息子が傷ついたとき、そばにいるのに何もしてあげられなかった今日のこと
土曜日。
「かっこよくしてください!」
おにいさんに自分で言うんだと、何度も練習した言葉を胸に
息子はパパと美容院に向かった。
前回の美容院は4月。
そのときは、くすぐったいのと眠いのとであまり切らせてもらえなかった。
だから今回は半年分くらいの量をばっさり切った。
息子は最近4歳に。
天使の輪っかが光るさらさらストレートから、
赤ちゃん期以来の一番短い髪型になり、
寝顔はすっかり男の子だった。
息子も満足げに
「かっこいいでしょー」
って笑ってた。
日曜日。
息子と入ったお風呂での会話。
「明日保育園行ったら、みんなびっくりするんじゃなーい?
こんなに変わったから、きっと先生もお友達も髪切ったことに気づいてくれるねぇ」
「どんな反応するかなぁ?」
照れながらも嬉しそうだった。
月曜日。
朝、保育園の駐輪場に着くと、息子は少しそわそわした様子だった。
この日は、年少〜年長クラスまで同じ教室で遊んでいた。
担任の先生は遅番で不在。
同じクラスの子たちもいろんな教室で遊んでいたので、
いつもみたいに教室に入った瞬間みんなが駆け寄ってくることはなかった。
少しすると、同じクラスの子が一人近づいてきた。
登園するといつも息子のところに来てくれて、ちょっかいを出したり恐竜の真似してみたりする、「THE男の子」って感じの元気な子だ。
その子は近づくなりこう言った。
「かっこわるーい」
「かっこわるい かっこわるい かっこわるーい」
悪気はないと思う。
だってまだ4歳だし。
だけど息子の顔はとても悲しそうだった。
昨日、みんなの反応を楽しみにしていた息子の表情を知っていたから、
私も心がぎゅっとなった。
思ってたのと違ったよね。
ショックだったね。
いつも笑顔でタッチしてバイバイするところを、
今日はちょっと離れたくなさそうな感じがした。
最後に顔は見せなかったけど、左足に寄りかかる重さでどんな顔してるかはわかってた。
私はあそこでなんて言えばよかったんだろう。
他人の子にはなかなか言えない。
「そんなことないよ〜かっこいいじゃーん」
と言っても、
その子は
「えーかっこわるいよー」
って言うだろう。
今までそんな会話を見ていたから
勝手に想像して何か言うのはやめた。
息子の涙をさそう、最後の一撃の言葉を放たれないように。
でも、あのとき私からの言葉を待ってたかな。
もしこれが私の話で、付き合ってる彼が横にいるのに何も言ってくれなかったら
「なんで何も言ってくれないんだろう」
きっとそう思ったはず。
ごめん。
息子より30年も長く生きてるのに
私はまだまだだ。
自転車を走らせながら後悔の気持ちが押し寄せてきた。
教室から離れたところで息子と二人になって
大丈夫だよ、かっこいいよって
伝えたらよかったのかな。
帰ったら息子を抱きしめよう。
あのとき何もしなかったことを謝ろう。
そしてたくさん、かっこいいよ、素敵だよって伝えよう。
今日も大好きだよって、くるしいくらい抱きしめて
「もういいよー」って言われるまで伝えるんだから。
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