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美術館の新しい開きかた。「作品のない展示室」の個人的記録

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コロナ禍の2020年3月〜9月の記録。「作品のない展示室」で妙に注目されてしまった東京・世田谷美術館の中から見えていたこと。こんなふうに新しく開くこともできる、という発見の日々。
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#旅

耳をかすめるヌルリ。臨時休館前夜その2【美術館再開日記・序】

線引き2020年2月29日から、文化庁の管轄下にあるミュージアムや劇場が臨時休館に入った。27日に出された文科省・文化庁の要請によるものだった。 以降、私の勤める館も含め、全国の公立美術館の多くは「ウチのお上からはいつお達しが来るのか」とジリジリすることになったはずだ。現場独自の判断ができない仕組みだからである。休館開始の日付も、休館中のスタッフの働き方も、再開の日付や方法も、設置者である自治体の意向を常に様子見しながら未体験の具体策に落とし込み、決定が出たら即座に実行する

ギリギリの移動のなかで。臨時休館前夜その1【美術館再開日記・序】

「美術館再開日記」の序章、「臨時休館前夜」。2020年3月の日記の抜粋、今回はその1。 この頃私は、コロナ感染症の情報を必死で集めつつ(その心労で身体に不調が出ていた)、移動への罪悪感を抱えながら(これも不調のもと)、次のプロジェクトへと気持ちを切り替えるためにごく短い台湾旅行に出かけ(第一波を見事に収束させた直後で、しかし日本ではそのことがまだ知られていなかった)、帰国後はどうしても会っておかねば、話しておかねばというアーティストたちのもとを訪ねていた。 すでにあらゆるイ