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学校では教えてくれない基礎の基礎

「今ここ」で生きる。
そんな言葉を近頃よく耳にするようになりました。

「今ここ」で生きるとは、
過去に起きたことを嘆き続けることなく、未来を思って焦ったり不安になることなく、今ここにいる自分の状態をしっかりと見てあげる。

今自分はどんなことを感じているのか、その上で、今自分は何をしたいのか、
「今ここ」の素直な自分で、今やりたいことを思いつくままにやってみる。
そんな生き方のことです。

そしてこれは、音楽家として成長し続けていくためにも大きな鍵を握るテーマとなります。

一見音楽とは関係ないことに思うかもしれません。遠回りに感じるかもしれません。けれどもこれこそがテクニックに入る前の最大の基礎になっていきます。

今回は、音楽家としての視点から、なぜ「今ここ」が大事なのか、ということを説明していきます。

「今」に居られない

現代社会において「今ここ」で生きることは容易ではありません。なぜ私たちは「今」に居続けることができないのでしょうか?

それは、私たちがほとんどの時間を未来のことを考えて生きているからです。今日はこのあと何をして、何時までにこれをやらなくちゃいけなくて・・・といったように、日常のあれこれに没頭するあまり、心ここにあらずな人たちをよく見かけます。そういう人たちはどこか焦った雰囲気があります。一緒にいると急かされているようで落ち着きません。

多くの人たちが、未来のために今を犠牲にして生きています。その根底には、「今」に対する欠乏感や、未来に対する「不安や恐れ」が存在しています。

今が満たされていない気がして、その欠乏感を埋めるためにあれこれと動いてみたり。さらに未来のことを考えて不安になっては、その不安を取り除くための何かを準備してみたり。

それは私たちの親も同じことです。だからこそ私たちは、家庭や学校などで、その不安を取り除くための対処法なるものを小さな頃から教えられてきたのです。この学校に行っておけば潰しがきく。この職種についておけば食べることに困らない。こんなふうに、将来困ることがないようにと敷かれたレールの上を歩んできた人も多いと思います。

けれども、どれだけ努力しても不安を拭い去ることはできません。努力すればするほどに次々と不安が生まれる、という悪循環にはまっていきます。

その結果、未来のことを考えては、頭の中で思考が騒がしく鳴り止まない、どこかいつも不安と焦りでモヤモヤする、という状況が生まれているのです。

見る聞く感じる

ここで音楽のことに話を移していきます。

音楽家が演奏するとき、サウンドを出すその手前でどうしても必要なことがあります。それは「音楽を心に描く」ということです。心に描けるから、それをサウンドに映し出していくことができるのです。

では、音楽を心に描くために必要なものとはなんでしょうか?
キャンバスに絵を描くために絵の具が必要であるように、心に音楽を描くためにもその素材となるものが必要です。

その素材とは、経験を通して得られる自分の中の感覚です。ここでいう感覚とは、より肌感覚に近いものです。そしてそれは日常生活の中で培っていくものです。

自然に触れたり、良い音楽を聞いたり、食事をじっくりと味わってみたり。
山へ行ったり、海へ行ったり、ときには活気溢れる大都会を訪れてみたり。
そしてその場にいる人たちと触れ合ってみたり。
そんな日々の暮らしの中で冒険するように、しっかり見てみる。幅広く見てみる。どこにも偏っていない、何にも染まっていない自分で、考えを止めて、「今ここ」で見てみる。

そうすることで、肌感覚で今自分がどう感じるのかを心に残すことができます。それらの経験が豊富であればあるほどに、「音楽を心に描く」ための素材も豊かになります。

素材がたくさん揃っている自分になることで、音楽表現は味わい深く奥深いものになっていきます。そして人は、その味わい深さや奥深さに感動するのです。

「今ここ」で見る聞く感じることは、演奏の基礎技術に入っていく以前の、大事な基礎だということです。

気づくことから

けれども残念ながら、「今ここ」で見る聞く感じる、ということができる人はほとんどいません。なぜなら、多くの人々は頭が思考でいっぱいになっているからです思考を鎮めて「今ここ」に立つ、ということができなければ、ありのままに見る、聞く、感じることはできないのです。

そして、この大事な基礎の基礎について人から教わることはほぼありません。教わったとしても、その大事さに気づけない人が多いのではないでしょうか。

音大生なら、日々の忙しさに追われ、家と学校の往復ばかりで、心の余裕も持てないかもしれません。パソコンやスマホでなんでもできてしまう今の時代、肌感覚の経験というものも減ってきているように思います。

多くの人々は現実社会に没頭するあまり、未来のことを考えては不安や焦りに駆られ、「今ここ」から遠ざかっているようにも思います。不安ベースで未来のあれこれについて考えてしまうことは、多くの人にとって「癖」になっています。

ではどうすれば、その癖を取り除いて「今ここ」に立つことができるのでしょうか?

そのためにはまず、「あ!今思考が過去や未来にお散歩してるな〜。」と、気づくことからです。そして、自分と向き合ったり、自分を客観視したりして、ありのままの自分を受け入れていくことです。そうすることで自分と繋がることができるようになります。

最初は1日のうち数分からでも構いません。自分と繋がる時間が持てるようになると、心に平穏が戻ってくるのがわかると思います。その心地良さに気づけるようになると、過去や未来への執着を少しずつ手放していけるようになります。そこまでのプロセスには時間がかかるかもしれませんが、それはある意味リハビリのようなものなので、受け入れてやっていくしかありません。

何かやっていないと気が済まない、そんな心の状態で今を忙しくしているのは、未来に対する不安や焦りが原因だということに気づいていくことも大事だと思います。

未来を創り出しているのは、全て自分の「今」の状態です。今を不安な目で見れば、未来にも不安がついてきます。「今」の安心が明日の安心にも繋がっていくのです。

「今ここ」から明るい未来に繋がっていきましょう!


最後まで読んでくださってありがとうございます😊

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