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文字が読めないことを伝えてくれた~Sさんの勇気~

#写真好き #笑顔の写真を集めるSさん #京都府綾部にはコウノトリが繁殖 #文字を読めない告白 #上記画像はSさんの撮影 #なんじゃもんじゃの花 (京都府福知山市 頼光寺)

写真好きSさんとの出会い


写真好きは、旅をするとお互いに声を掛け合って、何に興味を持って撮影しているのか話したりする。

一年前の3月下旬、私は三世代家族で女子旅を計画し、京都府の舞鶴市に宿泊し、そこを拠点に伊根の舟屋や天橋立、舞鶴の赤レンガ倉庫群や海上自衛隊の艦隊を遊覧船で観光した。

舞鶴の赤レンガ倉庫群は、地域住民のみならず観光客にも開放されていて、椅子やテーブルも広大な倉庫内にゆったりとした空間で並べられている。この贅沢な空間を三世代の女子が旅の途中、疲れた高齢の母を心配し、倉庫群を活用したイベントで購入した地域のお菓子や飲み物を頂き過ごしていた。

そこに写真好きのSさんが近づいてきて、
『写真を撮られ』
と、声をかけてきた。
年のころは、70歳後半かと思われ、白髪の多い丸刈りに整えられた頭を載せた男性だった。

話せば、人を撮るのが好きで、笑顔の写真を撮ることを楽しみに、カメラを構え、シャッターを押していると聞かせてくれた。

小休止中、女子3人にカメラを向け、シャッターを押していたSさんに、海上自衛隊の艦船を海から眺めようと移動することを告げると、私たちが遊覧船に乗るまで休むことなくシャッターを切る音が聞こえていた。
一緒に遊覧船には乗らず、私たちが遊覧を終えて赤レンガ倉庫に行くと、Sさんの姿はなかった。

Sさん撮影 京都府綾部市の自然

翌日再開の約束


赤レンガ倉庫で過ごしたわずかな時間に、Sさんとの会話から京都府綾部の出身で、住所も知ることとなり、電話番号を交換した。
Sさんの電話を見たとき、ガラケーだったのでLINEやTwitter、Facebookをツールとするつながりは無理だと思って、電話番号を交換した。
お互いに連絡を取ろうと思えば、電話がツールとなる準備はしておいた。

今回の度を終え、舞鶴から京都への特急に乗車する前に、Sさんから電話連絡が入り、前日撮影した写真をプリントアウトしてあるので、渡したいという連絡がSさんから私の携帯に連絡が入った。舞鶴の赤レンガ倉庫群で落ち合うことを約束し、女子3人も車に乗り、約束の場所に向かった。

3世代の女子3人が、ニコニコと笑顔をしている画像を数種類、A4サイズにプリントして、福井県小浜市の『伊勢屋』のお菓子と一緒に届けてくれた。
人懐っこく、Sさんの笑顔は私たちを警戒させず、まるで無邪気な子どものようだった。


Sさん撮影 京都府福知山市 頼光寺

話は心から相手を知ろうすること


写真の話をするときの話題の一つに、京都府綾部市には、コウノトリが数年来繁殖する場所があることと、その様子を写真に収めることを趣味にしているが、高いところに巣を作るコウノトリのヒナを撮影することがいかに困難か語っていたSさんの語る様子が一所懸命で真剣な眼差しだったのが、印象に残っている。
この、Sさんと私の一連の会話を、そばで聞いていた娘と母は、
『よく、言ってる言葉も内容も、かわかるね~』
と、私に言っていた。

文章の脈絡から何を言っているか予測し、本当にわからない地元の言葉は、聞き返して確認することで日本語なら大抵は通じると私は思っている。
全ては相手を知ろうとすることから、会話が始まると思う。

笑顔の写真収集と共感

 
あの日から、一年経つSさんとの出会い。
いまでも、撮影した画像をプリントアウトして交換している。
その度に、ちょっとしたお菓子と手紙を添えていた。

今年のゴールデンウィークが始まる4月下旬にSさんからの電話の呼び出しが鳴った。
『今日は、いい写真が撮れた』
と弾む声で喜び話していた。

そもそも、Sさんの趣味の写真収集は、人を対象にしているから、写真を撮らせてもらえないと、笑顔も集められないと言う。
それでも、今日は写真好き、絵画付きの人物と出会い、その人が話している様子を、きらきらと輝く笑顔満載で写真撮影できたのだ。うれしかったのが、電話の向こうのSさんの声で想像できた。

私も、Sさんが誰かにこの喜びを伝えたかったのだとわかるし、それを私に話したいと思ったのだと思えば、Sさんの弾む声を聞き、嬉しい気持ちを共感できた。
『電話をくれて、うれしい』
と、伝えた。

Sさん撮影 京都府福知山市 頼光寺

文字が読めない告白


この喜びを伝える電話を切る前に、Sさんは、
『実は字が読めないんだ』
と言った。
『いつも、手紙をくれるけれど、勉強しなかったから読めない』
と言う。

識字率の高い日本であっても、育った環境、文化的な背景から、いまだ文字を読めない人はいるのだと知った。
読めないことを考えもせず、手紙を書いていた私は、相手に寄り添っていなかったのだと知らされる。
Sさんは、私に写真やお菓子を送ってくれるにも、自分で住所を書いてはいないと思う。
私の郵送した手紙は、誰かに読んでもらっていたことだろう。
では、これから私は、手紙を出さないかと言えば、
「だす。」

その時は、漢字にはふりがなをつけ、難しい言葉を使わずに書こうと思っている。
人は死ぬまで成長すると言う言葉を信じ、Sさんが漢字を目にして読み方を知る機会はあった方がいいだろうと考えるから。

読めないといってくれたことに、勇気と感動を覚えました。

MILK
2023.5.7(土)


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