と車内の空気が無駄に緊迫していた。
この時点で俺の肛門括約筋は極限&限界を迎えそうになっていた。
女性ボーカリストを車内に乗せている状態で派手に脱糞をキメてしまう可能性が、95%を超えていたのだ。
人間極限状態になると何を考えるかわからなくなる。
当時の俺はこの時に「このまま漏らすぐらいなら、漏らした瞬間奇声を発しアクセルベタ踏みしてわざと事故ってこいつを殺して俺も死のう…。」とマジで考えたのだ。
無言で車を出して進んでいたら、幸いにも視界に町のホットステーションが目に入った。店の前に車を止めてダッシュで店内へ。店員にトイレを借りれるか聞いたら大丈夫だったのだ。
俺が石油王ならこの時バイトしてた奴に1000万円ぐらい入ったアタッシュケースを渡してた。それぐらい感謝の気持ちでいっぱいだった。
数分後、排便による天にも昇る快楽と、間に合った安堵感、人を殺めなくて良かったなぁ!という安心感により、ドーパミンが出まくって店を出る時にスキップはしているは、「あったらしい朝が来たー🎵希望の朝がぁー!」と大声で歌いながら車内に戻った。
たまったもんじゃないのはボーカリストである。
さっきまでめちゃくちゃ怖い顔で無言になり、何を話しかけても完全無視していた相手が急にテンション変わって「さぁ!帰ろうか!遅くなってごめんねー!」とか言い出したのだ。
「ど、どうしたんですか?」と聞かれたので「うんこ漏れそうで我慢してた。漏らしたらお前殺して一緒に死んでたわ。」と素直な気持ちを伝えたら、「ヒェ…」とドン引きしてた。
でもしょうがないよね。
人生で有数のピンチだったから。
今でも町のホットステーションを見ると、あの時の事が不意に過ぎる。
その時のボーカリストが今でも歌えてるのは、町のホットステーションがあったからなのだ。
サンキュー、ローソン。
ソーリー、AIRI。
〜Fin〜
大人気記事です。謎のプロデューサーと娘を持つ父として戦った記録。
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