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夫婦で歩くブルゴーニュ歴史散歩1-13/デジョン・マスタード

メゾンド・モーリス・アパートを出て右に5分ほどで城壁を出る。城壁を囲むD470を渡ってフォーブルグブルトニエール通りRue du Faubourg Bretonnièreへ直進すると右側にCafé de France Les Routiers(13 Rue du Faubourg Bretonnière, 21200 Beaune)+33380222544というカフェがある。ここで朝食を済ませた。ちょうど仕事へ出る時間だろうか。地元の人ばかりで観光客は僕らだけだった。
素敵なカフェオレとバケットを頂きながら昨夜の続きを始めた。
「僕らにとってコート・ド・ボーヌはワインの地だろ? でも史料にBeauneの名前が出るのは1200年代からなんだよ。出た時はワインと関わった地としてだけどね。それまでは知られていなかった。あるいは史料として特筆するものは何もなかったんだ」
「だって。あんなに旧い村なのに?!」
「ん。村に残っている史跡も大半が1200年以降のものだ。建物もなにもかもね」
「なにかあなたの話を聞いていると‥ボーヌってついこの間出来たばかりの新興地のように聞えるわ」
「はは♪そんなつもりはないが、400年代にサンマルテルが布教のために作った城壁は、何回も続く東からの侵攻で破壊されつくしていたし、ローマ時代から植えられていた葡萄畑も何回も荒れ地に戻っている。それでもゴーストタウンにならなかったのは、アグリッパ街道とソーヌ川を結ぶハブとしての機能が残っていたからだろうな。
たしかにコート・ド・ボーヌの表面の土を掃けばすぐ白亜石灰質という土地は、葡萄の栽培には向いていた。だから何度も畑が荒れ地に戻ったとしても、跡を継ぐ者が再度葡萄畑を興したんだ。‥逆に言えば地味薄い土地は他の作物には向かない。葡萄畑をやるしかなかったのさ」
「でも皆が葡萄畑をやったわけじゃないでしょ?」
「考えてごらん。ガリア人を制してこの地を我が物にしたゲルマン人は何を生活の手段としてたか?彼らは牧畜の民だったんだ。だから牧畜から派生した毛織物が産業としてあったんだよ」
「毛織物ってフランドル地方だけだったわけじゃないの?」
「おおお!フランドル!その通り。フランドル地域も同じようにゲルマン人に席巻されたところだ。だから牧畜から毛織物生産が盛んだった。ゲルマンの産業としての毛織物はフランドルだけじゃなくすぐ下のシャンパニューそしてブルゴーニュまで分布してたんだよ。
ブルゴーニュは、今でも肉加工品とそれに付随する製品が有名だ。これから行くデジョンマスタードもその中の一つさ」
La Moutarderie Fallot(31 Rue du Faubourg Bretonnière, 21200 Beaune)

「なるほどねぇ」
「もうひとつ大きな産業がある」
「なにそれ?」
「ガリアにラ・テーヌ文化をもたらしたものさ。鉄だ」
「鉄が採れるの?」
「ん。ボーヌの近くでね。ブランジーの露天掘り鉱山が有名だ。
ブランジーBlanzyはボーヌから西南に50kmくらいのところにある。クルーゾ=モンソー地域という。いまでもこの辺りの重要な工業地帯だよ。鉱山は枯れたが機械生産地区として有名だ」
「行くの?」
「行かない。でも前職時代に行った。ガリアの時代の残滓は有った」
Forges Royales De La Chaussade(Avenue Arnault de Lange
58130 GUERIGNY)
ゲリニーのラ・ショサード鍛冶場musee-de-la-mine-et-puits-des-glenons
https://www.bourgogne-tourisme.com/musees/musee-de-la-mine-et-puits-des-glenons-3
ラ・マシンの鉱山博物館
https://www.bourgogne-tourisme.com/sit/grande-forge-de-buff
は見るべき価値はある。ガリア人たちは此処で銅や鉄を採掘して、ローマからやってきた商人の持ってきたワインと物々交換していたんだ。それが産業化して、今でも残っている。
それともうひとつ、近年になって作られたクリスタル博物館が有名だ。
https://www.creusotmontceautourisme.fr/en/things-to-see-do/things-to-do/sites-and-visits/musee-de-l-homme-et-de-l-industrie-ecomusee-creusot-montceau-2286203
ガラスもこの辺りの名物だからね」
「ふうん。クルーゾ=モンソーって、鉱山と機械の町なんだぁ。ブルゴーニュからちょっと離れただけで、ワインの町というイメージからかけ離れちゃうのね」

La Moutarderie FallotはCafé de France Les Routiersから5分くらい。白亜の壁に黄色い文字でMoutarderieと書いてある。黄色いトラックが停まっていた。デジョンマスタードの色である。

https://www.fallot.com/ja/parcours-de-visites/parcours-decouvertes/

予約はしなくても入れる。2時間ほどのツアーだった。
https://www.facebook.com/moutardesfallot/
帰り、D470まで戻ってO Faubourg(2 Bd Bretonnière, 21200 Beaune)というレストランに入った。
https://www.ofaubourg.fr/
食事を此処で済ませた後、村内に戻った。


無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました