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石垣の公営塾生徒たちの感想

*注意:この記事は映画の内容のネタバレになる恐れがあります。 

映画監督で元衆議院議員の長島一由さんが運営に携われている石垣市公営塾にて、ゲスト講師として招聘されていた土屋敏男さん(日本テレビプロデューサー)の授業で『神山アローン』を上映していただきました。

授業の模様

 僕自身はただ映画を提供しただけなので詳細を知らなかったんですが、調べてみると公営塾とは次のようなものみたいです。

石垣島の近くには、竹富島、与那国島、波照間島、西表島、小浜島など多くの離島があります。どこの島も高校がありません。このため、石垣島以外の中学生は、高校進学のためには親元を離れ、石垣島にある4つの高校を選びます。もしくは石垣島を飛び越え沖縄本島などに進学することになります。2013年に新石垣空港が開設されてから好景気に沸き、人口も増えている石垣島ですが、一方で石垣島を飛び越えて八重山を出てしまう高校生は止まりません。若者がいったん島を出ることは否定されるものではありませんが、石垣島によりよい学びの環境をつくり、未来に羽ばたいていく八重山諸島の子どもたちにもっと力を注ぎたい。人間性の豊かさや、表現力を育てる、人づくりをしていきたい。そのような思いから石垣市公営塾は設立されました。

土屋さんの映画へのコメントや、授業の内容も踏まえた長島さんのコメントは以下に貼っておきます。

公営塾の9人の生徒さんから、映画を見たあとでの感想文を頂いたので、ここに紹介させてもらう事にする(授業は去年に行われたものなので、学年は当時のものです。)

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上間葉奈(2年、映像制作中)

 幸子さんのたばこを吸う姿、私の頭の中にはその映像が残っている。土屋さんから「神山アローン」という題を聞いた時は、どんな映画か想像もできなかった。しかし映画をみていくうちに、幸子さんの吸うタバコの煙が娘の死に責任を感じる暗い心情を表しているように見えた。最後の、娘の遺骨を海に流せずにいる幸子さんを見て親が子を想う心は軽くないのだと感じた。
 また、土屋さんもおっしゃっていた通り、「神山アローン」は長岡マイル監督が映画と共に生きているように思えた。監督自身も神山に住み映画をとる、この一作で幸子さんと監督、二人分のドキュメンタリーを見ている様だった。本当に感銘を受ける作品だ。
 私も公営塾で映画を作成する身だ。自分で作る時は、土屋さんや長岡監督の様に真っ直ぐな気持ちで映像をとり、見る人に映画を通して何かを伝えたい。

佐藤天徒(3年、映像制作中)

 私は映画を見て、最初に驚いたことがある。それは、何を撮るというテーマもないのに神山というところに撮りに来たと言ってることだ。その一言で気づいたことがある。それは、映画の撮り方、観せ方は本当に自由なんだということだ。私自身ドキュメンタリー映画をあまり観ない。だから知識不足ということもあるかもしれない。しかし、私が今まで観た映画にはない始まりだと感じた。
 私が今、監督をしていて始まり方によって観る側の映画の感じ方が違うと学んだ。始まりが大切だと学んだ。それを一番感じたのがこの映画神山アローンだ。私の映画ではあまり暗く観せたくない。そのためにも始まりにする映像を慎重に選んでいい映画がつくれればと思う。

佐藤一樹(2年、映像制作中)

 長岡マイル監督によるドキュメンタリー映画「神山アローン」を土屋敏男さんの紹介によって見た。土屋敏男さんはドキュメンタリーについて、作った本人の人生によって作品は作り上がっていくと言っていた。今回の長岡マイル監督によるドキュメンタリー映画「神山アローン」について私はとても長岡マイル監督の感性に共感した。理由は映画のオープニングから始めの数分間の風景の美しさと素朴さがとても好きだからだ。オープニングに出てきた山の風景は太陽が出ているわけでもなく朝や夕方のものでもない。あえて雨が降りそうなどんよりとした雲がかかる山々を撮っているのである。そこに壮大な風景がでていることに心打たれた。
 土屋敏男さんの話は一つのパターンとしての撮影の仕方として共感した。土屋敏男さんの映像への好奇心と長岡マイルさんの感性に感動した。


久貝心愛(1年、新入塾生)

 私は、このドキュメントを見て、初めて神山という場所のことを知った。神山は徳島県にある過疎化の進んだ地域だ。私は始め、このドキュメントは神山を紹介するために作られたのだと思った。しかし、私の想像とは違いこれは神山に住むさっちゃんというおばあさんに焦点を当てて作られていた。私の中には豪快に笑うさっちゃんの姿が今でも残っている。しかし、その笑顔とは裏腹にさっちゃんいは辛く悲しい過去が沢山あった。悪いことをして警察に二度も捕まってしまったことや自殺するかの様に死んでいった娘のこと。そんなことを乗り越えてきたさっちゃんが、番組終盤陽気な音楽とともに踊っている姿を見て、安心感と勇気をもらえた様な気がした。
 私はこの作品を見る中でさっちゃんの話す声とともに、神山の風景や仕事場、家の写真など様々な映像が多く流れていることに気がついた。私なりの解釈でいうと、これは長岡マイルさんが、神山という場所のことやさっちゃんという人のことをより身近に感じてほしかったからではなかったかと想う。実際、私はまるで神山に言ったことがあるかのような気持ちになり、さっちゃんが自分のおばあちゃんであるかのように感じた。
 この作品を見たあと、土屋さんの話を聞き、「娘の遺骨をまだ海にすてられないのは、これが母と娘の最後のつながりだからだろう。」と言っていたのが胸におもくささった。最後には辛い事実を伝えることで私たち見る側の印象にふかく残るようにしたのだと思った。
 神山アローンという作品は決してハッピーエンドでは終わらなくとも、私の心には残る話だった。


松永朱琉(1年、新入塾生)

 私は、神山アローンはこのドキュメンタリー映画を撮っている「僕」の人生を大きく変えていったと思った。理由は、軽い気持ちで神山に言ったが、さっちゃんに出会ってから「僕」は神山で6年間も暮らしたからである。
 私は途中から来て、さっちゃんが娘が乳ガンで亡くなった所から見た。さっちゃんの娘が遺骨を海に散骨してサメの餌にしてほしいと言っていたのに、さっちゃんが骨折して行けなくて結局今もまだ行けてないという最後の言葉がとても胸にささった。理由は、私が同じ立場だったら、娘の願い通りに骨折が治ったら散骨に行くと思うからである。だからさっちゃんは娘の遺骨を手放せないくらいに娘がとても大事なんだと感じた。
 この映画を通して、さっちゃんはお金を何億も稼いでいたけど、娘や夫の話を聞いてお金を稼ぐ事も大事だけど、それ以上にいつ亡くなるかわからない家族とふれ合う時間もすごく大切だと思った。


奥濱寿虹(1年、新入塾生)

 神山アローンを見た。正直はじめは何の話をしているのか分からなかった。最後で、やっと分かった。私が思った神山アローンという映画はいつまでも子離れができないさっちゃんをうつした話で、そのさっちゃんの生き方や思っている事を伝えたい映画なのだと思った。
 正直、始めは何の話をしているのかも分からなかった。私はドキュメントも映画もどちらも見ることが少ない。最後までさっちゃんだけを撮っていたことにも驚いた。初めてしっかりドキュメンタリー映画を見たかもしれない。私は始めさっちゃんを好きになれなかったが、話を聞いているうちにどんどん楽しい人だなと思った。とてもまっすぐで明るくてさっちゃんと友達になりたいと思った。悲しいことも全部聞いてみたいと思った。


翁長晴子(3年、新入塾生)

 この前、私は初めてドキュメンタリー映画を見た。「神山アローン」という過疎化が進んでいる徳島県神山町に住むおばあちゃん、幸子さんに密着した映画だ。幸子さんはこの神山町で何十年近くも美容室を経営している。また、若い頃はお金を稼ぐために色々な仕事を経験してきたと言っていた。幸子さんのそのお金や仕事に対する執着心が娘さんの考え方を変え、自殺のような病死に到ってしまったのだと私は思った。また、その中で「私が娘を殺したのも同然だ」と寂しそうに話す幸子さんを見て心が痛かった。その時まで私は幸子さんはとても格好良い女性だと感じていたが、娘さんの話をする幸子さんはとても悲しそうで今までのインタビューとは違って人間味も感じた。鑑賞後、土屋さんが幸子さんとマイルさんの距離感について話されていて幸子さんの色々な表情が引き出されているのもこの長い密着期間の中で生まれた距離感のおかげだと思った。少し寂しい様で温かい映画だと私は思った。


照屋知生(2年、映像制作中)

 娘が自殺してしまった理由は自分のせいであると感じている母親。娘の遺言によると、自分の遺骨は海に散骨してほしいらしいが、母親はそれができず、今も仏壇に置いてあるという。
 もし私がこの母親の立場であれば、娘の遺言通り、彼女の遺骨を海に散骨するだろう。なぜなら、そうすれば親孝行ならぬ娘孝行ができると思うからだ。
 映画にもあったように、母親は娘が自殺してしまったのは、自分のせいだと言っていた。そのことに責任を感じているならば、少しでも娘のためにできることをやろうと私は思う。
 今回見せていただいた映画「神山アローン」は、私が今塾で行っている撮影の内容に少し似ている部分があると感じた。あるおぼあちゃんの生涯についてのドキュメンタリー映画なので、この映画のように、カメラマンとおばあちゃんの距離感が近く感じられるような撮影の仕方を参考にしようと思う。


塩崎拓(2年、新入塾生)

 今日、土屋敏男さんからドキュメンタリーとは何か、という講義の題材として、「神山アローン」を視聴させていただきました。
 一言で感想をさせていただくとすると、人それぞれ考えさせられる場面が違う、とても素晴らしい作品だと感じました。私はドキュメンタリー映画と聞いて、最初は地方創生など、そういった話題を皮切りに始めるのかと思いましたが、その実、内容は一人の女性の活躍と後悔の物語でした。家と娘を守るため、お金のために奮闘する母。しかし皮肉にも、そんな母を苦々しく思い、離れていき、そして 先立ってしまった娘。その時のことを今でも悔やみ続ける母。親と子という親しい存在であるはずなのに、どうして二人はわかり合うことができなかったのだろう。私はこの作品を通して、親と子の関係性について深く考えさせられました。
 私が一番印象的だったのが、一番最後のシーンである、「遺骨は今でも、仏壇に置いてある」と一言流れるシーンです。娘は生前、遺骨は海に流して欲しいいっていたにもかかわらず、何年経っても仏壇に置いてある娘の遺骨。胸に刺さるものがありました。はっきり言って、第三者の視点から見て、これは母のエゴだと感じます。しかし、まるで娘に対して、そのエゴさえも今は許して欲しい、そばにいさせて欲しいという、祈りにも似た、懇願の念は、見る人の心をつき動かすものがあるように感じました。
 最後に、このような素晴らしい作品を創って下さり、本当にありがとうございました。神山町の美しい風景と相まって、見る人の心を、その世界へ引き込んでくれました。本当にありがとうございました!



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