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123天文台通りの下町翁 雑記帳~坂上忍 監督 刑務所三部作@ポレポレ東中野~

2月の座高円寺ドキュメンタリーで見て印象強かった「プリズンサークル」を含めた坂上忍監督の特集を頻繁に出かけるポレポレ東中野でかけるというので見に出かけた。アメリカの無期囚を撮った「ライファーズ」、同じくアメリカで演劇の演者になることで魂に向き合う女性囚に密着した「トークバック」、どの作品も、よくぞここまでに内部を取材し、撮影できたものだと驚嘆する。よほど時間をかけて人間関係を作り、意志疎通を図って信頼関係を元にしていないと作り出せない内容だ。日米の差異はあれど、子供は家庭や、育つ社会環境を選んで生まれ、育つことはできないわけだから、罪を犯した人の大半の場合、壮絶な日々を送る中で、悲惨な顛末に至るのは無理からぬものがあると思えてくる。

民間からのアドバイザーの力を借りながら、犯罪行為に至るまでを、徹底的に、自分自身や同じ服役中の仲間との問答、話し合いを通して考え抜き、気付きを得るTC (Therapeutic  Community、治療共同体)という手法を軸に、島根あさひ社会復帰促進センターでの4人の服役青年と周囲の人々に粘り強く取材、撮影した「プリズン・サークル」は必見だと思う。刑法犯は戦後の混沌期の1949年に全国でおおよそ10万人だったピークから減少していき、2006年に一旦は山が上昇して約7万人となるも、一貫して減少は続き2019年末では5万人を切っている。衝撃的な報道を見ると、まるで犯罪が増えている錯覚に陥るが、現実はそうではない。

良く考えてみると、あまりに、本音を明かしても受け止められ、自分の声や存在に耳を傾けてもらえる居場所が世間にはないことに気づかされる。TCを受けられるのは、面接や評価を経て、わずか40名ほどに限られるということで、再犯率が下がるという効果も考えれば、刑務施設はもとより、社会、世間に追い込まれている存在に耳を傾ける場が必須だろう、そんなことが見える坂上作品の一本、一本だ。


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