京都能楽入門 その1

能楽なんて、一生関係ないと思っている人もいるかもしれない。でも、人生で挫折や哀しみを知っているなら、あなたにも楽しめるはず。能楽の主人公は敗者が多い。戦に破れた武士や、夫に背かれた妻。歴史の陰に浮かぶ主人公たち。

かの紫式部すら、雲居の上の人々の恋愛を書いた罪で、苦しめられ、源氏供養という作品で、石山寺を訪れる僧に、供養をしてほしいとこいねがう。敦盛、頼政、源平の合戦の哀しい最期も多い。能楽の基本は、この世で、成就できなかったひとが、あの世から現れ、苦しみを語り、最後には救われて去っていく。義経の話はたくさんあるが、頼朝能はない。歴史の王道を歩むものは、能楽の題材とは離れているから、出てこないのだ。

わたしが能楽に心引かれたのは、外資系企業で過酷な日々を送っていたとき。知合いのお誘いで、松涛にある観世能楽堂に招かれて、なんどか通った。京都にも観世会館があって、こちらも知合いがでるので、通っている。

以下、初めての方向けに、能楽堂の利用方法を書いてみる。

1. チケットは観世会館に電話で予約すると、前売り料金になる。取りに行かなくても、前売りのチケット欄に記入してくれるので、当日お支払いですむ。

2. 座席は自由席がほとんどなので、当日早くいくと、正面のよい席が取れる。

3. 能楽堂には解説のための画面やイヤホンガイドはない。ネットの時代だ、検索して、能楽のあらすじを知っておこう。これがないと、地図なしで旅するようなもの。どこが哀しいのか、理不尽なのか、あらかじめ学習しておく。

4. 前日は、早めに寝て睡眠はたっぷり取る。心地よいのだが、眠ってしまってはもったいない。演者の装束、舞台装置、大鼓、小鼓、笛の演奏者をしっかりと観察しよう。

5. 能楽の内容をざっくりと知りたい人には、『能百十番』平凡社 増田正造著 がお勧め。文章も品があって、わかりやすい。これをいつも持参して、繰り返し読んでいる。

6. 休憩は二十分くらいなので、簡単に食べられるものを用意しよう。わたしは、虎屋の羊羹をいつも持って出かける。甘いものを補給して、次の回に備える。飲み物は自販機があるが、持参するものいい。

7. 見終わったら、簡単なメモを残そう。これが次にみるときに役に立つ。最初は大変でも、見ているうちに、癖になるから不思議。京都近辺にいる学生の方、ぜひ、お出かけください。

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