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アイドルオタクではなかった私がドラマ『silent』にハマった理由


私が『silent』を好きな理由はたくさんある。
強引に言ってしまえば、ほとんどすべてが好きだ。


でも、「強引」なんて言葉、『silent』には全然似合わないから、その一番の理由を語ることにする。

ご覧になっていない方向けに簡単に説明すると、主人公の紬は、高校生時代の恋人であり、一方的に別れを告げられたまま音信不通となった佐倉想と8年ぶりに再会を果たします。再会した想は聴力を失っていて……。

好きなまま別れた2人の切なくも真っ直ぐな恋愛を描くと同時に、友人・家族・社会とのそれぞれの関係性も丁寧に描いているドラマです。

経験は無くとも、その「表情」を知っている。

さて、私が『silent』にハマった一番の理由は、「表情」です。

私は、耳が聴こえなくなったことも、大切な誰かに突然の別れを告げられたことも、その誰かの耳が聴こえなくなっていてショックを受けた経験もありません。

それでもドラマに共感するのは、登場人物の「表情」を知っているからです。見たことがあるからです。

同じ経験はしていなくても、「この顔、知っている。多分、あの時の私はこういう顔をしていたはず」と思ったり、「ものすごく寂しくて辛そうで、心がきゅーっと締め付けられる」と感じたり、登場人物の気持ちが痛いほど伝わってきます。

心を鷲掴みにしてくる、想と奈々の表情

ここからは、特に心を掴まれた2人の表情について語りたいと思います。

佐倉想(目黒蓮)…18歳で耳が聴こえにくくなり、23歳で完全に聴力を失い中途失聴者になった紬の元恋人。かっこよくてスマートで、「言葉」を大切にする人。

桃野奈々(夏帆)…生まれつき耳が聴こえない聾者で「耳が聴こえない人向けの就活セミナー」で想と出会い、話を聞き、手話を教えてくれた想の大切な友人。想に片想いをしている。

想の表情は、目。痛いほどに感情が伝わる。

佐倉想演じる目黒蓮さんは、目の演技が本当に幅広いと思っています。

耳が聴こえなくなっていくことに悲しみ、傷つき、ただ受け入れるしかない状況の、伏し目がちで光のない目。

心に希望が宿ったときに、ほんのり力を感じる目。

自信なさげに話し出し、だんだんと相手の顔に視線を向けるときの目。

悲しそうに怒っているときの目。

話すことを諦めているときの目。

紬や親友の湊斗をからかうときのいたずらっぽい目。

紬や湊斗と話すときの嬉しそうな愛おしそうな目。

ここまで目の表情から感情が読み取れる俳優は、かなり稀有な存在ではないでしょうか。

想が幸せそうにしていたり、前に進む決意をしたときの表情を見て、自分のことのように嬉しい気持ちになった方がたくさんいるのではないでしょうか。

奈々の表情は、人に見せたくないはずの本心。目を背けたくなる。

夏帆さんが素晴らしい役者さんであることはもちろん知っていたのですが、今作ではその役者魂に惚れ惚れしました。

人に見せたくない感情を、私たちは一生懸命に隠そうとしますが、隠しきれないときってありますよね。

奈々も人に見せたくない、どろどろした感情が表に出ていて、奈々が自分だったらと思うと、反射的に目を逸らしたくなるときがありました。

例えば、想に近づく紬に嫉妬し、意地悪を言っているときの顔は、目が大きくなって口元も歪んでいたり。

想と向き合う場面では、綺麗に映ろうとか、そんな気持ちを一切感じさせない表情をする夏帆さんに、最大級の尊敬の念を抱きました。

一方で、大学生の奈々は本当に純粋そうな無垢な顔をしていて、思わず「可愛い……」と呟きました。振り幅がすごい。

『silent』は私にとって宝物のような存在。

ひとつひとつの場面を丁寧に描いている『silent』だからこそ、表情ひとつひとつが視聴者の共感を呼ぶ要素となり、現実にはあまり起こりそうにない物語なのに、社会現象を巻き起こすまでの共感性の高いドラマになったのだと思っています。

私にとって『silent』は、大切にそっと包み込むように扱って、誰にも汚させたくない、宝物のような存在です。

『silent』チームの皆様に最大限の感謝と尊敬の念を込めて。

ドラマをリアルタイムで見るために、逆算してお風呂や家事を済ましたのは、本当に久しぶりの経験でした。

2022年10月期は、『silent』があるから毎週の楽しみとして、1週間頑張ることができました。木曜日22時は、心を潤してくれる大切な時間になっていました。

そんな作品を作り、届けてくれた『silent』チームの皆様に、最大限の感謝と尊敬の念を送らせていただくことで、このラブレターのような文章を結びたいと思います。

とんでもないラブレター兼感想文をお読みいただき、ありがとうございました。