Katie the Catsitter(グラフィックノベル)

サマーキャンプの参加費稼ぎに、同じマンションに住む人たちの手伝いをはじめた12歳のケイティ。キャットシッターを頼まれた部屋にいくと、そこにいたのはなんと217匹のネコ! しかも飼い主はスーパーヴィラン!?

作:Colleen AF Venable
画:Stephanie Yue
出版社:RH Graphic (Random House)
出版年:2021年
ページ数:224ページ


おもな受賞歴

下記文学賞にノミネート
・Rhode Island Children’s Book Award(2023)
・Illinois Rebecca Caudill Young Readers Award(2023)
・Connecticut Nutmeg Children’s Book Award(2022)
・Florida Sunshine State Book Award(2022)
・Maine Student Book Award(2022)
・South Carolina Children’s Book Award(2022)
・Vermont Golden Dome Book Award(2022)

作者について

コリーン・AF・ヴェナブル:ニューヨーク在住のコミックス作家・デザイナー。2019年に発表したYAグラフィックノベル『Kiss Number 8』(画:エレン・T・クレンショー)は全米図書賞児童書部門ロングリストにノミネートされた。動物好きで、ほかにも動物が登場する作品を発表している。
ステファニー・ユエ:アトランタ、北京、香港で育ち、ニューヨークでイラストレーションを学ぶ。コリーン・AF・ヴェナブルの「Guinea Pig Pet Shop Private Eye」シリーズほか、絵本や読み物のイラストを手掛ける。2011年にアイズナー賞を受賞したレイナ・テレグマイヤーのグラフィックノベル『Smile』ではカラリストをつとめた。

あらすじ

※結末まで書いてあります!

 夏休みを目前に控え、ケイティの親友ベサニーとジェスはサマーキャンプの話でもりあがっている。母子家庭のケイティは経済的に余裕がないため、参加したことがない。最後の1週間でも参加できるようにバイトしてみたら? とすすめられ、住んでいるマンションで「お手伝いやります!」の貼り紙を出してみたが、重い買い物袋を6階まで運ぶ体力もなければ、水やりを頼まれた植物も枯らす始末。凹むことばかりだが、ベサニーとおそろいで髪にブルーのメッシュを入れると少し気分も明るくなった。
 ある日、ケイティが仕事を探していると知ったマデリンが、ケイティにキャットシッターを依頼する。マンションはペット禁止だが、内緒でなんと217匹のネコを飼っていた! しかもそれぞれのネコはお茶を出したりパソコンを使ったり、3Dプリンターを使ったりできるスーパーキャットたちだ。しかも1時間30ドルという高時給。ケイティはネコたちにメロメロだが、マデリンが仕事に出かけると、ネコたちは一気に勝手気ままに大騒ぎする。物を壊したり壁を破ったり、オンラインでピザを大量注文したり…。ケイティはハラハラするばかりだが、マデリンが帰宅する深夜0時の10分前になるとネコたちはピタッと騒ぎをやめ、ゴミを捨てに行ったり壁やソファを繕ったりと片づけをはじめた。そして0時には完璧に整理整頓された部屋で、マデリンを迎える。最初はネコたちに振り回されてばかりのケイティだが、名前を覚え、それぞれのネコの特徴をつかんでくると、ネコたちも懐き、いっしょにテレビを見たりゲームをするようになった。キャンプ代は順調にたまり、ベサニーとも頻繁に手紙のやりとりをして、期待はふくらむばかりだった。
 その頃、マウストレスという女性のスーパーヴィランが工場を襲うなど、世間を騒がせていた。しかしそのおかげで、違法な動物実験や闘犬ギャンブルが摘発されるというプラスの側面もあった。ケイティは現場で盗まれたと言われるサングラスをマデリンの部屋で見つけ、マデリンがマウストレスなのでは、と疑いはじめる。ベサニー宛のポストカードにも自分の疑惑を書く。それを読んだ郵便局員は、ポストカードを秘密のルートでスーパーヒーローのイースターン・スクリーチに送る。フクロウのコスチュームでフクロウ・ガイと呼ばれている大人気のヒーローだ。

 毎日来ていたベサニーからの手紙が途絶えた。気分転換にケイティはママとスーパーヒーロー展に行く。個人的にはあまり興味はないが、友だちだけでなく先生もフクロウ・ガイに夢中だった。スーパーヴィランコーナーもあった。凶悪そうなマウストレスはマデリンとは似ても似つかず、ケイティは自分の思いこみを笑い飛ばす。やっとベサニーからポストカードが来たと思ったら、好きな男の子のことでジェスとぎくしゃくしているとのこと。飾りのシールは1枚も貼られておらず、いつもの「ベサニー」というサインも「ベス」に変わっていた。ケイティは、お金が貯まったとしてもキャンプにうまくなじめるか、不安になる。インターネットで公開されているキャンプ写真でも、ベサニーは男子と一緒に楽しそうに写っていた。落ち込んでいるケイティを見て、マデリンも予定を変えてチョコレートケーキをすすめ、話を聞いて励ます。
 チョコレート工場もマウストレスの被害にあっていたので、やはりマデリンがマウストレスなのではという思いが晴れず、ママにも相談する。マウストレスは悪者だが、マデリンはいい人で、とても同一人物には思えないが、どうも気にかかった。ママは今度はピクルスフェスティバルにケイティを連れ出す。サマーキャンプに行っていたら参加できないフェスティバルだ。会場では馬車用の馬の飼育環境改善を訴えるデモがおこなわれていて、マデリンも参加していた。デモに参加していたスケートボードの少女マリーがケイティに話しかける。マリーもマデリンのことをステキな人だと尊敬していて、スーパーヒーローのステンレス・スチールの正体ではないかと考えていた。ケイティはそうは思わなかったが、マデリンへの疑惑は晴れた。

 ある晩、12時を過ぎてもマデリンが帰ってこなかった。テレビをつけると、フクロウ・ガイがマウストレスを捕まえたというニュースが流れていた。別人だからとケイティは気にしないようにするが、ネコたちに促されてとあるボタンを押すと、隠し部屋があらわになる。そこはまさに、マウストレスの司令室だった。ケイティ用のユニフォームも用意されていた。
 軍帥ネコのピーヴが作戦を発表し、ネコたちの役割分担を発表した。画家ネコのフリーダが図解し、ケイティも理解する。ケイティたちは屋上に隠してある小型飛行機でマウストレス救出に向かった。ところが、事前調査していたよりも警備員の数が激増していた。フクロウ・ガイのファンの警備員たちが集まっていたのだ。ケイティは計画を変更し、ネコたちに指示を出す。煙玉やフクロウ・ガイの実物大イラストで警備員の注意をそらし、総攻撃でフクロウ・ガイも気絶させる。ところがマウストレスがとじこめられている独房は簡単には開けられなかった。警察署長はマウストレスが動物愛護のために闘っていることに気づいていて、同情してくれたが、独房を解錠するには2人分の指紋認証が必要だったのだ。その場でハッキングエキスパートネコのジョリーが警察署長の指紋のコピーをとる。警察署長本人とコピーを使うと、見事に扉が開いた。
 マデリンはお礼に、残りのキャンプ費用と、高級ヴィーガンレストランの生涯無料飲食チケットをプレゼントする。マデリンはそのレストランのオーナーだった。しかしケイティはキャンプに参加しないことに決める。残りの夏はマリーにスケートボードを教えてもらい、貯金はそのまま獣医をめざすために続けることにした。

 サマーキャンプのための資金稼ぎをはじめたケイティ。しかし12歳にはできることがかぎられていて、同じマンションの住人のお手伝いぐらいしかできない。何をやってもうまくいかなかったところへ、5階に住むマデリンからキャットシッターを頼まれる。ネコ好きのケイティを待っていたのは、なんと217匹のネコ! しかもそれぞれネコ離れした特技があるというスーパーキャットたちだ。さすがに物語内で特徴がわかりやすく描かれているのは20匹ほどだが、ネコまみれのページも多く、ネコ好きにはたまらない。巻末にはネコ名簿のイラストがあり、おそらく全ネコが載っている。
 スーパーキャットとしての有能っぷりはもちろん、階下に住むクレーマーのミセス・パイパーズとの攻防も愉快だ。ネコたちは毎晩のようにミセス・パイパーズの部屋からソファを盗み出し、ミセス・パイパーズはあの手この手でソファ泥棒を阻止しようとする。もちろん犯人がネコだとは知らない。
 友だちみんながサマーキャンプに行ってしまったケイティの寂しさや、ベサニーとの距離が離れていく様子も、丁寧に描かれている。ママとマデリンはもちろん、マンションの1階の雑貨屋でケイティの愚痴を聞くミスター・Bや、動物好きの警察署長など、ケイティを支える大人たちも素敵だ。いつも雑貨屋にいるネコも実はマデリンの218匹目のネコで、マデリン救出の際にはヘルプに来る。マウストレスは表向きにはスーパーヴィランだが、実は動物を救うために活動している。ほとんど人前に姿を見せないため、憶測でスーパーヴィランに仕立て上げられているのだ。
 新しい友だちもでき、新しい目標もできてめでたしめでたし…と思いきや、次巻ではサマーキャンプから帰ってきたベサニーとのすれ違いや、マリーも含めた3人の友情、マデリンの苦悩がメインとなる。思いがけない人たちがスーパーヒーローだということも判明したり、マウストレスの偽物も登場したり、盛りだくさんだ。もちろんネコたちの活躍も見逃せない。

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