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美術館の新しい開きかた。「作品のない展示室」の個人的記録

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コロナ禍の2020年3月〜9月の記録。「作品のない展示室」で妙に注目されてしまった東京・世田谷美術館の中から見えていたこと。こんなふうに新しく開くこともできる、という発見の日々。
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#ボランティア

雑談と脱線(だけ)からなるクリエイティビティ?【美術館再開日記28】

子どもたちとボランティアのおっちゃんおばちゃんのワイワイが聞こえない世田谷美術館は、まだ「日常が戻った」とは言えない。そういう事業を担当しているセクションの同僚たちは、つまり今も「非常事態」のなかにある。9月、1階でも展示が再開すると、それがいきなり見えにくくなった。それが危ない。 前回の記事でも書いたが、当館はたくさんの「外の人」、つまりボランティアが関わっている館である。来館者向けのプログラムをつくる「普及セクション」のスタッフは、その「外の人」たちから大小さまざまな知

ボランティアのおっちゃんからの贈り物。「盛らなくちゃな!」【美術館再開日記27】

今回は当館の愛すべきボランティアのおっちゃん(日記では「やんちゃさん」)、またまた登場である。 何度か書いているが、世田谷美術館のボランティアは「そのへんのおっちゃんおばちゃん」が主力だ。区立小学校の4年生(ざっくり5000人)が毎年全員やってくる当館では、彼ら彼女らが大活躍する。もう20年以上になる。登録者数は500人、実際活動しているのはたぶん200人。毎日来る人もいれば、年に1回ふらりと来る人もいる。なんでもOK。 その子どもたちもボランティアも、このコロナ禍で来れ

ボランティアのおっちゃん、コロナひとり旅から戻る。【美術館再開日記18】

10月から東京もGoTo解禁だとか。移動することがこんなにも注視(というか監視)されるコロナ時代。ものすごく我慢する人も多い。でもやむにやまれず、旅に出る人もいる。人はいろんな事情を抱えて生きている。 美術館を居場所のように使う人たちはいろんなタイプがいると思うが、美術を介してそこで誰かに出会えるから通う、という人がけっこういる。高齢者比率が高い当館のボランティアの皆さんは、ほぼそうである。仲間に会えたり子どもに会えたりするから、通う。家族を失ったりして、ますます足しげく通