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初めてでもできる。小さなホテルのための写真撮影ディレクション講座

宿泊業界における写真の耐久年数

デザインアセットの耐久年数についてXで興味深い投稿がありました。これはスタートアップにおけるデザインアセット感覚値なので、宿泊業界だとさらに2倍ぐらい耐久年数が伸びるイメージです。(ロゴとかは大幅なリニューアルや経営者の世代交代ぐらいの時にしか変わらない印象)

ですが、こと写真においてはOTAでさまざまなホテルや旅館を見ても「この施設の写真もったいないな」と思うことがあります。私の前職のホテルでは主にInstagramの投稿用に約3〜4ヶ月ごとに撮影していたこともあって素材は豊富にあったのですが、小規模施設の全てがそのような環境でないことは理解しています。

やり方によっては大きな費用をかけずとも魅力的な写真を撮影していくことも可能です。九州にある某大型ホテルのマーケ担当の方に今までの経験の話をするとその会社の1.5ヶ月分ぐらいのInstagram外注費で年間4回、写真の枚数でいうと150〜200枚ぐらい撮影できますよと伝えて驚かれました。私も逆に大型ホテルのInstagram外注費にびっくりしました。

この記事のメインはSNS運用ではなく「写真撮影のディレクション」について書きたいと思います。費用うんぬんではなく、そもそもどのようにして写真素材を撮影するかが分からない小規模ホテルの現場スタッフや経営者の方が意外に多いのでは?と思ったからです。


撮影ディレクションの全体感

どこで写真撮影のディレクションを学んだかですが、私のファーストキャリアである広告制作会社で業務としておこなっていました。物撮りからロケまでさまざまな種類の撮影を経験することができましたが、基本的にディレクション方法は一緒です。

きっと、やり方はたくさんあるかと思いますが、私が学んだこと、そして宿泊施設の現場で行うことを前提にお伝えしたいと思います。まずはディレクションの全体像から。

この①〜⑥を順番に実施していきます。この手順であればできる気がしませんか!?詳細を説明します。

1.写真のテイストを決める

まずは、写真のテイストを決める必要があります。撮影のたびに写真の雰囲気が違うと「同じ施設のものと認識しずらい」「写真を組み合わせた時に違和感が生じる」など使いにくいものになりますので注意が必要です。

さまざまなホテル・旅館の事例を参考にしてみると写真にも複数の系統があることがわかるかと思います。

「写真の色味ははっきりしたいな」
「自然な雰囲気がいいな」

など施設やブランドにあった空気感を捉えましょう。私は普段から心がけていることで写真のイメージを要素分解することをしています。

例えば、Amanの写真を見た時に、「なぜ高級感があるのだろう?」とか「なぜこの写真が良いと感じたのだろう?」と心が動いた理由を深堀りします。その良いと思った理由を自分なりに言語化することで、フォトグラファーの方との打ち合わせでもどういう”絵”が欲しいのかを伝えることができます。

余談ですが、私が広告制作をしていた時のクライアントとのやりとりで今も記憶に残っていることがあります。当時、私のクライアントはマレーシアに会社があり、担当者の方はマレーシア人の女性でした。

「上質だけど日常的な雰囲気を写真で表現したい」というオーダーだったので、方向性を探るべく、雑誌「nice things.」のような写真を提案してみました。

ですが、担当の方は「なんだか暗い雰囲気なので明るい写真が良い」とのこと。写真の受け取り方は国によって、人によって全然違うのだと気付けた良い機会でした。

話が脱線しましたが、写真の方向性を決める上でさまざまな雑誌を参考にするのはおすすめです。大体、建物・人・物撮りと網羅されているのでこの後に依頼するフォトグラファーの方にも伝えやすいです。

2.撮影してくださるフォトグラファーを決める

フォトグラファーさん探しはとても重要なポイントです。相手の方はプロフェッショナルなのである程度、こちらの要望にも応じていただけますが得意な領域が人によってさまざまです。

良くないパターンが、知り合いがフォトグラファーなのでその人にお願いするということ。その方の撮影した写真は確認しましたが?どういった写真が得意か把握していますか?ちゃんと理解した上で依頼をするのは全く問題ありませんが、「プロのフォトグラファーだから依頼をする」だけだとお互いが不幸になります。

私が勤めている伊勢屋での撮影の場合は、運よく同じ町に私が希望するテイストの写真を撮ってくださる方がいたのでスムーズに決まりましたが、そうでない場合はInstagramやXでも探せます。根気強く相性の良いフォトグラファーさんを探しましょう。

3.撮影したいカットを決める

次に、撮影したいカットを決めます。私の場合は具体的なシチュエーションのカット8割、どこかの機会に使えそうなイメージカット2割を一回の撮影で撮ります。

参考として温泉の例を出すと、シチュエーションカットは具体的な写真の使用シーンが決まっているものです。上の左側の写真は客室にある温泉を伝えるために撮影したもの、逆に右側のイメージカットは撮影の時点では具体的な使用シーンを決めていません。

イメージカットは、無くても問題はありませんが、あればさまざまな場面で活用できるので一緒に撮影しておくことをおすすめしています。

シチュエーションカットに関して宿泊施設であればさまざまな要素が館内にあるはずです。これらをリストアップしてどのようなカットが必要か検討します。

・客室
・ロビー
・レストラン
・共有部分
・オリジナル商品など

もし季節ごとに撮影が可能であればシーズナルなカットもあればなお良いでしょう。

4.撮影イメージのすり合わせを行う

写真の方向性も決まり、撮影のカットも決まればフォトグラファーさんとイメージのすり合わせを行います。私は、前述のように雑誌やWebサイト、Pinterestでイメージに近いものを用意して打ち合わせに臨みます。

言葉だけだとどうしても認識の食い違いが生じるので、できるだけ同じものを見て、イメージを伝えます。集めてきた写真イメージの何が良いと思ったのかを言葉で補足することによって、フォトグラファーの方が逆に提案してくださるパターンもあります。

相手は専門家なので、こちらの目的や意図は伝えつつ、より良い提案をいただけるであれば柔軟に取り入れるのが良いでしょう。

5.撮影に立ち合い、現場でもイメージのすり合わせを行う

撮影当日は可能な限り現場に立ち合いましょう。私は香盤表 こうばんひょうと呼ばれるものを作成してそれを見ながらスケジュール通り撮影できているか、必要なカットは撮れているかを確認します。

香盤表に関してはこちらを参考にしてください。

依頼側もそうですが、初めて仕事をするフォトグラファーの方も緊張があったり、求めているイメージがなかなか掴めなかったりします。なので撮影の現場でも適宜、撮影内容の確認と方向性のすり合わせを行なってください。

2回目以降はお互いある程度共通の認識を持てているので、確認とすり合わせの作業が減っていきますが初回に関しては十分すぎるほどのコミュニケーションが必要だと考えています。

6.必要なカットを選ぶ

撮影後、フォトグラファーの方から撮影データが送られてきます。もともとイメージしていたカットで一番良いと思うものを選びます。

①〜⑤の過程で求める絵についてかなり具体的になっているかと思いますので選ぶのは難しくないはず。私はこの写真を選んでいる時間が一番好きです。「こんな風に自施設を切り取ることができるのか!」とか「イメージよりもっと良い出来だ!」みたいな感想を持ちながらニヤニヤ写真を選んでいます。

撮影データ送られてくる

写真を選ぶ

フォトグラファーさんが写真を調整する(色とか)

納品

という手順で、撮影の流れは一通り終えます。(お疲れ様でした!)

写真の参考にしたい宿泊施設のWebサイト

最後に私が個人的に好きだと思った写真の宿泊施設Webサイトをお伝えします。雰囲気に偏りがあるのでその点はご容赦ください・・・


あなたの施設らしい、魅力的な写真撮影ができますように!質問があればDMでも結構ですのでお気軽に連絡ください〜!

OPERATION REPORT[オペレーション レポート]は30室以内の小規模宿泊施設オーナーやそこで働くスタッフの方に向けて記事を書いています。運営に役立つ情報をオペレーターである私が学んだこと、実践していることを紹介しています。


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