理解されなかったあの瞬間
過去の苦い思い出を昇華させてあげようの回です
人生で初めて自分から吃音のことをカミングアウトした瞬間のことは今でも鮮明に覚えている
全然好意的ではなくてカミングアウトする気なんてさらさらなかったけど、どうしようもなくなってカミングアウトせざるを得なかった瞬間だった
高校生の頃からたまに英会話教室に通っていた
そこは小学生から通えるところで、日によって先生が違って、色々な先生と組み合わさるようにってレッスンを組んでくれるところで、だから初めましてと久しぶりの瞬間がたくさんあった
レッスン以外でも受付で見かけたら声かけてくれる先生も多くて、英語は全然できるようにならなかったけどそれなりに上手くやっていたはずだった
はずだったけど、あの日は突然やってきた
大学2年生か3年生のときだった
初めましての先生だった
名前とか出身とかはちょっと覚えてない
途中まではいつも通りだった
けど、私が音読が上手くできなくて、やる気ないの?って聞かれた
そんなことはないって答えて、
じゃあ続き読んでって言われて、
そんなこと言われてもやっぱり流暢には読めなかった
吃音は自分の意思でコントロールできないから
やっぱりやる気ないじゃんって、レッスン終わりにする?って聞かれた
どれだけ私がやる気ないわけじゃないしレッスンもこのまま続けてほしいって言っても伝わらなかった
遂に先生が受付の人(日本人だから唯一日本語で伝えられる人)を呼んできて、仲介に入ってもらうことになった
先生に席外してもらって、
どうしたの?って聞かれたから正直に話した
やる気はあるけどやる気ない風に捉えられたこと、
そのラリーを何往復かして今に至ること、
そして、やる気がなくて読まないんじゃなくて、吃音があるから読みたくても読めないこと
だけど、吃音があるって自分の声で伝えられなくて紙に書いて伝えた
(そういえば吃音って単語発したことないなってこの時になって初めて思った)
しかも書いたことない漢字だったから漢字がわからなくて、"きつ音"とだけ書いた
カミングアウトせざるを得ない状況が悔しくて歪んだ文字になった
気づいたら泣いていた
人前で泣いたのは中学校の部活の引退試合以来だった
そしたらじゃあその先生に伝えてくるねって言ってくれた
あ、この人吃音のこと知ってるんだというのが最初の感想だった
で、伝えてくれたんだけど、先生にはあんまりしっくりこなかったらしい
たぶん吃音を知らなかったんだと思う
そりゃそうだよね
目の前に書いてある英文を読むだけだもん
小学生でもできるもん
非吃音者からしたら理解できないよね
口を開いても声が出てこないもどかしさなんて
母国語でさえ満足に日常会話ができない人のことなんて
結局そのあとはレッスン終了の時間になって、
受付の人にはちょっと残っててねって言われて
先生の対応が良くなかったよねって言われて
その先生とは2度と当たらないようにしますという書類が作られてしまったのでサインをした
全然嬉しくなかった
申し訳なさしかなかった
私のせいでその先生に少なからず悪い印象がついてしまったことも
謎な書類を作らせてしまったことも
受付の人に要らぬ心配をかけさせてしまったことも
何よりも普通の人ならしなくても良い配慮をさせてしまっていることが申し訳なかった
次のレッスンのときどんな顔して受付を通れば良いんだろうって
受付の人がたまたま席外していてくれないかなって思ってた
他の先生はきっと、この子緊張してるんだろうなとか英語苦手なんだろうなって思っててくれてて、レッスンの度に前より話せるようになったねーって褒めてくれてたのに
それで、自覚はなかったけど話せないなりに有頂天になってたんだと思う
やっぱり喋れないよなって
自分ダメな子だーって
みんな言わないだけで異質に思ってたのかなって
その感情が優位になってしまった
それ以降一方的に少し気まずい日々を過ごしたけど、コロナ禍がやってくる少し前に就活したり大学忙しくなるからって理由で英会話教室は辞めた
結局、院進するし、大学には半年以上通えなくなったけど
最後の日に、長い間通ってくれたからこれから寂しくなるねって言ってくれた受付のお姉さん達とか楽しいレッスンしてくれた先生とか元気かな
また会いたいな
英語力は退化した気がするけど、あの時よりスムーズに会話できるようになったよって伝えたいな
今ならあの時より上手に音読できるよって伝えたいな
ちなみに、小中学生のときは家庭訪問や面談で母親から担任へ吃音のことが伝わっていたから、自分からカミングアウトしたのは本当にあの日が最初だった
私は幸運なことに吃音を理由に揶揄われたり虐められたことはない
だからこのときの受け入れて貰えない感じが結構傷ついた記憶
ただ、このnoteを書いていて思い出したエピソードがあって、そっちもなかなか古傷として残ってるかもなって思う
あれは高校2年生
進路のための三者面談
自称進学校に通う私の選択肢は当然大学進学
だから志望校どこですか?がメインテーマだった
学校生活で初めて父親が三者面談に来た
たまたま休みと三者面談の期間が被ったのか母親がどうしても休めなかったのかは知らない
合間の雑談の中で吃音の話題がでた
そこまでは別に構わない
けれど、次の発言に耳を疑った
「この子が人並みに勉強ができなかったら支援級に入れることも考えていた」
え、それ今言う?
何なら初耳なんだけど
吃音者ってそんなに異常なのか
ていうか、それ本人の前で言うか?普通
それ以降の面談の記憶はない
家まで自転車で10分の帰り道
きっと自分のことだからせめてもの抵抗として父親を撒いて帰ったんだと思う
このとき以上に人並みに勉強ができてよかったと思ったことはない
旧学区トップ校に行ける学力があって良かったと思ったことはない
勉強が嫌いじゃなくて良かったと思ったことはない
この発言だけはいくら父親でも許してないし許すつもりもない
実の父親に信じて貰えていなかったことがショックだったんだろうね
定期的にこのときの発言が蘇っては未だに言葉の凶器で刺されている気がする
そして永遠に古傷として残り続ける気もする
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