ミナミゾウアザラシ

人形やぬいぐるみと棲むというのはかつての人々が大概やってきたが、近ごろは殊にそれをしているという主張が(自分の選択によって)目に入っていやけがさしていて、ただ好むとも好まざるとも自分もまたその状況にあり、頂き物のミナミゾウアザラシの無垢な眼と棲んでいる。

かれはいつも気がつくとこちらを見ている。
壁や天井を見ている時もあれば、寝具に埋まっていることもあるが、必ずひとつの視線がある。

かれ以外にもうちには大事なぬいぐるみが沢山あり、それらひとつひとつが視線を持っているが、なぜかミナミゾウアザラシだけがかつてないほどに真っ直ぐこちらを見つめてくるのだった。

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