ミニマム読書日記 2021-12~2022.1

こんにちは。室蘭市中央町大町商店会の雑貨と古本の店「ミニマム」店主です。ミニマムなのは店主のやる気です(0ではない)。
私、いろんな肩書がありますが、古本屋店主として読書日記をつけとこうと突然思いました。古本屋ミニマムの読書日記という意味なので、文章量は決してミニマムではないところは、ご容赦くださいませ。

前置き


さて古本屋を標榜して良かったなぁと思うのは、自分の興味では買わないけど「お前はこれを読め!」という御宣託のような本が持ち込まれること。
世界史・日本史をやりたくない一心で理系に進んだ私ですが、地域の歴史の発信とかに関わってしまって、ここ何年かは室蘭や北海道の歴史に関係する本を読む機会が多く…人生のつじつまを、いま合わせている感じがします。みなさんも、急につじつま合わせをしなくてすむように、普段から歴史もやっておいたほうがいいですよ。

北海道の歴史を語る上ではアイヌ民族についての理解が必要ですが、20年も室蘭に住んでいるのにあんまり関心を持っていなかったのです。実はまだ車で1時間弱の白老町にある「ウポポイ(民族共生象徴空間)」にも行ってない。しかしウポポイができたときに、さすがにそろそろ押さえておこう、と思って。
「ゴールデンカムイ」を購入しました。
興味の入り口として、マンガもありかなと…。
2022年1月現在、28巻まで買い物語も終盤なので、最後まで読みたい(そのエピソード必要?と思う冗長だったり戦ったり下ネタだったりする部分は、まぁ青年誌にありがちですが…)
ちなみに雑貨と古本の店ミニマムは、インスタントドリンクを用意してシェアスペースでマンガも読めます(1時間200円)ので、店内でお読みいただけます(マンガは非売品です)。
あんまり開店してない、そして今諸事情により狭いですけども。

そんな感じで個人的に興味を耕したので、地域のアイヌ関連書籍もこの機会に読もうと、おそらく2年くらい前にいただいた本に手を出しました。

萱野茂「アイヌの碑」朝日文庫(1990)

アイヌ民族初の国会議員・萱野茂氏が自身の半生を振り返り、アイヌ文化への思いをつづっている。少年のころ、戦時中に室蘭の八丁平飛行場の造営に関わった話など、この地に住んでいると身近に感じる話題も多い。
自身を育てた文化や考え方、先人への尊敬の思い、受け継がれてきたものを守りたいという思いは、民族を超えて共感できる。
(と思うんですが、文化や先人への尊敬みたいなのが個人的に室蘭ではあんまり感じられなくて、共感してもらえなかったりして…邪推かしら。この点は後日きちんと考えたい)

小坂 博宣 「知里真志保~アイヌの言霊に導かれて~」クルーズ(2010)

アイヌ神謡集を遺した知里幸恵の弟・知里真志保。登別で生まれ育ち、天才言語学者として足跡を残した彼の一生について、知里真志保を語る会「知里真志保生誕100年記念フォーラム」開催を機にまとめられたもの。旭川の祖母の家に長く暮らした幸恵ほどはアイヌ語が母語ではなかった真志保は、だからこそ「言語学者」としてアイヌ語に真摯に向き合ったのだなぁと思う。
ちなみにこの本を出版した札幌の会社・クルーズは、アイヌ文化に関する本やグッズを多数販売していて、思わずいろいろ買いそうになりました…。

山田秀三「アイヌ語地名を歩く」北海道新聞社(1986)

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山田秀三氏は登別市に工場がある「北海道曹達」の社長を長く務めた。アイヌ語地名研究者としても有名。新聞連載コラムなので読みやすく、東北・北海道のアイヌ語由来の地名について学べるほか、山田氏の筆が描く知里真志保、金田一京助、萱野茂などの姿は生き生きとして親しみがわく。

山田氏の本はきらんのブックパークで借りました。最近は、新しくなった室蘭市立図書館が超居心地よくて足を運びます、本を買わないで済むし(古本屋としてはマズイけどもw)。「西いぶり広域図書館」の蔵書検索をみると、アイヌ関連書籍は登別図書館が充実しています。登別図書館って、以前から居心地いいし好きです。近かったら通うんだけどな~。

アイヌ関連と並行して読んでいたのが2冊。

新井和宏・高橋博之「共感資本社会を生きる」ダイヤモンド社(2019)

著者の新井和宏氏は鎌倉投信の創業者で、共感資本社会の形成をめざし株式会社eumoを設立。「使えば使うほど関係性が生まれ、幸せになる電子マネーeumo」を提供しています。
また、もう一人の著者、高橋博之氏は株式会社ポケットマルシェの代表取締役。「共助の社会を実現する」というビジョンを掲げ、生産者と消費者をつないでいます。
内容は「多様性、個性を大切に」「関係性を大事に」するために新しいお金や買い物の仕組みをつくっている2氏の考えや活動の紹介。高橋氏は「関係人口」の提唱者だそうです(知らずに使ってました)
「共感」「関係性」などの考え方や内容については、私もいろいろなことをやってきた中で、もやっと感じていたことを言語化してくれていて、そうだなぁ、そういう考えっていいなぁ、と思えるものでした。

「他人事でいられるのは、知らないから、そしてつながっていないから」

(自分と他人の)「間にフォーカスすれば、基本的には対立構造っていうものは生まれない」

「自分にフォーカスしはじめると、人間って幸せになりにくい。だって、完璧な人間なんていないから」

共感資本社会を生きる

斎藤幸平「人新世の資本論」集英社(2020)

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ベストセラーなので手に取った方も多いのでは…
「資本論」後のマルクスの思想を詳しく解説していて、前半は学術的論証みたいでちょっととっつきにくかった。
囲い込まれた「コモン」の商品化、など資本論の内容的エッセンスは「100分de名著」のテキストを読んだ方が分かりやすいが、新書終盤の提言は読みごたえがあった。前半で面倒くさくなった人、後半だけ読むのがいいと思います。SDGsは大衆のアヘンだ、とか書いてあるけども、そりゃ思想家から見たらそうかもしれないけれども実務家としてはまずSDGsから興味持ってもらう、でいいと思ったよ。
まぁなんか大人として、もうちょっと頑張らないといかんとは思いました。

どちらも、詳しい書評はアマゾンにもたくさんありますし、非売品にして古本屋に置いておきます(売る気なしw)ので都合の合うときに読みに来てください。
アイヌ関連書籍と同時期に読んだことで、自分的には深読みできた気がします。
雑貨と古本の店ミニマムはみんなの「コモン」を目指したい…とか言うと、「ちゃんと稼げよ」と怒る人がいる(家族でもないのに心配していただいてありがたい)ので稼ぐように頑張りますけれども、農村出身者としては体感的に分かる気がする2冊でした。いい面も嫌だった面もあるけれども、私は田舎で育って良かったな。

さていろいろ書きすぎたので終わります。
2月は縄文の貝塚の調査報告書やパンフレットなどを読んでいるので、あんまり「読書日記」として書くことがないですが、読書日記なのか店主雑感なのか良く分からない感じで気が向いたら書いてみたいと思います。

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