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星と風と海流の民#05/コロニア飛行場


グアムを朝早く出たMicronesian Airwaysは、途中で機体を替えながら、ポナペ島コロニア飛行場Kolonia Airfieldに着いたときは軽飛行機になっていた。
コロニア飛行場は意外に整備されていた。
僕はいつものように官制のカーキ色のワンショルダーバッグで、上から下までPXで買ったファティーグFatiguesだった。
イミギュレーションの向こうには髭面の朝黒い男が立っていた。ここでは「トシさん」と呼ぼう。
彼は僕の手を強く握るといった。
「マイク、生きてたか。びっくりしたぜ。よく俺がポナペに行くことを憶えてたな」
「行くっただろ。忘れたか?」
「ああ憶えてる。悪いな、それでもまさか・・ほんとに訪ねてくれるなんて驚きだ」
「言ったことは守る」
「ははは。お前らしいな。しかし昨日突然、サイパンのVFW(Veterans of Foreign Wars)から電話が掛かってきてNaval Base Guamの兵隊が俺に電話したいと言ってるってんだ。びっくりしたぜ。なんだ?と思って電話したらお前だ。よけいビックリしたぜ」
「そして24時間後にここにいる」
「ははは。それもまたびっくりだ」
僕は彼のボートに乗った。

彼はNavy diverだった。サイゴン川に潜っていた。戦死した兵士の遺体を回収していた。そうした仕事はカラードの仕事だった。ベトナムでも、汚れ仕事/危険な仕事は常にカラードが受け持っていた。ちなみに戦没者の1/3は黒人兵士だった。参戦した黒人は10%前後だったにも関わらずだ。
彼は黙々とその仕事をこなしていた。そして川底で遺体を見つけると、全て引き揚げた。それがベトコンだったとしてもだ。彼はそのことで何度も上司から叱責を受けた。ある時、サイゴンの小さなバーで彼と呑んでいたときに彼がこう言ったことがある。
「死ねば仏さまだよ。黄色も白も黒もない。みんな仏さまだ」僕はその言葉に鳥肌を立てた。

その彼が、突然10代の少女に恋をした。そして唐突に退役し、その娘と結婚してベトナムを去った。
その結婚式で、ポナペへ越すという話を聞いた。ポナペでdiver's lodgeを嫁と二人でやる・・と。
アガナ空港Agana AirportでDC-3の機影を見た時、そのことを思い出したのだ。
そうだ!ポナペへ行こう。ナンマドールへ行こう・・と。

「ナンマドールへ行きたいんだって?」トシさんが運転しながら言った。
「うん。ガイドしてもらいたいんだ。それと泊めてもらいたい」
「ああ、全然かまわないが・・しかしまたなんでナンマドールなんだ」
僕はショルダーバッグからヨレヨレの本を出した。ヘイエルダールの『アクアク』だ。

「これだよ」
「?」
「イースターのモアイは皆内陸を向いて立っている。ただ一群だけ、並んだまま海を向いている立ってるモアイがある」
「それで?}
「そのモアイが見つめているのがナンマドールだ」
「・・ふうん。何キロ離れている?」
「8000kmだ」
「すげえな。ナンマドールは何度も客を連れてってるが、そんな話は初めて聞いた」

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勝鬨美樹
無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました