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拝啓、みこと心理臨床処 様

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2023年から始まったみことスタッフ3名によるリレー方式の往復書簡コラムです。 みこと心理臨床処の雰囲気を、皆様に、感じてもらえたらと思います。
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友がみなわれよりえらく見ゆる日は

表題は という石川啄木の有名な歌の上の句を少々変えてみたものです。こうしてほんの少しでも変えてみると、啄木の歌の才能と、彼が抱えた痛いほどの孤独がありありと伝わって来ますが、それはさておき。  どうして自分だけ、という思いがもたらすものは本当に多岐にわたります。  そんな時は自分というものが卑小に見えて仕方なく、新しいものに手を伸ばしたり新しい場所に足を踏み入れたりといったことは難しくなるような気がします。  自分がそんな場所やものにふさわしいと思えなくなるから。

好きと嫌いと苦手と得意

 苦手な人センサー!ええ、私のそれは大変よく働きます。第一印象であ、この人なんか変だ、と思う人は大抵苦手か、それとは正反対に、長く付き合えば付き合うほどまるでスルメのようにその人のいいところや味わい深いところが見つかってくる人です。 苦手な人、と聞いて「それはもう星の数ほどいるぞ!」と何故かニヤニヤしてしまった私なんですが、苦手でも嫌いではなかったりするのでめんどくさい。 そう、嫌いと苦手は違うのですよね、よく考えてみると。 好き/嫌いは「気持ち」或いは「感情」です。対

耳をすませば

 リズムの違いと聞いて、異なるリズムを組み合わせた曲調をポリリズムというのを思い出しました(Perfumeの「ポリリズム」はまさしくその通りな曲です)。  違うリズムを持った人が集まって重なれば、違ったリズムになりますね。しかしですよ。リズムとテンポはまた別です。話すテンポではなくて、生きるテンポの話です。  というのも子どもの頃、祖父に何か音楽をと言われて当時自分が気に入っていたヴィバルディの「秋」第3楽章 (参考:https://youtu.be/EF4K2avg8A

力まず 軽く参りましょう

 毎日暑いですね。冷たいお酒の美味しい季節ではありますが、さっき名誉顧問(編者注:みこと心理臨床処のHPのマスコットキャラクターでもあるハスキー犬のこと)と散歩に出たら、風に微かに秋の気配が混じっていました。ここまで様々な災害がありましたが、過酷な夏が終わったら穏やかな秋が来ると思いたい。 ところで話が変わりますが。個性もキャリアも性格傾向も違うみことの三人ですが、この間のコラムを読んで共通点を見つけました。 仕事が立て込んで折り重なるとみんな黙りがちになるということ。

カオスと灯台とボイジャー

 二人とも、お返事ありがとう。カオスですか。大変な話になってきましたね。  そして、カオスと聞くとトポス(場所とか視点とかいう意味で使われます)が思い浮かぶ貧弱な連想力しかないわけですが。  三茶庵を構えて以降、トポスの大事さが身に染みてわかってきました。中堅になってそれはどうなんだ、というお叱りは置いておいて。  以前、部屋をどう整えるかという話がこのコラムで上がっていたと思うのですが、最近になって、枠組みの大事さが腹落ちしたんです。決まった場所、時間に約束をして必

正しいこと、本当のこと

 心理職として未熟者ではあるが駆け出しとは言えなくなってきた年頃だが、今の私には駆け出しの頃よりももしかしたら深い悩みがあるかもしれない、とふと思う。  それは「正しさ」と「ほんとう」についてである。そこで二人に聞いてみたいと思う。  あなたにとって「正しい」とはどういうことだろうか。    あなたは「正しい」だろうか?  私にとって「正しさ」は相対的だ。もちろん、カウンセリングにはどういった療法においても原理原則、プリンシパルと言えるものがあるし、それ以前の道

誰かのために整えること、一人でいること

 三茶庵は我々にとって多機能オフィスである。予約がある時はもちろんカウンセリングルームになり、予約がない時にはなるべくバッティングしないように気を遣い合いながら、3人それぞれの個人オフィスにもなるし、3人揃っての打ち合わせやお茶をすることもある。部屋の備品は新しく買ったものもあれば、ある物を持ち寄ったり個々に追加購入したりしたものもある。  ここ三軒茶屋は誠に交通の便が良く、買い物や気晴らしの散歩も手軽にできて、とてもよい街だ。要するに、街も部屋も、たいへん居心地が良い。

解釈違いは健全に

 オタク用語に、解釈違い・解釈一致という言葉がある。  例えばあるキャラクターの振る舞いについて、セリフやナレーションで語られなかった場合、そこには解釈の余地がある。オタク同士でその解釈が一致するかしないかというのは結構重要で、時には血を見るような論争になることもある(もちろん実際には血は流れないが)。    これは実はオタクが関心を示すような事柄以外の事象にも当てはまるのではないだろうかと、最近思っている。  例えば子どもの行動について。例えばある学校に大変多動な子がい

声の力

チャットG P Tというキーワードを聞いて、私がまず思い浮かべたのが声である。 私たち心理職の仕事に大切な要素はいくつもあるが、その一つに声があると思う。ここ最近風邪やら花粉症やらのためにうまく喉が働かないことがあって、改めてその恩恵に気づいた。 コミュニケーションを分解していくと、いくつかの要素を取り出すことができる。まずは言葉、それから声と視線、呼吸。最後にタイミング、といった具合に。 今回はその中の声を取り上げようと思う。 当たり前だが、通常、声は見えない(音

攻撃性の行方

 さて。ここまでああだこうだと日常系の話を綴っていましたが、今回は真面目に聞きたいことがあります。  お題は攻撃性について。  最近よく思うのが、攻撃性はベクトルが色々あるよなということなんですよ。特に女子。 攻撃性の表現のバリエーションとして、他者に向けた攻撃行為・他害と、自分に向けた攻撃行為・自傷がありますよね。自傷行為といえばリストカットや痛みを伴うほどの爪噛みなどがあるわけですけども、個人的には男子の攻撃性は他害として出やすくて、女子のそれは8対2か9対1くらい