トヨタの生産停止について

本のネタ探しで,熊本地震で被災したアイシン精機の影響でトヨタの工場が生産停止に追い込まれたという,昔のニュースのビデオをみていたところ,

https://www.youtube.com/watch?v=QT6CVsDoFX4

関連したビデオで,「日経プラス10 トヨタ工場 なぜ止まった?サプライチェーンの落とし穴」というのがあったので,視聴してみた.

https://www.youtube.com/watch?v=lsF8JAG6gHQ

内容は,二重ソーシング(dual sourcing)は費用が嵩むので進んでおらず,JIT生産で在庫もてないので困っているといったものであった.もちろんすべての部品を二重ソーシングにすることは現実的ではない.さらには,部品の部品のそのまた部品などを辿らないと,単に直系の(1st tireの)部品工場を二重化しても意味がない.重要なことは,生産停止の費用と二重ソーシングの費用のトレードオフを考慮したモデルを構築し,どの部品を二重化するのか,それとも多少の在庫を持たせるのか.それとも生産停止時に復旧を即座にできるような体制を整えておくのか,などを「事前に」検討しておくことである.

テレビでは,トヨタほどの日本を代表する企業でさえ,対処法が十分に整っていないとコメントしていたが,利益を出している企業が先進的な意思決定支援システムをもっている訳でないのだ.日本では,生産の工夫など現場レベルの(オペレーショナルな)改善で生産効率を上げ,それが国際競争力の源泉になってきたが,ストラテジックな意思決定は相変わらず昔のままの勘と経験(と政治)に基づく場合が多いのである.

海外の自動車メーカー(たとえばFord)では,途絶に対処するためのモデルを構築し,実践しているところもある.シャープのように日本独自の手法の優越性にひたっていると,やがて凋落して海外企業に買収されてしまうことを危惧する.

(追記)以前,(トヨタOBの大学教授からだったと記憶しているが)トヨタではすべての1-st tireの部品工場は二重ソーシングしていると聞いたことがあるが,ガセネタだったようだ.内部の人でさえ,自社のサプライ・チェインをちゃんと把握できていなかったようで,まずはサプライ・チェインのマッピングあたりから始めるのが良いのかもしれない.

(追記)そいえば昔のSCRMの事例でもアイシンの火事が取り上げられていたし,最近(2016年5月31日)でもアイシンの子会社の爆発事故でトヨタの9工場が停止していたらしい.お祓いでもした方が良いかもしれない(冗談です).



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