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『潜水艦カッペリーニ号の冒険』の実話

第二次世界大戦中の厳格な日本海軍軍人と陽気なイタリア軍人との国を超えた友情を描いたドラマ『潜水艦カッペリーニ号の冒険』が2022年1月3日21時からフジテレビで放映されます。このドラマには元となった実話が存在します。

実在したカッペリーニ号

カッペリーニ号のモデルとなったのは実在したイタリア海軍潜水艦「コマンダンテ・カッペリーニ」です。コマンダンテとはイタリア語で「司令官、将軍」という意味で、カッペリーニは普墺戦争で活躍したアルフレッド・カッペリーニから採られています。そのため、「コマンダンテ・カッペリーニ」を日本語風に訳すなら「カッペリーニ将軍号」という名前になります。

「コマンダンテ・カッペリーニ」は第二次世界大戦中に枢軸国同士であったイタリアと日本の間で物資を輸送するために使われました。正確には同じ枢軸国であるドイツが占領していたフランスから日本が占領していたシンガポールへの輸送任務を命令されました。なお、この際に「コマンダンテ・カッペリーニ」から艦名が「アクイラⅢ(アクイラは鷲の意)」に改名されていますが、この記事では分かりやすくため「コマンダンテ・カッペリーニ」の名前を用います。

輸送任務を帯びた「コマンダンテ・カッペリーニ」は物資を搭載するために大砲や魚雷といった主要な武装を取り除かれ、武装はわずか2丁の機関銃のみといった状態で、艦内には金属類や機械部品、光学部品が積み込まれ、魚雷発射管の中にもブリキ缶に入った石油が詰め込まれていました。そして、「コマンダンテ・カッペリーニ」はフランスのボルドーからシンガポールへ無事航海を果たします。

ところが、シンガポールから帰路でドイツへ向かう途中にイタリアで政権交代が起こり、イタリアは連合国に降伏してしまいます。そのため、インドネシアのサバンにて日本海軍が捕獲し、イタリア人乗組員は捕虜となってしまいます。その後、日本海軍からドイツ海軍に引き渡され、「UIT-24」と改名されます。「UIT-24」となった「コマンダンテ・カッペリーニ」は日本近海や瀬戸内海で活動しました。

また、1945年に入るとドイツも連合国に降伏し、三菱重工業神戸造船所で整備中だった「UIT-24」こと「コマンダンテ・カッペリーニ」は日本海軍に接収され、「伊503」と再度改名されることになります。日本海軍に接収された後は終戦まで生き延び、戦後、紀伊水道にて連合国に沈められて処分されます。

「コマンダンテ・カッペリーニ」乗員のその後

イタリア軍、ドイツ軍、日本軍の3つの国に所属した「コマンダンテ・カッペリーニ」ですが、ドイツ軍や日本軍の指揮下になっても乗務員の中には元から乗り込んでいたイタリア軍人が残っていたそうです。彼らは捕虜として収容所で生きるよりも枢軸国側の軍人として戦い続けることを選んだのでした。戦後、GHQに逮捕され、イタリア本国では脱走兵や裏切り者扱いされて、軍の階級をはく奪されたり、戦争年金の支払いを拒否されりした彼らの内、幾人かは戦後も日本に残りました。

その中の1人であるラファエロ・サンツィオは日本人女性と結婚し、ラファエロ小林と改名、日本人として90歳近くまで生きた後、横浜で没しました。このラファエロ小林氏がドラマの中でのアベーレのモデルなのかもしれません。

戦後も日本に残ったイタリア軍人の内、「コマンダンテ・カッペリーニ」のコックは横浜のイタリア料理店に雇われて、潜水艦乗りのための四角いピザを日本に伝えました。ピザが丸形ではなく、四角いのは潜水艦の狭いキッチンでもより大きいピザを焼くための工夫でした。そのため、現在でも『銀座シシリア』など四角いピザを出す料理店が存在しています。

二宮和也が演じた日本海軍少佐は実在したのか?

ドラマの中で二宮和也は日本海軍少佐、速水洋平を演じますが、その職務は「コマンダンテ・カッペリーニ」の艦長です。「コマンダンテ・カッペリーニ」が日本海軍に編入され、「伊503」となった後の艦長といった方が良いかもしれません。

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