Stationの省略形は「Sta.」?「Stn.」?
街中の看板や案内図では、頻出する単語は省略形で書かれることがある。「~駅」を表すStationもそのような単語の1つである。さて、街中ではStationの省略形として「Sta.」「Stn.」のどちらも見かけるがどちらが正しいのか、というのが今回の話題である。
結論から述べると特に決まりはないためどちらも正解である。
これだけで終わるととんでもないクソ記事なので、ここではもう少し深く掘り下げて、英単語の省略形とその規則について考察してみることにする。
2種類の英単語省略ルール
英単語の省略形は様々な場面で現れる。ここでは省略形が3文字になるものをいくつか例に挙げてみよう。
app (application; アプリケーション)
jct (junction; ジャンクション、合流点)
max (maximum; 最大値)
sec (second; 秒)
rec (record; 記録する)
vol (volume; 巻)
プログラミング言語などでは次のような省略形もよく見られる。
bin (binary; 二進)
chr (character; 文字)
def (definition; 定義)
seq (sequence; 順序)
src (source; 源)
tmp (temporary; 一時的な)
ここまで並べると省略の仕方によっておおよそ2種類に大別されそうだということに気づく
語頭数文字をそのまま切り抜くパターン(アクロニムタイプ)
語頭から子音字のみを数文字抜き出すパターン(アブキダタイプ)
ここでアクロニムタイプだとかアブキダタイプというのが著者が勝手に命名している。しらべても(おそらく)ヒットしないのでご了承を。
さて、上述した英単語を2種類の省略ルールをもとに分類してみる。
ルール1: アクロニムタイプ(語頭からそのまま切り抜き)
app (application; アプリケーション)
bin (binary; 二進)
def (definition; 定義)
max (maximum; 最大値)
sec (second; 秒)
seq (sequence; 順序)
rec (record; 記録する)
vol (volume; 巻)
ルール2: アブキダタイプ(語頭から子音字のみ抜き出し)
chr (character; 文字)
jct (junction; ジャンクション、合流点)
src (source; 源)
tmp (temporary; 一時的な)
ここで話を最初のStationに戻してみよう。ルール1に従うとStationは「Sta」という省略形になる。またルール2に従えばStationは「Stn」という省略形になる。このダブルスタンダードな省略ルールこそがStationが「Sta」とも「Stn」とも表記される所以なのであろう。
理想的な省略形とは
さて、最後に英単語の理想的な省略ルールについて考えようと思う。
まず最も大事なことは多くの人が省略形を見て簡単に元の単語が推測できること(平明性)である。そしてそのために他の単語に間違われにくい省略形を作ること(特異性)が大切である。いくつか具体例を挙げながらこれらの点について考えてみたいと思う。
ケース1: converter (変換器)
converterの3文字省略形を考えてみる。ルール1に従えば「con」ルール2に従えば「cnv」となる。
ここで特異性について検討する。「Acronym Finder」というサービスを使ってconやcnvを調べてみる。このサイトは省略形を入力すると元単語を予測してくれるサービスである。(ただし本記事では扱っていない複合語もヒットしてしまう点に注意が必要である)
「con」を入力した結果は「connection」や「contrast」など41件がヒットした。一方で「cnv」を入力した結果は「conveyor」など16件がヒットした。
特異性という観点から述べると、省略形からたくさんの英単語が推測されてしまうのは良くない。特異性という観点では「cnv」に軍配があがる。
このようなヒット件数の違いとして文字頻度の違いが考えられる。英単語は26文字の組み合わせによって出来ているが、26文字は同じ頻度で登場するわけではない。aやeは多数の単語に出現しやすく、vやqはあまり出現しない。
(wikipediaの頻度解析の記事に文字頻度を示したグラフがあるので詳しくは該当ページを閲覧いただきたい。)
他の単語に間違われない省略形をつくるためには、単語内に現れる低頻度な文字を省略形で用いるべきである。例えば「a」という省略形ではaを含むあらゆる単語が候補になるが、「v」という省略形ではvを含む単語のみが候補となり、「a」に比べて格段に候補数が少なくなる。
実は上述しているルール2「アブキダタイプ(語頭から子音字のみ抜き出し)」は、文字頻度に従った至極合理的な省略規則なのである。そして母音に次いで出現頻度の高い「n」や「t」などもこの考え方に従うと省略されるのも頷ける。(実は上述の「junction→jct」は「n」が省略されている。)
まとめ
あれこれ話が脱線したがStationは「Sta.」「Stn.」どっちを選ぶかなんて、まぁ結局人なんやけどな。
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