会えない時代に求心力のある組織とは?
LINE青田さんからお誘いを受けて、2021年8月25日、以下の人事カンファレンスにパネリストとして登壇させていただいた。
テーマは「会えない時代に、それでも求心力を失わない組織とは?」
同じテーマで、カンファレンス参加前に、自分のメモ用にnoteを書いてみた。以下。
今回は、カンファレンスに参加した後の感想、気づきのメモ。
モデレーターの青田さん(LINE)、パネリストの武田さん(カルビー)、丸吉さん(日本ピープルアナリスト協会)との対話はとても興味深く、一緒にお話ししながら自分が一番楽しく学んだ時間だった。
【テーマ】コロナ対策をきっかけとして、リモートワークが進⾏・浸透。
オフィス回帰の動きもあるものの、全員出社が当たり前の時代には戻らない。リモート環境下におけるマネジメントの難しさ・エンゲージメントへの影響。転職活動がしやすくなったことで、リテンションにも⼤きな課題。
「会えない時代の求⼼⼒」が今まさに求められている。
【キーワード】リテンション、新しい働き⽅、求⼼⼒、 ヘルスケア、⽣産性、コミュニケーション、家族、パーパス、onboarding、 評価、エンゲージメント、IT活⽤、⼀体感、オフィスの役割
■青田さん(LINE)のお話
冒頭、青田さんから興味深いデータの提示があった。(情報源:厚⽣労働省「これからのテレワークでの働き⽅に関する検討会」(第4回)テレワークの労務管理等に関する実態調査)
・新型コロナウルス拡大前の在宅勤務導入企業は26%、後では約90%まで上昇
・販売職・サービス職・生産現場職以外の職種では、在宅勤務ができる環境になっている
・在宅勤務での課題Topは、1)できる業務がかぎられている、2)コミュニケーションがとりづらい、3)電子化されていない書類の対応、
・在宅勤務時の社員の健康確保措置には未着手の企業がほとんど、一部の企業は「コミュニケーションを補う工夫をしている」と回答
LINEの事例で興味深かったのは
1)新型コロナウイルス以前はチームビルディングの食事代を会社が負担していたが、新型コロナウイルス以降は対面で集まれないのでチームオンライン食事会用のセット(nonpi、など)を会社としてサポートしている
2)オンラインコミュニケーションでの鍵は、どれだけ自己開示できるか。自己開示するための仕掛けとして「自分のトリセツワークショップ」というものがあり、これが好評だという。
《気づき》
新型コロナウイルス以降は、「在宅勤務ができる仕事の作り方、環境を作っているか」は「求心力のある組織」である以前に「その環境がないと採用力・求心力を失ってしまう組織」になっている、と感じた。在宅勤務でもストレスなくオフィスと同じように仕事ができる環境に加えて、コミュニケーションの内容に工夫している会社が「求心力のある組織」となっている。
■武田さん(カルビー)のお話
カルビーでは、もともとの企業風土・文化(変化を楽しむ、変化に強い)と、社員の声を聴く仕組みが、新型コロナウイルス禍で社員や組織をさらに強くした、とのこと。社員の声を聴く仕組みを作り、社員の声を会社全体で対応する課題と個別課題に分け、全社で対応する課題はその過程も社員に共有しながら一緒に解決案を作っていった。こういう取り組みが、私たちに気も記憶に新しい斬新な取り組み(Calbee New Workstyle 、単身赴任制度見直し) につながっている、という。
《気づき》
すごいことをさらりと言う武田さんのリーダーとしての信念と行動力を改めて間近で感じた。武田さんのお話で何がすごいかというと「原点が社員の声を聴くところからスタートしている」ということ。人事制度を作るときに、ともすると世の中の流れや他社事例を参考にすることがある。参考にすることは良いが自社員の声を聴き、課題を共有し、制度を作る過程から社員を巻き込むことが、「社員の自主性を引き出し、求心力があり、強い組織」になる。
■有吉さん(日本ピープルアナリスト協会)のお話
有吉さんは、アカデミックな観点から本当に興味深いデータと事例を教えてくれた。
・1970年代から「イノベーション・創造性には、半径6メートル以内に物理的にいる『弱いつながり』が効果的」と言われている。
・データ的には、オフィスのフリーアドレスはイノベーション・創造性は作りづらいこともある。それはフリーアドレスだと自分だけに集中してしまい『弱いつながり』を作らないことがあるから(もちろん、意識して隣の人と話したりするのは別)
・新型コロナウイルス禍では、物理的に半径6メートル以内にいる環境を作ることできない。だからこそ『弱いつながり』を意識的におぜん立てして作る必要がある。
・今の在宅勤務中心で求心力のある組織になるための重要な要素は、「一人ひとりの親切・感謝の行動を認め、インセンティブになる仕掛けをつくる」こと。
《気づき》「一人ひとりの親切・感謝の行動を認め、インセンティブになる仕掛けをつくる」という点、これは求心力のある組織を作る上で、ポジティブ心理学の観点からも非常に有効である。
ノースカロライナ大学のバーバラ・フレドリクソン教授の研究によると、「ポジティブ感情とネガティブ感情には黄金比があり、3:1以上の割合であると自己成長につながり幸福感が高まる」と検証されている。
人事として、制度や組織のハード面を作ることも大切だが、それ以上に、その会社独自の企業風土・文化を作るために、「一人ひとりの親切・感謝の行動を認め、インセンティブになる仕掛けをつくる」ことがとても大切だと感じた。
人事はよく「前例主義」と言われる。もちろん、人事制度の歴史、本質的な目的、を忘れてはいけない。でも、前例とは過去誰かがチャレンジして作ったもの。自分達もいつか「前例」と言われるような、新しいことをチャレンジしつづける志事をしていこう、と、カンファレンスを振り返りながら思った。
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