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「認知科学」、マジカルナンバーの話と諸効果 (9)


9 諸効果 (3)

 
◎「フレーミング効果」
 フレーミング効果とは、情報伝達における参照点の表現を変えることで、受ける・与える印象が変わる心理現象です。英語で額縁・枠組みを意味する「Frame」が由来となっています。次の例文をご覧ください。
「1」○○製品を導入した9割の企業が利益を生み出している
「2」○○製品を導入した10%の企業が利益を生み出せていない
 大半の人が「1」の例文に好印象を受けるでしょう。その理由はシンプルで、例文の参照点である利益を生み出すのに成功した企業の割合をポジティブな表現で強調しているためです。「企業の9割が成功」と「企業の10%が失敗」は同じ意味ですが、受け手の印象はまったく異なります。
 また、フレーミング効果は「プロスペクト理論」と深い関わりがあります。プロスペクト理論とは、人は無意識に利益獲得よりも損失回避を重視するという考え方です。上記例文を見ると「企業の9割が成功」の表現は、プロスペクト理論の観点からも効果的な主張といえます。反対に失敗している事実を強調すると損失回避の思考が働き、ネガティブな印象を与える確率が高いでしょう。
 
◎「バーナム効果」
 「バーナム効果」とは、大半の人々に当てはまる事柄が、自分だけに当てはまると思い込む心理現象の一種です。人が占いを好む理由を研究するアメリカの心理学者バートラム・フォアが提唱したことから、「フォアラー効果」ともいいます。たとえば、「今、悩みを抱えていませんか?」という広告があるとします。一般的に考えて、悩みを抱えていない人など少数でしょう。これは誰もが当てはまる事柄ですが、バーナム効果により自分のことのように感じてしまうのです。
 トップセールスマンは、バーナム効果を狙ったアプローチで、お客様の本音を引き出すのが上手です。具体的には、「貴社は○○にお悩みではありませんか?」「社内の生産性を高めたいとは思いませんか?」などと、ほとんどの企業が抱えている課題・問題に触れます。たとえ一般的なアプローチでも「当社をよく調べてくれている」「信頼できる営業パーソンだ」と感じさせられるのです。その結果、「実は○○が課題と感じていて……」と、商談相手の本音を引き出せます。相手の本音・思考を汲んだ上で、的確な提案ができれば成約につながりやすくなるでしょう。

◎「フォン・レストルフ効果」

 ドイツの精神科医フォン ・レストルフ が提唱した心理用語で、「孤立効果」とも呼れていますが、似たような物体が多くあった場合、1つだけ変わったのがあると無意識に印象に残りやすくなる効果のことを言います。例えば、黒髮の人が集まった会場の中で、派手な髪色をした人を見たときに思わずそこに注目してしまうと思います。デザインをする時に、色やコントラストで目立たせたいボタンやコンテンツが周りと比べて際立ているかどうかを確認する必要があります。 

◎「ストループ効果」
 2つの整合しない情報が同時に入ってきた時、脳が反応するまでに時間がかかることを「ストループ効果」といいます。例えば青色で書かれた赤という文字は赤色と書かれた赤に比べ脳が認識するまでに時間がかかります。日常にあるものでいうと、一般的には「止まれは赤」「進めは緑」、トイレでいうと「男性は青や黒」「女性は赤やピンク」、「温かいものは赤」「冷たいものは青」といったようにすでに認識されているものの色と文字や形の不一致は混乱を引き起こしてしまいます。 

◎「ピグマリオン効果とミケランジェロ現象」
 ギリシャ神話由来の「ピグマリオン効果」は他者への期待値が後の成長を決定づける要因の一つと考えられ、米国心理学者ローゼンタールが教師の期待の有無が生徒の学習成績を左右するとの実験結果を報告した。「ミケランジェロ現象」は、『ダヴィデ像』等神業的な傑作を残したミケランジェロの「彫刻は石を彫り出して作るのではなく石の中に元々眠っている」という考えで、相手の夢や理想を掘り出す支援をすることで相手の大切な存在になれるというものです。相手に期待し、理想像に近づく努力をし、行動を促しあうカップルは円満という。「恕」の精神と共に長寿社会に必須な考え方。
                             (つづく)
                            

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