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木々を繁らせて女は進む。
どこにでも木を植えるので
女はよく捕えられる。
それでもかまわず本日も道の真ん中に木を植える。
「私の使命だから。」
求められたところへは木を植えず、
女は思うさま木を植える。
捕えられては木を植える。
女はだれのものでもない土地に
森すらつくった。
女は森をつくりたかった訳ではなく、木を植えたかっただけなので、
相変わらず道や畑にも木を植えた。
「多様性の時代だから、許されると思った。
つかまりたかった。」
捕えられた女はこう言った。
地主はどっしりと、真ん中に生えた木を見て途方に暮れ続けた。
風が吹き、木がそよぐ。
千年後、木はまだ 立ち続け、
森には人が集まるようになった。
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