塩田武士 著 『存在のすべてを』感想
図書館にて予約待ちしていた本書を読みました。
大変面白く今年一番心揺さぶられた一冊かもしれません。
どこが一番心に刺さったかといえばきっと多くの人が亮が誘拐され再び姿を現すまでの空白の3年間だと思う。
事情を知らぬまま兄雅彦からむりやり見ず知らずの4歳の男の子亮を押し付けられた貴彦。なぜかその子はくっきりとした二重瞼の辺りが貴彦に似ており、画家の貴彦同様絵の才能があった。後に亮が雅彦とその仲間によって誘拐された子供だと知る貴彦とその妻優美。
彼らは育児放棄されていた亮を自分たちの手で育てる道を選ぶ。その選択は罪になる。その恐怖と闘いながらも亮の幸せを願った二人の愛、それに応えるようにすくすくと育っていく亮に涙が止まらない。
彼らが頼りにする画商の朔太郎。彼なしに「3人家族」となった暮らしは成り立たなかったと思う。何があっても支えてくれる人がいる。家族よりも信頼しあい支えあう人がこの世にいる。その温かさにも触れられる。
昨日読み終わり、noteを書いている今も思い出しては泣けてくる。
家族とは生きるとは。
誘拐事件が起きてから長い歳月が経ち、事件を追うもの、関わることになった人たちそれぞれの視点に立てる本作はかなりの力作だと思う。
『罪の声』、『騙し絵の牙』に続き本作も映画化?!しそうな予感・・・。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?