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「こんにちは、三木美術館です」vol.2 姫路城を臨む美術館からまちの魅力を発信

日本ではじめて世界文化遺産に登録された国宝・姫路城の南に位置する三木美術館。陶芸や日本画、洋画など日本の近代美術作品を展示しているこの美術館は、姫路城の姿を一望できるスポットとしても注目を集めています。
姫路の文化にまつわるインタビュー企画の第一弾は、三木美術館を運営する美樹工業株式会社の岡田社長。現在は姫路ふるさと大使(姫路観光大使)も努められています。美術館の成り立ちや込められた思いをうかがいました。

「まちの役に立つ存在に」 創業者の思いが込められた美術館

―三木美術館とはどんな美術館なのでしょうか。
美樹工業株式会社の創業者で前会長の故・三木茂克氏が50年以上にわたって収集したコレクションを中心に展示する美術館として、2008年(平成20)に開館しました。コレクションは日本の近代美術を対象とし、陶芸、日本画、洋画作品を中心に構成されており、その数はおよそ1000点。三木会長はかねがね、美術品は大切な文化財であり、美術館を建設してこれらの美術品を広く公開することによって、播磨の地域文化の向上に貢献したいと話していました。そうした三木会長の遺志を引き継ぎ、姫路のシンボルでもある姫路城を望むこの場所で貴重な美術品の公開や展覧会の企画を行なっています。

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事業でも社会奉仕活動でも、地域に貢献できる存在に

―姫路駅と姫路城の中間に位置するというロケーションも魅力ですよね。
立地にもこだわっていた三木会長が「播磨の文化向上にふさわしい場所を」と選んだのが姫路城を正面に臨むこの土地です。

1962年(昭和37)年に創業し、今年で60年を迎える美樹工業は、京阪神を中心にマンション、福祉施設、工場などの建築や道路、ガス、水道といったインフラ工事などを行なう地域密着型のゼネコンです。会長は常々、こんなことを言っていました。
「地域に貢献できる会社でないと、存在意義はない」
 ゼネコンという業種柄、建築工事などでは、周辺住民の方々に騒音や通行規制など何らかのご迷惑をかけることもしばしば。ですから私たちの仕事は、住民の方々のご理解とご協力をいただいて初めて成り立つものです。

今はCSRなどとも言いますが、そのような言葉が普及する以前から美樹工業はいろいろなことに取り組んできました。会長は姫路の街を美しくするという外郭団体(姫路のまちを美しくする運動協議会)に入って、観光都市姫路の価値を上げることに努力を惜しみませんでしたね。今でも全社をあげて毎月まちの清掃活動を行なっていますし、子供たちへの美化教育運動にも毎年寄付を続けてきています。
 そして地域の役に立つことを信条とする会長が取り組んだのは、世に残すべき芸術品を収集し、それを姫路城のお膝元と言える場所で地域の皆さんにゆっくりと見てもらおうということだったのです。ですから単なる美術館ではなく、地域貢献のかたちとして三木美術館はあるのです。

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”ひとつではない姫路の魅力”を知っていただきたい 〜岡田社長〜

―岡田社長は高知県出身だとか。外部からいらっしゃった人にとって姫路の印象はいかがですか?
姫路は格式ある城下町というイメージがとても強いですね。山の手は人々の気質もゆったり。一方、海側は威勢のよさを感じます。同じ姫路でも雰囲気ががらりと変わるのも印象的でした。

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それと、10月はあちらこちらでお祭りがあるのも楽しいところ。“灘のけんかまつり”として知られる白浜・松原八幡神社の秋季例大祭をはじめて見たときは、その勇壮さと迫力に驚きました。毎年、10月14、15日に行われ、その日は近隣の小学校は休みになるとか。子どもたちが休みなら大人も仕事なんてしてられませんよね。弊社でも有休をとる社員がいるくらい。それほど、地域の伝統的な祭りや行事を大切にしている地域なのだと感心しました。郷土愛が根付いているまち。それが姫路のいちばんの特徴であり、魅力のように感じます。私は今、姫路ふるさと大使を務めておりますので、個人的にもこうした姫路の魅力を発信していきたいです。

微力ながら姫路城とともに姫路という土地の素晴らしさをお伝えしたい

―今後、三木美術館がどんな存在になればよいと考えていらっしゃいますか?
 歴史があり、地元の皆さんにとって自慢のまちにふさわしい場所、「あってよかった」と思われる場所になれたら嬉しいですね。姫路城観光のメインと言えば日本で初の世界文化遺産となった姫路城。シラサギが羽を広げたような優美な姿から「白鷺城(しらさぎじょう)」の愛称で地元の方々に親しまれているまちのシンボルです。姫路駅から徒歩7分という場所にある三木美術館の屋上からはその姿を天守閣とほぼ同じ高さで望むことができます。姫路城が桜の淡いピンクに包まれる春先や紅葉が見事な秋は、その美しさが際立ちます。姫路城を眺めつつ、三木会長が後世に残したいという思いで収集した日本の技と美が宿る芸術品を眺めながら、有意義な時間を過ごしていただければ幸いです。
                            [文・堀朋子]


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