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Day29―好きになるかどうかは脳活動で予言できる

修論と学会準備でかなりの間更新できていませんでした。今日から再開していきます!
社会心理学×神経科学系の論文です。

https://doi.org/10.1073/pnas.1802176115

最初の印象から、将来的に親しくなるかどうかを予測する研究。fMRIで脳活動を見ると、半分くらいわかるらしい。

背景

まず断っておきたいのは、この研究における「好き」とは、「親しい」とは何かということである。
この論文は社会心理学であり、このような曖昧な表現を避けている。無論タイトルは「future liking」であり、「好き」という言葉に概ね一致してはいる。しかし、厳密に社会心理学、あるいは心理学によって規定された概念であり、読み解く鍵となるキーワードは「報酬系」である。
「報酬系」とは古典的条件づけを基礎に出来た概念だが、様々な研究により「報酬系」と社会的・非社会的刺激に対する評価は概ね相関しているらしい。これを前提として研究を組んでいる。
ちなみに脳活動は、副内側前頭前野と線条体の活性度を見ている。これらは報酬系とも、社会的評価とも関係が深いとされている。

さらにこの研究では、二者間の「好き/嫌い」を分析するにあたり高度な統計処理を行っている。二者間の分析には構造方程式モデリング(SEM)に基づくActor-Partner Interdependence Model (APIM) を使用している。何やら難しいことをしているが、簡単に言うと二者間のパラメータそれぞれの相関を見ている。説明は以下のブログがとてもわかりやすかった。

実験

9週間のリサーチプログラムに参加する大学生16人に協力してもらった。
プログラムの開始前に、他の参加者の写真をそれぞれ1分ずつ眺めてもらった。その間fMRIを計測した。また、それぞれの参加者の印象を評価してもらった。
プログラムの終了時にも同様の手続きを踏んだ。
結果、プログラム前の二者間の脳活動に連関は見られなかったが、プログラム前の脳活動から将来的に仲良くなるかどうかをある程度予測できた。また、プログラム後の脳活動で二者は密接に連関していた。

所感

有名な実験で、その講義が面白いかつまらないかは、最初の1秒(かそれに満たない時間)教授の顔を見ただけでわかるというのがある。
今回の実験はそれの発展版ともいえ、神経科学系論文の中でもこの論文の新規性はそれを実環境に近い状況(リサーチプログラムの参加)で示した点にある。ちなみにアメリカの保険は約8週間であり、この知見を精神疾患の治療なんかにも応用できそう。
既にあるかもしれないが、日本での類似研究も待ちたい。

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