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英語学習法-あなたの英語力は何歳レベル?

年末の伊勢はバスツアーだったので時間たっぷり、多くの人といろんな話をして学びました。そのときに、英語学習の方法に聞かれたので、お返しもかねて私の考えをまとめてみます。一応、英語分野の大学教員なので、学習歴だけは長い。

まず、残念なお知らせです。語学は時間。これをやればすぐにという魔法はない。でも、やり方はある。やる順番と、続けるためのしくみを自分で工夫すればいい。

日本人の英語学習方法についての議論は色々ある。何年やってもしゃべれない、やっぱりネイティブ重視、いやいや四技能バランスよく……  いずれも正しい部分はあるが、絶対的な正解もない。なぜなら、時と場合によるからである。(これは構造構成主義でいうところの「方法の原理」=手段は目的と状況によって変化する)

しかし、それを言ってしまっては、教育計画が立てられない。ではどうするか? 重視するのは「時間軸の視点」。これに気付いたのは、ラボで児童英語教師をしていたときに田島信元先生(当時、東京外国語大学教授)の講演と著書『育つ力と育てる力』に出会ったからである。

田島先生は、英語学習を3つのフェーズに分けて考えることを提唱していた。①小学校までは聞く話す ②中高では読み書きをしっかり ③大学に入ったら読み書きをベースにしたディスカッションやディベート。

英語で考えるととたんに脳がフリーズするが、日本語にあてはめてみれば簡単だ。幼稚園までは文字を習わなくても、日本語ぺらぺらになる。聞く話すが不自由なくなった段階で小学校に入って、読み書きを習う。知っている言語、使える言語を文字化するだけだから習得が速い。1年の終わりには、幼い文章ではあっても日本語で作文が書けるようになる。といっても国語の時間だけで文章がうまくなるはずもなく、本や新聞をたくさん読む子は語彙も豊富で大人びた文章を書くようになる。中学に入るころには、日本語の4技能は申し分ないレベルに達するが、大学の専門書は読めない。たとえば、天文学の本を読むには、中高で習う数学や物理の基礎が前提である。語学プラスαの問題になるので、それぞれの専門のベースが必要となる。

では、英語に戻ろう。あなたの英語の実力は、日本語にあてはめると現在どれくらいですか? いつまでにどうなりたいかですか? 自分をよく観察して現状を受け入れ、それから実現可能な目標を定める。そして差分に必要な能力を割り出し、その能力を高めるために最適な手段を探す。

英語がまったくしゃべれないなら、幼稚園児の「日本語ぺらぺら」を目指そう。それには英語を聞く話す時間を増やす。このレベルなら、インターネット時代には色々な手段がある。ヒアリング教材やオンライン会話レッスン、ゲームアプリも。

日常会話には困らないけど仕事に使えないなら、中学校レベルの読み書きが必要ということ。会話学校を続けていても、次のレベルには進めない。とはいえ、いきなり専門書を読もうとすると、わからない単語だらけで全然進まなくて嫌になってしまう。だから、興味がある分野の易しいものから、どんどん読む。

私は大学の児童文学ゼミで、半期で1冊以上のペーパーバックを読ませる。自分の好きな本でいい。ハリポタの原作でも、ディズニー映画の元話でも、少しでも興味を持ったところから入る。分量も実力次第。英語力に自信がない子はロアルド・ダールの『チャーリーとチョコレート工場』、英語が得意な子は『ハンガーゲーム』三部作なんかに挑む。大事なのは成功体験。1冊読み切れば、次に手が伸びる。

英語は言語である。最初に学校で習うことが多いせいか、数学や物理と同じように科目だと思っているかもしれないが、日本語と同じ言語、つまり道具である。英語を学ぶのではなく、英語で学ぶ。だから英語修行には終わりがない。

昨年は、私自身も英語力アップの集中イヤーとした。11月末に学会の開催校を頼まれたのをチャンスと思い、自分にもチャレンジを課した。海外から招聘して英語パネルをやること。留学経験も、英語での司会の経験もないのに、ネイティブの白熱した議論を仕切れるのか? 不安はあったけど、学生にはっぱかけるだけでなく、私自身が挑戦して、背中で示すのが教育だと思ったから。

とはいえ、できれば恥はかきたくない。だから、それなりに努力はした。大学のネイティブ論文チェックだけでは足りず、バイリンガルの英語学習コーチを自腹でつけた。スポーツジムでも自転車こぎながらTED聞いたし、電車の中ではkindleで原書を読んだ。なんたって「語学は時間」自分が今できることを積み重ねるしかない。

英語パネルでは、国際的な児童文学研究の動向などのディスカッションをした。結果はどうあれ(自分的には不満も色々あるが)、友人に「かっこいい」と言ってもらえた。「海外で児童文学勉強したくなりました」という学生も出た。少しは憧れに貢献できたかなあ。

今日はまだ正月三日、新年の目標をたてる中に「今年こそ英語を」と誓っている人もいるだろう。「語学は時間」なので近道はない。しかし、自分なりに楽しく時間を積み重ねられる方法を探すもまた喜びだと思う。

昨年は自分のことだけで精一杯でしたが、今年はEMS英語部の活動も頑張りたいと思っています。英語部でお待ちしています。あ、部活はEMS限定なので、まずはEMSに入学してください。



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