ヘリの運用について

災害発生時にはヘリが大活躍する.主な役割としては,以下のものがある.偵察(被災地とその規模の把握;主に警察ヘリ),人命救助,人員の搬送,救援物資輸送(自衛隊などのヘリ),病人の搬送(医療用ヘリ),消火(消防ヘリ),そして報道である.これらの活動には当然優先順位がある.人命救助は最優先であり,重病人の搬送は健常者の搬送や救援物資の輸送より優先する.さらに,火災発生や津波が来る可能性のある地点からの搬送は他の搬送より優先される.どの救援活動も重要であるが,最も優先されない活動が「報道」である.

ヘリは平地ならどこでも着陸でき,着陸できなければホイスト(吊り上げ)で救助できるので,大変便利である.また速度も新幹線並みで,大きいものだと一度に50人程度運ぶことができる.しかし弱点もある.ほとんどのヘリは夜間に飛べないし,天候が悪化すると飛べなくなる.したがって日中の限られた時間の中で,重要な活動から優先して処理を行うスケジューリングが重要になる.複数の異なる機関に属するヘリを効率的に運用するためのシステムは現在開発途中であるが,実用化も間近である(今回はおそらく間に合わなかったであろうが).また,飛行可能時間が短く,すぐに給油(これも車より大分時間がかかる)が必要になる点も弱点である.大規模災害時には日本中のヘリが一カ所に集まるので,給油施設がボトルネックになるのである.

その際,ボトルネックである給油施設では,優先順位をつけて給油すべきであり,したがって報道ヘリは最後に回されるべきである.もっと言うとなるべく重要な活動に迷惑をかけないように制限をつけ,もちろんテレビのチャンネルごとにヘリを飛ばすことは自粛すべきである.給油を自前で行い,待ち行列の最後に並べば良いという訳ではない.自衛隊のヘリが救援活動をしている真上から実況している報道用のヘリの映像がテレビで流れていたが,上方から乱気流を発生させているので,自衛隊のヘリの離陸が不安定になって,遅れを生じていた.また,土砂災害で救助のために生き埋めになった人に声をかけている現場の上でホバリングする報道ヘリの中から(得意げに!)実況している様子も流れていた.ヘリの音は半端ないので,生き埋めの人の助けを求める声など簡単にかき消されてしまう.報道に携わる人たちの中は,報道が崇高であり他の何よりも優先される活動であると勘違いしている者もいるが,災害現場では最下位の優先順位であることを認識し,このような迷惑行為は自粛すべきである.

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