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シーのモジュール「無題長巻」テキストの解説

JP版未実装の内容(投稿時点)であるため、ネタバレを含みます。

こちらにて投稿したシーのモジュールテキスト翻訳ですが、内容に書かれている漢詩の理解に一考を要するので、慣熟を兼ねた簡素な詳解を投稿することにしました。
これは解釈の一例であり、あくまで私見の範疇であることをご容赦下さい。


灰齐山顶,竹林陋屋,红锋染墨,剑指长卷。

灰斉の山頂、竹林の陋屋、紅刃が墨に染まり、剣は長き巻を指す。

(灰斉の山頂にある竹林の陋屋、紅き刃は墨に染まり、剣が長い巻物を指す。)

「灰斉の山頂、竹林の陋屋」とは即ち、シーの棲家だった場所を示しています。陋屋とは狭く、いやしい(みすぼらしい)家の事を示しており、主に自分の家を謙遜して言う言葉ですね。

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「紅き刃は墨に染まり、剣が長い巻物を指す。」とは、シーが持っている大剣が墨に染まって、今まさに絵を画こうとしている様の事を言っています。

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群山巍峨,江水不息,花红柳绿,草木芬芳。
远望绝景,挥剑泼墨。

巍峨として聳え立つ群山、休息を知らぬ江水、紅き花と緑の柳、芬芳なる草木。
遠き絶景を望み、剣を振らば墨潑ねる。

(高々と聳え立つ山々、止まることを知らない河の流れ。紅い花と緑の柳、芳しい良い香りを広げる草と木。
遠くに広がる絶景を望み、剣を振ると墨が撥ねた。)

これは、まさにシーが描こうとしている絵のモチーフを述べ、それを描かんとする場面の描写ですね。リアリティに富んだ素晴らしい詩です。

清墨染群山,松烟工翠枝,干笔积峭峰,淡影现烟云。
画毕,收剑。

清墨が群山を染め、松煙は緑翠の枝を工し、渇筆が峻峭を積み、淡影は煙雲を現す。
画を終え、剣を収む。

(清い墨が山々を染め、松煙は緑々とした木々の枝を画き、渇筆が険しい山々を積み上げ、淡い影は煙の如き雲を表す。画くのを終え、剣を収めた。)

清墨、松煙、渇筆、淡影という4つの単語がここで出てきます。これは、筆(大剣ですが)に染みた墨が少しずつ使われ、段々と掠れていく様を想像することが出来ますね。
水々しさに富んだ墨は山々を染め上げることが出来ます。そして、しばらく使った後は、適度な水気を含んだ描写性に富む墨となって細かい木々の枝を画き出すことが出来、水気を失い渇き始めた墨は険しい山々の重なりを、さらに水気を失った墨は、霞の様な雲を画くのに向いています。
こうした時間の経過、墨が少しずつ使われていく様を、それが描き出す情景と共に描写したのがこの部分であると思います。

「翠枝」の「翠」とは「カワセミ」の背中に生えている美しい青緑色の羽を指す色のことで、これが転じて色の意味になりました。
「枝」は、植物や木の枝なを指していますので、「翠枝」とは即ち若さに満ち溢れた草木の枝を指しているのでしょう。

端详数载后,夕一声轻叹。
烟雨山水尽失色,只留白卷横案台。
灰齐山景,涂了千百次。
冬去春来花千树,天降玄石异簇生,开山辟路夺天工,又是一年欢庆时。

数年に渡る精査の後、シーは軽くため息をした。
煙雨山水尽く色を失い、ただ白巻を留めて案台に横たえる。
灰斉の山景を、幾千と塗った。
冬去り春来れば花千樹を成し、天より玄石降らば異簇を生し、山開きて路拓かば天工を奪い、また一年の歓慶したる時かな。

ここからは口語体と文語体が混じります。一見すると風情を損なう様な構造になっているように感じますが、これは口語で書かれた文章が状況を俯瞰・描写する内容、文語で書かれた文章はシーの心境や経験を表現する内容というように、重要な
「煙雨山水尽く色を失い、ただ白巻を留めて案台に横たえる。」、即ち今まで画いてきた絵が見劣りして感じられ、巻物を閉まってしまったとい


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