動的確率的配送計画モデル

従来の配送計画は,静的・確定的なものだけがシステム化され,販売されてきた.近年では,情報通信の高度化(言葉を換えればモノのインターネット-IoT-化)が進み,運搬車の動的管理が容易になってきた.また,過去のデータ履歴の蓄積(言葉を換えればビッグデータ)により,将来の需要の確率推論が容易になってきた(当たるか当たらないかは別問題だが).

これらモダンな情報技術を用いることによって,配送計画システムを動的かつ確率的なものに進化させようと考えるのは,研究のネタに困った研究者でなくても,誰でも思いつく.実用化の可否は置いておいて,研究としては,膨大な研究がされており,実用までもう一歩のところまで来ていると考えられる.

動的に発生する顧客に対しては,顧客に運搬車が到着するまでの待ち時間を評価尺度にするものと,全体として運搬車の移動費用を最小化するものの2通りのモデルが考えられる.前者は-運搬車が1台と仮定した場合に限定してだが-動的巡回修理人問題(traveling repairman problem)とよばれ,後者は動的配送計画問題とよばれる.動的巡回修理人問題を複数の運搬車に拡張した研究は少なく,MITのBertsimasたちが待ち行列理論を用いた解析を昔していたくらいだろう.動的配送計画は山にように研究がある.以下では前者を考える.

動的な環境下で顧客の待ち時間を最小化するためには,顧客がいないときに,次に発生する顧客に対して素早く処理が可能なように,運搬車を適切な位置(通常は対象地域の中央)に移動させる必要がある.このようなrepositioningが問題を難しくする要因の1つであり,暇なときに中央に戻るか否かの判断を,将来の確率的な需要に基づいて決める必要がある.

複数の運搬車の場合には,単に対象地域の中央に戻るのではなく,他の運搬車の位置も考えて,なるべく空白の地域をつくらないようにrepositioningする必要がある.つまり,サッカーのディフェンスのように,ある選手が移動すると,他の選手がそれをカバーするように移動するのである.戦争のときも同じように,ある部隊が移動すると,その地点を確保するための他の部隊がカバーに入る.こういったのをちゃんと理論として定式化し,解析を行う必要があるのだが,動的配送計画の(膨大な)研究の中には,そのようなものはないようだ.

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