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サルラ・カネダ02/サンテミリオン村歩き#39

ホテルを出てフェヌロン通りを右へ歩いた。少し行くとリベルデ通りにぶつかる。4つ角がカフェで囲まれた通りだ。
「ここでランチできるわね」と嫁さんが言った。
「この先にVidal Foie Grasの本店がある。パリでよく見かける瓶詰めフォアグラのメーカーだ」
「あらま。寄ってみたいわ」
Vidal Foie Gras(1 Pl. de la Liberté, 24200 Sarlat-la-Canéda)
https://www.vidal-foie-gras.com/
店は思ったより大きかった。商品幅もいつも見ているモノばかりではなく各種に渡っていた。フォアグラを詰めた鴨首や脚、トリュフのソースが面白かった。

店をでてリベルト通りを進むと聖サセルドス大聖堂Cathédrale Saint-Sacerdos(Pl. du Peyrou, 24200 Sarlat-la-Canéda)へぶつかる。

「この修道院は誰が建立したかについては、いくつか説がある。ルイ敬虔王の息子ピピンが作ったという説もある。しかし実際にはもう少し後だろうとぼくは思うな。ベネディクト会派はガリアの地に浸透してからのことのように思う。一番考えられるのはノルマン人の侵攻が有った800年代かもしれない」
「あ。シャブリの時の話と同じね。セーヌ川やロアール川に面した都市がノルマン人に次々と襲われて。教会は難を逃れるために、もっと奥へ移転したという話ね。その移転先の一つがシャブリだった・・という話」
「ん。ノルマン人はジロンド川にもドルドーニュ川にも入り込んだ。彼らは、ドルドーニュ川の傍らに有ったル・ビュイソン・ド・カドゥアンLe Buisson-de-Cadouinにあったカラブルム修道院も襲った。そのときに修道僧たちはペリゴール伯爵の庇護を求めて、ここへ逃げてきたのかもしれない。実は1300年代に増設された大聖堂は、リモージュの聖サセルドスに捧げられている。彼はカラブルム修道院の創設者でもある」
「なるほどねぇ」
「サルラは長い間、聖サセルドス大聖堂を中心にした小さな集落だったに違いない」
「サルラって・・サルラ・カネダじゃないの?別の村なの?」
「あ~、サルラが近在に有ったカルラと併合してサルラ・ラ・カネダSarlat-la-Canédaになったのは1965年だ。それまでは歴史の中に登場するのはサルラだけだ。最初に名前が出で来るのは、聖サセルドス修道院について言及した文書でだ。1081 年だ。この文書ではペリゴールに有った6つの修道院の名前がある。ポナ、ベルヴェス、サンフロント・ド・ペリグー、ブラントーム、テラソン、そしてサルラだ。
当初、サルラは小さな村だった。しかしベネディクト会派が勢力を伸ばし始めると、忽ち事態は一変した。そして1153年にローマ教皇の直接管理下になると、その領地はアジャンとトゥールーズだけだけでなく、ペリゴール・ノワール全域にも及ぶようになったんだ。1200年代には大きな町へと変わっていたという。今の村の構造はその時に作られたものだ」
「こんな山の中なのに?」
「ん。この村のニックネームは'ラ ベレ アンドルミーla belle endormie'というんだ。眠れる森の美女という意味な。19世紀の頃からそう呼ばれていた」
「la belle endormie!すてきなニックネームね」
「そのサルラの繁栄がさらに進歩したのは、教皇ヨハネ22世が組み上げた司教区dioceseという管理法が成立したときからだ。サルラはこの地区の司教区座に指名された。1318年だ」
「司教区?管理法?」
「1300年代になると、教会は司教が管轄する教会区制を敷設し始めるようになるんだ。一番頂上に教皇がいる。そしてその下に司祭がいる。その司祭が教区という形でフランス国内を細分化する。この管理/統理する支配するやり方を具現化したのが教皇ヨハネ22世だ。これは見事に成功した。王の支配ではなく教会による支配だ。教区で管理されることで、それぞれの区域は安定化し繁栄を得るようになった」
「あら、支配という言葉を使いながら、その方法を称賛するの?」
「称賛はしない。事実だ。サルラも1318年に司教区座に指定されると、自動的に執政官/貴族/商人が集まり交易の中心地になった」

僕らは大聖堂を出て、ペロ広場を歩いた。少し先にペリゴール観光センターOffice de Tourisme Sarlat Périgord Noir(3 Rue Tourny, 24200 Sarlat-la-Canéda)がある。
「寄るよ」と僕が言うと嫁さんが笑った。
「さすがね、必ず観光センターを見つけるのね」
「餅は餅屋さ。調べるより聞く方が早いもんさ。
http://www.sarlat-tourisme.com/

無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました