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小姫の故郷を訪ねて③~実は人口たった4億人の中国

中国には厳然とした身分制度がある

 中国は一般的には、13億人の人口を抱える超大国だと思われています。しかし、日本で認識されているイメージの中国人は実は4億人しかいません。

 中国では日本の江戸時代そのままに、生まれつきの身分制度が存在します。身分制度というとインドが有名ですが、中国にも厳然とした身分制度があります。

 それが、都市部に生まれた人が持つ都市籍と、農村部に生まれた人が持つ農民籍です。

 日本国憲法と同じく中国でも、居住の自由は認められていますが、現実的には農村部において農民籍の人が住む割合は96%にのぼります。

 そして、世界のメディアで取り上げられる中国人の億万長者、日本で爆買しているリッチなインバウンド観光客は、その大部分が都市籍を持つ中国人です。

 つまり、西側諸国が最近の中国はすごい!と知らされているのは、実は都市部に住む都市籍を持った人だということなのです。

 小説の中では、小姫は最後に中国に帰って自分の先祖伝来の土地を守るため、大規模な茶農園を経営することを人生の選択としました。


 この背景には、中国のいびつとも言えるこの都市と農村の二重構造が隠されていたのでした。


中国の経済指標が信頼できない本当の理由を経済の専門家は意外と知らない

 FXをやっている人、エコノミスト、そして最近では一般の方々の間でも中国の経済指標がデタラメだというのは周知の事実となっています。

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 しかし、専門家でもなんでこんなデタラメな数字が出てくるのかを明確に説明できる人はそう多くありません。

 いくらなんでも李克強に賄賂を使って数字を上げてもらうとか、そんなことをやっているマヌケな中国人官僚はいません。しかし、世の中のいいかげんな嫌中本では、あたかもそういうことをやっているかのように書いています。

 これは困ったものです。中国が嫌いというのはしょうがないにしても、嫌いだから賄賂で経済指標をいじっているはずだとか思うのは、あまりにも非学問的態度なのでやめたほうがいいと思います。

 中国で経済指標の嵩上げをするには、無駄な電力消費をさせることが一番なのです。李克強指数という有名な指標があります。これは共産党の公式発表の数値よりも信用度が高いということで知られています。

 しかし「中国嫌い=やつらは賄賂で数字を操作している」という単純な思考の人は、李克強指数すらも、賄賂なんぞ使わずに簡単に合法的に数値が操作できることを知りません。

李克強指数を嵩上げするためには 寒村を六本木にしてしまう

 李克強指数で数値操作するために最も手っ取り早い方法は、農村部を無理やり工業地帯にして、電力を急速に消費させることだというのは、中国官僚たちの常識です。

 そして、その動機は農村を開発して農村部の農民籍の人に潤ってもらおうということでは残念ながらありません。

 地方の開発の多くは、中央の権力闘争の道具として使われます。例えばマオタイ酒で有名な貴州省(下記の赤いところ)は、中国でも最貧の地域ですがここでも大規模な工場団地の建設が突然降って湧いたように生じました。

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 しかし、交通も不便でわざわざ工場を建てる企業はありませんでした。よって、工場もないのに工場で働く人が住む工場団地と、工場をいつでも建てられるようにした土地造成が終わった地面だけが残っています。

 それで終わりではありません。この省の担当者は貴州省出身者でもあり、習近平の側近中の側近と言われる陳敏爾です。

 それで何をやったか。寒村なのに街中に日本のクリスマスイブのようなイルミネーションを一年中点灯させました。観光客も誰もおらず、主な仕事は農村での野良仕事という街は、新宿か六本木のように煌々としたイルミネーションが不夜城のように瞬いているというわけです。

 もちろん、李克強指数を嵩上げするために消費電力を上げるのが目的です。

 この辺りは、なかなか金融論が専門の経済学者や、国際政治学から中国を論じる政治学者、エコノミストなどからは出てこない情報です。

 私はこの辺りの実情と中国経済のからくりの真相を、東京大学で農学生命科学研究を行っている川島博之氏の著作から知りました。経済学や政治学から中国を見ている中国ウォッチャーの人に是非おすすめの本です。

 これを読むと、次のリーマンショック級のブラックスワンはもしかしたら中国の農村の大蜂起から始まるのではないかなどと想像してしまいたくなります。

我らが小姫は農民籍地域の文化を死守しようとしたのだった!

 この回では、小姫が農村に帰って茶農園を経営するという展開になっています。これを唐突と感じる方もいらっしゃったと思います。実際コメントでもそう書いてくれた方もいました。

 これはその次のお姉ちゃん(みゆき)からの手紙で、その動機については納得してもらえる構成にしてあるのですが、小説を離れてその背景の中国政治経済状況を説明すると、ここまで解説してきたことと切り離せないことがお分かりいただけると思います。


蛇頭は実は中国の将来を憂う国士だった(のかもしれない)

 福建省の生まれ故郷に大規模な工業団地開発計画が勃発。ヘタすると、生まれ故郷が、寒村の六本木になってしまうことが中国出身の小姫と蛇頭にはよくわかっていたのでしょう。

 そこで、政治力もある蛇頭に400億円出してもらって、福建省の寒村の一部を自分たちの手で守ろうとしたわけでした。

 おそらく、小姫と蛇頭の間には同じく中国の現状の政治を憂う者同士、そんな話があったのかもしれません。

 そう考えてみると、蛇頭は単にシンゴちゃんに愛人の小姫を寝取られた男、そしてそれを赦した寛大な男というだけでなく、人口の残り9億人の未来を切り開こうとした国士という一面もあるという、楽しい読み方もできるかと思います。

 実際あの人は悪人ではありますが、あれだけのことをやるのには損得勘定を無視した国士としての気概がないと人はついてこないと思われます。

 日本の戦前右翼大物の国士ぶりを連想していただけると、作者のみこちゃんは、もっと喜びます(^o^)/。

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