桜湯(三重県津市)

#銭湯

今回は三重県津市の銭湯のご紹介であります。

近鉄高田本山駅から徒歩15分程、伊勢湾近くの漁港町の渋銭湯へ。いつも思うのですが、銭湯は地域に根ざし溶け込んでいる為、一見さんには見つけ辛い。ありがたや文明の利器スマートフォンに手を合わせナビゲーション起動、温故知新の精神で本日も細道を練り歩きます。

そして最終的には、目視で煙突を探します。その方がもうすぐ銭湯に着く、という入る前の興奮が増しますし。因みに、煙突はどこも長さは大体23メートルですので、オススメはしませんがその位の長さのものを血眼で探してください。しかし、これはもちろん経験談ですが、高層ビルが立ち並ぶ界隈などですと発見は絶望的になり、徘徊する不審者とみなされ通報されます。

   

知らない町を歩くというのは、色々な店や面白い人や何かしらの発見があるので、わざと私は公共機関を使って通っているのであります。

しかし今回、真冬なのでまだ夕方6時にもなっていないのに真っ暗、人っ子一人歩いちゃいねぇ。閑散とした町並みに、電灯も少なく薄暗く、風が吹いてシャッターがたてる音に驚きながら歩を進めます。グーグルナビゲーターは何故かくねくねと曲がる細道ばかり選択し、私の不安を煽り嘲っております。

私と携帯の充電が切れそうになった時、重厚な日本家屋が並ぶ一角にポツンと、ほのかな電灯の光と暖簾が見えました。

シンプルな外観ですが、男湯と女湯を分ける玄関の中央に、細かい鹿の絵のモザイク画。浴室にもきっと違う柄のものがあるはずです。期待に胸を膨らませて、いざ。

暖簾をくぐり脱衣所に。関東式の丸籠に、縁起物の招き猫。黒猫は魔力があると言われているので魔除けで、左手が上がっているので千客万来かななどと色んな調度品に目を奪われ、思いを巡らせながら服を脱ぎます。

ロッカーにはかつて漢数字が書かれていたそうですが、今では剥げてしまい全く確認出来ませんでした。

浴室に入ると、左手中央に浅湯と深湯一体型の関東式浴槽が、でーんと鎮座しています。どうやら三重県は関東式が主流のようで、関西弁なのに淡い矛盾を感じます。

左手奥の大カランからは定期的に熱い湯が出てくるのでご注意を。浅湯は緩い気泡風呂になっており、体全体を優しくマッサージしてくれます。

で、ありました!!メルヘンなモザイク画。季節は五月でしょうか、動物たちが鯉のぼりを掲げ泳がせています。

このモザイク画を愛でながら湯に浸かると、何時間も入って居られそうな気が致します。気分だけは。

浴室際奥にも風景画モザイク。白のタイルが引き立てています。


そして今回はなんと、お客さんが私の他に居なかった為、番台主のご好意で男湯の桃太郎モザイク画の撮影にも成功致しました。男湯に入ったのは生まれて初めての経験です。

緊張のあまり浴室床で滑り、あわや失神ひどければ人生終了、末代まで痴女という汚名を残す所でありました。くわばらくわばら。

男湯際奥の風景モザイク画。


実は今回一番お伝えしたかったのは、番台のおばちゃんがもの凄く親切で愛嬌のある方であったと言うことなのです。

だいぶ脳の配線が傷んで手ぶらで来てしまった私に、タオルと石鹸を無料でお貸し下さり、20円払えばドライヤーが使えるのにパーマ台の乾かし機(若い方は下の写真参照)をタダで使わせて下さり、電車で来たというと「遠いから送って行ってあげる」と車の手配までして下さりました。出会ったばかりの他人にこんなに良くして貰ったことは、他は今は思い出せませんが、ありません。

創業してから80年、旦那さん亡き後もしっかりお店を守っておられます。聞くと、本当に色んな土地の方が訪れるそうで、もちろん昔からの常連客、大学生など幅広い人々に愛されているみたいです。

いつまでも、明るい笑顔でお風呂に来る人たちと触れ合い続けて欲しいと、お元気でと心の中でお伝えして別れました。

ちゃんと言葉に出して言えばよかった。


■さくら湯                             ■津市白塚町5114                        ■電話059−232−5114                    ■16:45〜22:30                      ■水曜日定休





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