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コロナ下で広がる地方エンジニアのリモート派遣 営業活動を爆速させるツール「Skill-Repo」が札幌から誕生!

この記事は、2022年8月17日に北海道のIT情報発見!発掘!マガジンのmikketa!!に掲載されたものです。

コロナ下でリモートワークが普及した昨今、札幌のIT業界に対して、道外企業からエンジニアのリモート派遣依頼が増えています。札幌市中央区のアプリ開発企業インプル(西嶋裕二社長)では、増え続けるエンジニアの派遣依頼に対応するため社内向けの営業支援ツールを開発。今年6月からは、クラウド型サービス「Skill-Repo(スキルレポ)」として外部企業への提供も始めました。便利な機能や開発の裏話、将来展望まで幅広くうかがいました。

ーーエンジニアの派遣依頼が増えているそうですね。

瀧野修平CTO(以下、瀧野) はい。1ヶ月単位でエンジニアをクライアント企業に派遣し、システムの開発や保守に当たるようなお仕事です。SES(システムエンジニアリングサービス)とも呼ばれます。もともとの相手先企業は札幌のWEB関連企業が多かったのですが、ここ2、3年は新型コロナの影響でリモートワークが広がり、東京や大阪、九州の企業からも派遣依頼が増えました。今では、道内より道外企業から受ける仕事の方が多くなっています。

ーーどのような企業からの依頼が多いのでしょうか?

瀧野 特定の業種はありません。弊社の強みは、ウェブのUI(見た目)をつくるフロントエンド技術。なかでもアプリ開発によく使われるJavaScriptライブラリ「React」を使った案件を得意としています。最近では警備や鉄道関係の企業様にエンジニアを派遣しました。このほかAWS(Amazon WEB Services)関係などサーバー運用のバックエンド技術でもお仕事をいただいています。

瀧野修平CTO

社内課題を「自社ツール」で解決 新規事業の起点に

ーー依頼が増えるにつれて困ったことも起きたとか。

瀧野 はい。あるプログラムスキルを持つエンジニアの派遣依頼がある場合、社内で適任な人材を探し出すことが営業活動の起点となります。ただ、この作業が結構大変なんです。案件のたびに営業担当から開発部署に対して「このプログラム言語は誰ができますか?」と呼びかけ、人材を探しだし、経歴書をつくって・・・。

ーーエンジニアが多い会社だと探し出すのも大変そうです。

瀧野 私たちの会社には約60人のエンジニアがいるのですが、各人が持つスキルは手掛けた案件ごとにエクセルで管理しており、社内に広く共有する仕組みがありませんでした。先ほど話したような問題が常態化したんです。そこでエンジニアのスキルを一括管理する社内向けツールを現場の人間が開発しました。それがSkill-Repoの原型になっています。

ーー業務改善の努力が生み出したプロダクトなのですね。

瀧野 営業部署のマンパワーを増やして解決する方法もあったと思いますが、今後業務が増えれば、さらに人手が足りなくなり、根本的な解決にはなりません。弊社はシステム開発の企業ですし、問題があればまず自分たちでプロダクトをつくって解決するというのが基本姿勢です。会社で使っている無人受付システムも自社で開発しました。

エンジニアスキルを簡単管理 SES営業を効率化

ーーSkill-Repoの具体的な機能を教えてください。

瀧野 エンジニアがWEB上の登録フォームに自分のプログラミングスキルを入力するシンプルなシステムです。例えばjavaができるエンジニアを社内で探したいなら、営業担当が登録データから対象者を一括検索するだけで可能です。エンジニアの経歴書は自動で作成され、クライアント企業にSkill-Repo上からメール送信することもできます

ーー何種類のプログラミングスキルに対応していますか?

瀧野 必要に応じて適宜追加できるので、数に制限はありません。一口にプログラミングスキルを持っていると言ってもレベルはさまざまですし、習熟度も設定できるようにしました。最新のスキル情報でSES案件に臨めるよう、登録スキルを定期更新するよう各エンジニアに通知する仕組みも設けました。

ーー社内向けツールを外部に売り出そうと思われたのはなぜでしょう。

瀧野 社内での業務改善効果が非常に大きかったからです。同業他社もSES営業で同じような課題を抱えているという話をよく聞いていましたので、社外でもニーズがあると判断しました。開発期間は約3ヶ月です。担当者7、8人がアジャイルでチームを組み、最小人数かつ最速でローンチすることを目指しました。

ーーサービス提供開始から約2カ月が経ちました。反応はいかがですか。

三浦昌大COO(以下、三浦) エンジニア5人分まで無料で使えるトライアルプランは、広告を出すたびに登録企業が増えています。「ワンストップツールでSES営業できるのが嬉しい」というポジティブな声のほか、新機能への具体的なリクエストも寄せられています。有料プランはエンジニア1人の登録につき月額500円。将来的にはエンジニア1万人の登録を目指しています

ーーアップグレードの予定を教えてください。

瀧野 SalesforceやHubspotなど企業が既に導入している営業支援システム(SFA)と連携させることです。Skill-Repoを既存のシステムにAPIで繋ぎこめれば、企業側にとっての導入効果はより大きくなると思っています。

大口真由CFO

受託で磨いた技と経験 中小企業DXに資するプロダクトを

ーー7月に東京事業所を支社に格上げされました。

大口真由CFO(以下、大口) IPO(新規上場)という目標に向け、マーケットの大きな東京での営業活動を本格展開してゆきます。弊社の収益は、東京の大企業や中堅企業などから受託するSIer事業が大半を占めています。ここでの業況拡大に向け、営業人材の採用を含めて東京の態勢を強化します。

ーーSkill-Repoのような自社プロダクトの開発も強化されますか?

大口 SIer事業はエンタープライズ層がターゲットですが、プロダクト事業は日本全国の中小企業に向けたビジネスと考えています。大企業の受託で培った経験と技術を生かし、中小企業のDXに役立つプロダクトを生み出すことが社会貢献になると思っています。収益ベースではまだ1%に満たない程度なのですが、これを将来的には3、4割まで伸ばしたいと考えています。

ーーSkill-Repo以外のプロダクトを教えてください。

三浦 小売店や飲食店向けのデジタル会員証アプリ「One Stack」を昨年6月に発売しました。お店側がクーポン発行やお得な情報の発信、会員データ管理などを行うアプリで、当初は飲食店の利用が多かったのですが、最近では大手眼鏡チェーンなど小売店での利用も広がりました。ここ数ヶ月で引き合いはさらに増えています。

ーー「One Stack」の導入が広がった背景とは。

三浦 二つあると思っています。一つは新型コロナで外出機会が減ったことを受け、小売店や飲食店がアプリでの会員向けサービスを強化していること。もう一つはSDGsの考え方が社会に広がり、紙やプラスチックでつくられた会員証やクーポン、DMを辞めて、アプリに切り替えたいという企業ニーズが拡大したことがあると思っています。

若手エンジニアが躍動 カギは「フラット型組織」

ーー札幌のIT業界は人材不足が慢性化しています。人材確保のポイントとは。

三浦 エンジニアにとって働きやすい職場環境だと思います。弊社の場合は、管理職や上司がいない「フラット」な組織体系をとっており、エンジニアに非常に好評です。

ーーフラットな組織とはどのような組織でしょうか。

瀧野 縦割りの組織であれば部長課長がいて、決裁を上げて指示を受けて…という仕事の流れがあると思います。しかしインプルでは、誰が上に立つということはなく、案件やプロジェクトごとにエンジニアが柔軟に組織され、それぞれのスキルに応じて仕事が割り振られます。

ーーなぜ好評だと思われますか?

瀧野 経験を積まなければやりたい仕事につけなかったり、社の上層部に決裁をあげるだけでひと仕事だったりと、旧来の縦割り型組織に不満を感じているエンジニアは非常に多いからです弊社はすべてが実力ベース。新卒1年目でバリバリとプログラムをかけるのならば仕事を任せます。業務管理は専門のマネジメント組織を別につくって行っています

開放的なオフィス。若手エンジニアの情報交換が活発に行われています

ーー道内人材の採用が多いのでしょうか?

三浦 リクルートサイト上で日本全国に向けて採用活動しています。大阪や京都、新潟など道外からも人材が集まっています。また、通年で募集しているインターンシップは道外からリモートでも参加できます。社員の平均年齢は20代後半です。

「先進技術で社会に革命を」 WEB3.0に照準

ーーWEB3.0関連のビジネスにもチャレンジされていますね。

三浦 NFTや地域トークンなどブロックチェーンの関連技術に昨年から進出しました。いきなりブロックチェーンというのも技術的に難しいので、現在は知識と経験の蓄積を目指すステージと考えています。ブロックチェーン技術に強い企業と業務提携を結んだほか、ブロックチェーンのECサイトやウォレットの開発に参加しました。さまざまな案件を経験することで社内に技術基盤をつくれれば、札幌の同業他社にはない強みになると考えています。

ーー世の中にVUCAという言葉が生まれ、時代の変化が加速しています。

三浦 弊社の企業理念は「先進技術で社会に革命を起こす」です。先ほど申し上げた事業戦略にしても、フラット型の組織運営にしても、一つ一つが企業理念に基づいていることをぜひ知ってほしいです。

編集後記

社内の課題があれば、自分たちでプロダクトをつくって解決する。社外でもニーズがあるとみれば、早速それをビジネスにしてみる。「Skill-Repo」をローンチするまでの流れはスピーディーで滑らか。物事を一つ立ち上げるにも腰が重くなりがちな旧来型の企業とは異なるカルチャーを感じました。大型案件を受託しながら技術を培うという姿勢も、企業経営の参考になるのではないでしょうか。WEB3.0領域での新たなチャレンジに注目です!(文・写真 ヤマモトテツ)

インプルが自社開発した無人受付アプリ。足りないものは自分たちでつくるDIY精神を感じました!


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