海がきこえるHQ5_クロップ_補正

『海がきこえる』が大好きな理由  ~ジブリの異端作品~



ジブリ作品の中で唯一、

「大好物」と胸を張って言える作品である。

それは一言で表すなら、

「ジブリ作品の中では異端だから」という事になるだろう。




「”宮さん” がノータッチだった、唯一の作品である」

と、ジブリの名プロデューサー・鈴木敏夫氏が

語っていた。


1993年、最初のTV放映を観て衝撃を受けて以来、

25年程たった今でもこの作品を溺愛している理由は、

この「宮さんがノータッチだった」事が大きく関係しているのは、

間違いない。


おれは… アンチという訳ではないが、

これ以外の、所謂 ”ジブリ作品” を、

素直に観る事が出来ない、ひねくれ者である。



まともに最後まで観た作品と言えば、


・風の谷のナウシカ

・天空の城ラピュタ

・となりのトトロ

・魔女の宅急便


…くらいだと思う。

(それでジブリを語るな、という批判はごもっとも。だが、続けます。)


「紅の豚」とか、「千と千尋」も観た気がするが…

エンドロールまで観たかどうか… あやしい。

途中で止めた可能性が高い。



”ジブリ作品” は、エンターテインメントとして傑作であるのは

間違いないだろう。

世界中の多くの人々から支持を得ているのが、何よりの証拠だ。

特にナウシカラピュタは、見応えがあった。

楽しかったし、「多分、”いい作品” だ…」という印象を持った。


だが… 何度も観る気には、なれなかった。

"いい作品" である事を、頭では理解できても、

心のどこかで、素直に受け取れない自分がいた。

少なくとも20年以上、TVで再放送されても観ていない。


理由は、「自分にとってリアルに感じられない」、

ゆえに、「心を打たれない」からだ。


物語なんだから、作りものなんだから、リアルじゃないのは当たり前、

という意見もあるだろう。

だが、その作りものの世界を通して、

何か、現実に通じるものを感じ取るからこそ、

人は感動するのではないか…?

少なくともおれは、そういうものをアニメに期待してしまっている。



「リアルに感じられない理由」とは何か…?


これについては、

社会学者の宮台真司氏が同じような事を言っていて、

激しく同意したのだが…


ナウシカやシータという、

女神のような、観音様のような、慈愛の塊のような女性に、

現実にはお目に掛かれないという事。

女性というのは、

「自己犠牲を払ってでも、世界を救う」という性質ではない

とおれは思っている。


これは、女性が ”子供を産み、育てる” という役割を担っている事と

深く関係していると思うのだが、

「自分(や我が子)の命を守る為には、他人を犠牲にする事も止む無し」

という生命力の強さが、女性の本質ではないか…?


これは女性をディスっている訳ではなく、むしろリスペクトだ。

そうあってくれないと、困るのだ。

人類が滅亡しない為には。


男性の生命力は、女性のそれに比べて弱い。

平均寿命の差は、それを物語っていると思う。



とにかく、そういった理由で、

ナウシカら、現実にはいないタイプの女性主人公が導く結末が、

「実際には絶対あり得ない、物語然とした終わり方」

であると感じられてしまう。

リアルではない、と。

(※『トトロ』に関しては少し違うが、物語自体のファンタジー性が強く、
   リアルに感じられない点では同じ。)


もしかしたら世の中の多くの人は、

その「あり得ない物語」を欲しているのかも知れない。

だからこそ、支持されるのかも知れない。


だとしても、おれにはその感覚が無いのだ。

楽しいと感じる事はあっても、感動出来ない。


「現実ってもっと、エグいし、

 理不尽悲惨な結末を迎えたりするもんだよね…」という、

「荒んだ現実観」が邪魔をする。

所謂 ”ジブリ作品” を素直に観る事が出来ない、と言うべきか…。

とにかく、ダメなんだ… おれには…   orz,,,



そんなおれにとって、

「海がきこえる」は革命的であった。


これは、亡くなって久しい氷室冴子氏の原作小説をベースに、

アニメ版の、オリジナルの結末が用意されたストーリー。


ものすごくざっくり言うと、

大した事件が起こらない、淡々とした高校生ラブストーリー」だ。


登場人物はごく普通。欠点が多々ある。


”ラブストーリー” と呼ぶのも躊躇われる位、浮かれた展開がない。

その点において徹底しているのが、最大の特色だ。

カップルが成立する訳でもなく、

むしろ最後まで喧嘩したりすれ違ったりし続ける、主人公とヒロイン。

「好き」という気持ちにすら、なかなか気付かない。


だが、「確かにこれはラブストーリー… だよな…」と、

ラストシーンでほのかに感じさせて、終わる。

その、さじ加減が、絶妙なのだ。


上品な純文学のようだ。

下品なおれには美しすぎる、眩しすぎる。




リアルなのは、”大事件の起こらなさっぷり” である。


ドラマチックな、”物語然” とした事がほとんど起こらないからこそ、

「現実にありそうな話だな…」と感じる。

これが、人生に淡い希望を持たせてくれるのだ。

「生きてたら、こんな感じの出来事が、いつかあるかもな」と、

思わせてくれる。



”現実って、そうそうドラマチックでもないし、

ろくでもない事も多々あるし、

完全なるハッピーエンドなんて中々無いもんだけど、

生きていれば、キラっと輝く一瞬も、たまーにあるから、

捨てたもんじゃないよね…”


みたいな、静かなメッセージだ。


それが、いい。

そこが、いい!



万人受けは、しないのかも知れない。

でも、ジワジワくる作品。

一部熱狂的なファンがいると言われている作品。(←おれの事だ)


時代を考えると、希望の見えない人が増えている今

意外と共感を呼ぶのでは? とも思う。


少なくとも、

25年経っても色褪せない、普遍性がある。



ストーリーを説明しようとすると、「ほぼ全部言ってしまう事になる」位、

事件が起こらない話(かつ、尺が短め)なので、ここでは省くが…


賛否両論あった、原作小説と異なるラストシーンを観ると、

歳を取った今でも、爽やかな青春の風が吹き抜けて、

「恋してぇー!!」と叫びたくなる。


そして、ヒロインのリカコ=「元祖ツンデレ」は、おれの大好物。

その筋にもおすすめ!


夏だよ…

恋の季節なんだよ…!!



…観よっと。




※余談だが、

氷室冴子氏の原作小説は、「淡々としている」、

「ラブストーリー感が限りなく薄い」という点において、

アニメ版より凄い


でもおれは、アニメ版のラストシーンが大好きです。



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