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【遺稿シリーズ】第十一夜〜菊の花の眠り

 ちょっとシリーズ展開の間が空いたので、前フリを。すっかりお笑い芸人だと思われているみこちゃんですが、お笑いと並んで関心事があるのは純文学です。

 ミステリも好きで書いています。過去ログに埋もれていますが、また復活させたいです。

 本日は、そんなみこちゃんの純文学方面をどうぞ(^-^)。

 TOP画像は、「みこちゃん出版」から本を出していただいている、K.Sakaiさんのオリジナルの鉛筆画です。

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みこちゃん家の仏壇の裏から、某文豪の未発表の遺稿が見つかったので掲載しました。
(゜0゜)

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こんな夢を見た。

うすくらいまるで、座敷牢のようなかび臭い畳の部屋で起きた。

まるで知らない場所だった。

一体ここは何処なんだろうと思っているうちに、「おはようございます」としわくちゃな老婆が膝をついて襖を開けた。

「おはよう」と言った。

「まあ。おはようなんて言っていただけたのは何年ぶりでしょうか」

老婆は満面の笑みを浮かべた。

わけが分からなかったが微笑んでみた。

「まあ。そんな風に微笑んでいただいたのは何年ぶりでしょうか」

老婆は満面の笑みを浮かべた。

俺は何だかわけも分からずに、こんな言葉を発した。

「ただいま」

当然のように老婆が「おかえりなさい」と言った。

「坊ちゃまが帰っていらしたので、菊の花が咲きました」

そう言って老婆は菊の花を仏壇に飾った。

ああそうか、と自分はやっと合点がいった。

「もう帰るね」

「まだいいじゃございませんか」

「いや、お前を連れていけない」

仏壇にある菊の花を見て、菊の花の匂いをすううっとかいだ。

そうだ、おれは死んでいたんだな。

乗用車というものが珍しくて、ばあやの言うことを聞かずに、往来に飛び出ていってそこで死んだんだったっけ。

お別れを言ってなかったな。

「ばあや、ありがとう」

「とんでもございません」

かび臭い畳の匂いを胸の奥穿に吸い込み、俺は仏壇の遺影の中に帰った。

今度は「さようなら」というばあやの声が耳に最後に耳に、届いた。

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嘘ですみ!こちゃんのオリジナルでしたー(^-^)
偽 夏目漱石『夢十夜』でしたー


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