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マイ 投稿・寄稿 16

16 「学校給食」の充実と食育の推進を!!

   少子高齢化が進む現代社会では「子どもは社会の宝」という意識がいっそう重要です。子育ては最も公共性の高い人間の営みであり、子どもの成長を社会全体で支え、喜び合いたいものです。その中で「食育」は社会性や協調性が身につき、生きる力を育む上で基本となり、健康、食文化の伝承、食糧・環境問題を考える点でも重要です。
 鶴岡市は、2014年に日本で初めて「ユネスコ食文化創造都市」に認定されました。16 年には江戸時代に広がった「出羽三山」を通じて現在・過去・未来をめぐる「生まれかわりの旅」の物語が文化庁の日本遺産に登録。17年に「サムライゆかりのシルク 日本近代化の原風景に出会うまち鶴岡へ」の物語が日本遺産に登録。また、19年に日本遺産「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間(北前船寄港地・船主集落)」の一つとして海岸部の加茂の町並みなどが登録されました。3つの「日本遺産」があり、クラゲ展示種類数世界一の「加茂水族館」や4つの温泉地など豊富な観光資源を持ち、観光者数では山形県内の市町村で第1位という誇らしい地域です。
 もう一つ誇れるものをあげると、鶴岡市は学校給食発祥の地です。1889(明治22)年に山形県鶴岡町(現・鶴岡市家中新町)の大督寺境内にあった私立忠愛小学校で、生活が苦しい家庭の児童に、無料で学校給食を実施したことが起源といわれています。大督寺は忠愛小学校開校前に旧藩士子弟教育のための英語学校が開設されていた由緒ある寺で、藤沢周平作品『義民が駆ける』にも登場します。旧荘内藩主酒井家の菩提寺で、私の菩提寺でもある大督寺の門の脇には「学校給食発祥記念碑在所」の碑が立っています。本堂に続く道の左側に「学校給食発祥の地」の記念碑もあります。
 当時、常念寺の佐藤霊山という住職を中心に、寺院の住職たちが貧しい家庭の子ども達も学校に通い勉強ができるようにと大督寺の本堂の一部に「忠愛小学校」を作りました。貧しい家庭の子ども達は学校に弁当を持ってくることができませんでした。そこで、住職たちは雨の日も雪の日も休まず托鉢(お経を唱えて町を歩き、お金や食べ物を頂戴すること)を行い、弁当を持ってこられない子ども達に昼食を作りました。これが日本の「学校給食」の始まりで、1月 24 日~30日は「全国学校給食週間」になっています。
 埼玉県北本市に学校給食の魅力が詰まった日本で唯一の施設「学校給食歴史館」があるのをご存じでしょうか?忠愛小学校で出されていた給食メニュ―「おにぎり、塩鮭、菜の漬物」のサンプルが展示されています。
 鶴岡市は学校給食で食材の地産地消を推進しており、「ユネスコ食文化創造都市」認定に伴い2016年は「食文化創造都市特別献立」を、19年は「スマート・テロワール給食」を実施しました。スマート・テロワールとは、農と食を地域の中で循環させ持続可能な食料自給を目指す事業。庄内で食料自給圏を形成しようと山形大学農学部と鶴岡市が一緒に取り組んでいます。22年には「SDGs鶴岡エコ米」給食や「酒井家庄内入部400年記念献立」を提供しました。
 山形大学では、「学校給食の魅力を山形から世界へ発信~海外向け給食紹介動画の無料配信~」を2024年2月からYouTubeで配信しています。英語版の給食紹介動画制作は初の試みで、基礎編の第一弾に続き、第二弾(地産地消編)、第三弾(持続可能編)の制作も進めています。海外の研究者や行政関係者、外国人に山形の学校給食の魅力や意義をPRするだけでなく、国内・外の幅広い世代にその価値を再認識してもらう有効な食育教材となっています。
 私は、学校における更なる食育の推進・学校給食の充実、給食費無償化を望みます。給食費を自治体や国が賄い、全ての子どもが平等に栄養バランスのよい学校給食を食べることができ、経済的理由から子どもの健康や学習機会が損なわれないようにする役割と意義は大きい。鶴岡市は22年11月から給食費無償化を実施し、現下の物価高騰状況等を踏まえ、24年3月まで完全無償化を実施。今後も完全無償化継続を検討しているとのこと。
 子どもの貧困が社会問題となる中、無償で食事を提供する「子ども食堂」が急増しています。また、給食費無償化を全県で実施する青森県、東京都も区市町村の支援額の半分を都が補助するなど全国的に給食費無償化への動きが広がっています。地域格差解消のためにも、国は無駄を省く歳出改革や学校給食法の改正を行い、国庫から負担・補助するなど、国の責任と財源で無償化を進めるべきです。
 鶴岡市も多くの地方都市と同様、少子化及び大都市への人口流出などによる人口減少が極めて深刻な状況で、その対策が喫緊の課題です。学校給食費無償化をはじめとする子育ての経済的負担軽減など総合的な「子育て支援策」とともにU・I・Jターン(移住)を支援し、「若者・子育て世代に選ばれる街」づくりを推進してほしいものです。(『鶴岡タイムス』2024年6月15日掲載)                           (つづく)


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