おすすめ本を紹介しようと思ってたけど気分死んだから無理って話
僕には悩みがある。行き詰まっていることがある。苦しんでいることがある。誰かに助けて欲しいことがある。解決したいことがある。
だけど誰にも助けを求めることができない。
なぜなら僕の悩んでいることは小説に関することであり、僕の周囲の人間のほとんどには無関係で、無意味な悩みだからである。
そして僕には創作仲間というヤツがいない。テーマとか話の作り方とか文章作法とか、キャラクターについてとか、困ったときに相談したり愚痴ったりできる人がいない。
基本的にはずーっと1人で書いている。
中学でも高校でも大学でも一応は創作仲間的な存在がいたけど、みんな書かなくなっていった。
一時期、1人が辛すぎたので創作仲間を求めてネット上で見つけたコミュニティに参加していた。オフ会や勉強会にも行った。だけど馴染めなかった。コミュ力がないから会話に入っていけず、自信を持って披露出来る作品がないから他人の創作談義に意味もなくうんうん頷くことしかできず、誰かが話を振ってくれるのを待っていることしかできなかった。
コミュニティの中にはアマチュアだけじゃなくてプロの作家もいた。プロはプロ同士でビジネスの場だと思って積極的に情報交換をし、アマチュアはアマチュアでプロに目をつけてもらえるようにアピールしまくっていた。
何回目かのオフ会に参加したとき、積極的に自分の作品をアピールしまくるアマチュアの参加者がいた。僕もその人のプロットを受け取って読んでみた。
クソほどつまらなかった。よくこんな作品を人に見せることができるなと思った。若干軽蔑さえした。キャラクターはありきたりだったし、話の内容は投稿用原稿にしては風呂敷広げすぎで絶対に収拾がつかなくなるようなボリュームだったし、安易なオチだった。
だけどその人はいろいろな人に見せていたから、いろいろなアドバイスをもらうことができていた。アマチュアからも、そしてプロからも。中には「これ面白いね」と言っているプロも何人かいて、絶望的な気分を味わった。
僕がクソほどつまらないと思ったものをプロは褒めていたのだ。思い返しただけでも吐き気がするくらい最悪の事態だ。
今思い返してみれば社交辞令だった可能性も否定は出来ないが、そのときの僕は酷く打ちのめされた。
なぜなら自分の価値観が世間とずれているのかもしれないと思ったからだ。
自分の価値観が世間とずれているのはとても恐ろしいことだ。
「自分が面白いと思っているならそれでいいじゃないか」
「自分が面白くないと思っているならそれでいいじゃないか」
レビューサイトなんかに行くと、こんな内容のコメントをよく見かける。
他人がどう思おうと、自分が正しいと思うのならそれでいい。
そんな考えは死んでしまえと思っている。
創作で一番大事なのは作者じゃなくて読者だ。自分じゃなくてその他大勢の他人だ。その他大勢の他人が「面白い」と思う作品を「面白くない」と思ってしまうことは、他人と価値観がずれていると言うことであり、価値観がずれていると言うことは自分が「面白い」と思う作品を他人が「面白くない」と思う可能性が高いと言うことだ。つまり自分の作品が「面白くない」ということの証明になりうるのだ。
だから僕は自分と他人の意見が違ってしまうのが怖い。
それからもう一つ。自分の作品をアピールしまくっていたその人が、なぜプロに「面白い」といってもらえたのか。
簡単なことだ。自分の作品を見せたからだ。どんな内容であれ、彼は自分の作品を見せた。臆さず、怯まず、躊躇わず。だからいろいろな人からアドバイスをもらうことができた。アマチュアからも、プロからも。
彼が最終的にどんな小説を書いたのかは知らないが、たぶん、僕が見たときよりも格段に面白い小説になっているはずである。
創作の世界もコミュ力と行動力でなりたっているんだなとつくづく思い知らされて悲しくなった。
人とコミュニケーションを取るのが嫌いだから自然と僕は創作の世界に足を踏み入れた。別の言い方をすれば逃げ込んだわけだ。
でも結局そこでもコミュニケーションは必要とされる。自分をアピール出来たヤツや仲間をたくさん作ったヤツが上に行ける世界だった。
最後の望みとして自分の「才能」とやらに賭けてみる手もあるが、多分僕には才能がない。断言できる。なぜなら才能があるヤツはこんなことで悩んだりしないから。
やがてその内、コミュニティの中で浮いているのが分かってきて、参加しなくなった。
また1人に戻った。
それからはずっと1人で創作を続けている。
ここ1年くらいは本屋に行ってない。本屋に入るのがすごく怖い。
なぜなら本屋には本があるから。
本屋にある本は誰かに認められた本で、誰かが売りたいと思っている本で、誰かが買いたいと思っている本だ。
『書店員おすすめ!』とか『○○賞受賞!』とか『累計○○万部突破』とかいう文字列を見るだけで気分が悪くなる。土俵に立つことすらできていない自分がバカにされているような気持ちになる。未だに部屋で誰に見せるとも分からない駄文をつづることしかできない自分が嘲笑われているかのような気持ちになる。そんなことはないはずなのに、どうしても耐えられない。
『小説の神様』という小説がある。
僕が人生で唯一読むのを断念した小説だ。
小説を書くのを止めようとしていた売れない高校生作家が同級生の売れっ子作家とチームを組んで再起を図る話だ。
半分くらい読んで死ねと思った。
売れなかろうがなんだろうが主人公はプロの作家なのだ。土俵に立って居るのだ。それに担当編集がついているし、親しい作家がいるのだ。手を差し延べてくれるのだ。環境はそろっているのだ。なのに書かない。本当に死んで欲しかった。死ね死ね思いながら読んでた。そんな風に読んでいると心が荒んでいくのが手に取るように分かったので読むのを止めた。
いい加減、1人で創作を続けるのが辛くなってきた。
切磋琢磨出来る仲間が欲しい。
つーかもう限界かもしれない。
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