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コラボ作品:終わりの始まり

 君の黒髪が風になびく。この荒廃した世界にいてもなお、まだ美しいものは存在していたのだ、と驚きにも似た気持ちで君の横顔を眺める。白い頬が埃っぽい。もはや、ガスマスクも意味はない。地球は今、終わろうとしている。

 世界政府が、地球の中心に過去類を見ない大きさのマグマ渦を見つけたのは今からちょうど一年前だった。世界中の科学者や研究者たちが調べてわかったことは「地球はあと一年で爆発する」ということだけだった。なすすべはなかった。しょせん、人間にできることなどないのだ。この一年のうちに、海水は蒸発し、植物は枯れ果てた。パニックを起こした人間たちはお互いに殺し合い、今残されているのは、その混乱を生き残ったほんの数人だった。

 今、僕は君の手を握って、地球最後の時を迎える。
「ねぇ」
 君が言う。
「なに?」
「また来世で会えるかしら」
 君が僕を見る。
「私は、来世でまたあなたに会えるのを、楽しみにしているね」
 僕は何も言えずにいた。君は怖くないのだろうか。地球があと少しで爆発してしまうことを。僕は恐怖をさとられまいと、平気な顔をよそおう。君が僕の手を強く握る。

 地球の爆発まで、あと一分。

文章、タイトル:秋谷りんこ
絵:三毛猫かずら

秋谷りんこと三毛猫かずらで、コラボして作品を作るチャレンジを始めました。秋谷が書いた文章を読んで三毛猫かずらが絵を描く。三毛猫かずらが描いた絵を見て秋谷が文章を書く。それを交互に行ってコラボ作品を作っていこうかと思います。相談なしに、受け取ったもののインスピレーションからそれぞれ好きに描く(書く)ので、完成までお互いどんな作品になるかわかりません。その結果できあがった作品を楽しんでいただければと思います。今回は、先に秋谷が文章を書き、それを読んで三毛猫かずらが絵を描きました。

【作品作成後の対談】

秋谷りんこ(以下り):まずは、作品作成おつかれさまでした!

三毛猫かずら(以下か):こちらこそ、おつかれさまでした~!こうやって作品について話すの初めてですね。

り:そうですね。楽しいですね。いつも、二人では話していますけど、こういう公の場に書くことはないですね。

か:私なんて、自分の言葉で話すことじたい初めてですし(笑)いつもりんこさんに管理してもらって、コメントまで代わりに答えてもらっているので、ありがとうございます。みなさん、はじめまして、三毛猫かずらです!(笑)コメントやスキ、拝見してます!ありがとうございます!

り:あはは。私の一人二役じゃないよ、と(笑)

か:違います(笑)実在してます~!

り:実在してます(笑)ではでは、今回、初めての試みでしたが、まずやってみてどうでした?

か:おもしろかったですね。何回も何回も読んで、パッとくるイメージがあって、ラフで描いて、どういう世界なんだろう、とかすごく考えました。

り:最初、あのMVみたいなイメージって言ってましたよね。

か:The Weekendの曲ですね。そうそう。

り:このイメージって言っていたので、私は、荒廃した世界をもっと強調して描くのかな、なんて想像していました。今回の絵を見た印象は、「切ないけど力強い」って感じでした。

か:そうですね。けど、すごく大変な場面で、爆発が起こりそうで、荒廃した壮絶な瞬間なんだけれど、そういうときって逆に「また次の世界でも会おうね」って話をするんじゃないかなって思ったんですよね。

り:究極になったらね。

か:そうそう。究極の状況に陥ったら、「また会おうね」って話になるんじゃないかな、と思って、それで「荒廃」よりも「また会おう」を描いた気がします。それと、その相手が猫の可能性もあるじゃないですか。人間とは限らない。私は、小説の「僕」を「猫」として描きました。「僕=猫」で表現したかったので、猫には涙が出ているんです。りんこさんは、どういう感じでこのお話を書いたんですか?

り:コラボチャレンジしてみよう、って話をかずらさんとした日に、あまり深く考えずに、バーっと書きました。500文字以内くらいで、絵と一緒になってひとつの作品になるようにするってなると、小説としての「オチ」みたいなものはないほうが絵にゆだねられるかな、とか思いながら。

か:本が降ってきた、みたいな?

り:いや、そんなことじゃないんですけど(笑)もともと個人的に、ちょっと未来の不思議な話が好きで、ハードじゃない、ちょっとSFっぽい雰囲気は大好きなんですよ。

か:私も好きです。

り:それで、その好きな雰囲気で、500文字以内で、絵にゆだねられるような世界ってどういうものかな、と思って、こんな感じになりましたね。普段、小説の「あとがき」って書かないから、どうしてこういうお話書いたの?っていう質問じたい新鮮です(笑)

か:書き終えた小説の話、聞きたいですよ。

り:そうですかね(笑)絵はモノクロですけど、モノクロにしたのは、あえて、ですか?

か:あえて、です。実際その場にいたら、色なんて気にならないんじゃないかと思って。爆発して地球が終わるって状況なのに、色なんて感じないんじゃないかと思って、あえてデッサンにしました。

り:私は、絵を受け取ったときに、モノクロ!っていうところにちょっと驚いたというか、良い意味で裏切られたな、と思いましたね。

か:けど、えんぴつって色が見えますよね。

り:ん……んー??(笑)

か:えんぴつの絵を見ても、花の色とか見えるじゃないですか。

り:想像するってことですか?

か:想像するっていうか……色が見えるように描いてるというか。静物画でもデッサンって色が見えるんです。

り:(?)

か:昔の白黒写真を想像してもらえるといいですけど、白黒写真って、白黒だけどなんとなく色が見えてるじゃないですか。

り:ああ。それはちょっとわかります。その感覚なんですね。

か:そうそう。

り:先入観によって見える色が変わると思うんですけど、それは人によって見える色が違っていいってことですか?

か:もちろんそうです。人によって違う色に見えるから、あえて色を塗らなかったんです。

り:私は、「荒廃した世界を背景にして、真ん中に握りあう手だけ」みたいな絵がくるかな、なんて勝手に想像してました。

か:ああ、それだとポスターにしたらすごくいいですね。

り:ポスターと絵の違いがわかりません(笑)

か:例えば、この文章が何かの映画の冒頭みたいな感じで、その作品のポスターにするなら今りんこさんが言った作品はばっちりだと思うんですけど、今回は絵と小説をあわせて一つの作品にする、ということなので、こういう絵になりました。

り:描きにくさはなかったです?

か:全然なかったですね。好きなお話だったので、描きやすかったです。ちなみに、今回は4Bと2B、B、Fのえんぴつしか使ってません。

り:しか?使っていないほうなんですね。

か:これからも楽しみですね。

り:次はかずらさんが先に絵を描く順番なので、もう好きに描いてください。どんなんでもいいです(笑)

か:じゃあ、好きに描きます(笑)

り:楽しみにしています!


文字起こし:秋谷りんこ
秋谷りんこ↓


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