集積所選択モデル

今度は鳥取で地震が発生したようだ.災害対策用の研究を急がねばならない.

支援物資のサプライ・チェインとしては,「被災地外の供給地点 =>被災地周辺の集積所 => 避難所」が望ましいことは以前示した.集積所の候補地点は,被災地周辺の宅配便センターであるが,そこから適切なものを選択する必要がある.これは被災地外で計算機を用いて最適化を行うことが望ましい.

被災地外の供給地点としては,各都道府県からの支援物資輸送を考えて多くても47の供給地点を考える.ある都道府県から出てくる物資は,みなその都道府県庁から出発すると近似する訳だ.

 被災地周辺の集積所は被災地周辺にあるヤマト,佐川,日通などの積み替えセンターで,その容量(1日あたりの可能なスループット量)を調べておく必要がある.中には24時間稼働でないものをあるらしいので注意を要する.熊本地震の際には,佐賀県に設置されたセンターが定時に閉まってしまい,支援物資を運んできたトラックが困ってしまったという報告も出ている.通常は24時間稼働だと思うのだが,非常時なので定時で閉めずに他のセンターから応援に行くなどの工夫が必要だ.ちなみにUPSでは,センターごとの作業の標準化を行っているため,災害時には他のセンターから応援部隊を派遣し,業務の継続を計っていることが報告されている(確かMITのSheffiの本だったか).

 避難所は被災地内にある避難所で,災害規模に応じて住民の何割程度が避難しているかを推定する.避難民の数は災害の発生時間帯によって変化する.確か国土交通省のデータベースに昼夜別(年齢別もあったかしら?)の人口があったと思うので,時間帯ごとに補間すれば良い.これによって必要な支援物資の需要を算定できる.もちろん,多少余裕をもたせて多めに推定しておく.また,避難所の位置と収容人数も同データベースに保管されている.ただし,一時的に避難するための公園なども入っているので,それらは除外する必要がある.

集積所から避難所までは巡回輸送を行うが,これは配送計画問題の漸近値解析というのを用いて往復費用で近似する.漸近値解析とは,避難所に向かう標準的なトラックの容量(避難所を平均何件くらい巡回するか)をQとしたとき,配送計画問題の最適値は「避難所への往復費用/Q」にalmost surely収束する(Haimovitch and Rinnooy Kan 1985)という定理だ.避難所を1日あたりの需要量の合計がQになるように集約しておけば,集積所から(集約した)避難所への往復費用で近似できるので,通常の3段階の施設配置問題に帰着される.実際には,市区町村で避難所を集約して1つの需要地点とし,その1日の需要の合計を輸送するのに容量Qのトラックが何台あれば良いかと計算し,その往復回数分だけの輸送費用を,その点への輸送費用とすれば良いだろう.

集積所はなるべく集約した方がリスク共同管理(risk poolling)効果が期待できるので,施設には適当な固定費用を付加しておく.サプライ・チェイン「被災地外の供給地点(47点程度) =>被災地周辺の集積所(容量制約) => (集約した)避難所(結構多い)」において集積所の選択を0-1変数とした混合整数最適化はそれほど難しくない.複数品目モデルも考えられるが,まあグロスで考えて問題ないだろう.問題なのは,避難所をちょうど1つの集積所に割り当てなければならないという制約を付加するかどうかであるが,分割可能と定式化しておいた方が無難だ.

これによって選択された集積所と避難所ならびに供給地点(都道府県)の集積所への割り当てにしたがい,オペレーショナルな処理を行う.具体的には,避難所の位置を書いたカードからその集積所が担当するものを抽出し,事前巡回路方策による配送に備える.これは避難所を市区町村別に集約してからどの集積所に割り当てるのかを決めた場合には簡単にできる.また,各都道府県には物資を輸送する集積所の位置を伝え,別の支援選択最適化モデルによって,都道府県からの支援の受け入れ可否と輸送タイミングを伝える.




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