東京島嶼まぼろし散歩#09/隼人の島を見つめて02
「カヌーで太平洋を渡ったなんて信じられないわ。カヌーって、おおきな木を削った丸木舟でしょ?」
「ん。丸木舟を制作するときに使う工具が、太平岸には遺跡として広く分布している。東南アジアから太平洋の島々に分布する島嶼には円筒石斧というのが見つかる。これがそうだ。このへんの調査は急速に進んでいてね、フィリピン諸島から台湾、琉球列島、九州、四国、本州中央部、そして、南に向かって伊豆諸島から小笠原諸島、マリアナ諸島、さらにヤップ、パラオ諸島へと北西太平洋を囲む黒潮圏とも呼べる環状の島嶼地域に、円筒片刃石斧が広く分布していることが判ってきた」
「フィリピンというのは、黒潮の出発点ね。もうそこから丸木舟製作器具があったわけ?」
「おそらくスンダランドで開発されたのかもしれない。スンダランドが存在していた時期はチャオプラヤ川がそこまで入り込んでいたから、水利を利用する文化は早くからあったのかもしれない。」
「スンダランドが水没し始めて、そこに暮らした人々が丸木舟を利用して、小高い山が島になった・・陸として残ったところを求めて移動したのね」
「ん。長い時間かけてね。そうだったろうな」
「その人たちが日本列島まで進んできたわけ?」
「ん。1万2000年くらい前には、日本列島に達していた。縄文時代草創期だ。彼らが使った丸木舟製作用石斧が鹿児島県南さつま市栫ノ原遺跡で見つかっている。(1992)栫ノ原型丸ノミ形石斧というんだけどね。これは割と狭い地域でしか見つかってない。沖縄、奄美、九州あたりなんだ。おそらく沖縄本島から奄美諸島を通って南九州、九州西岸部へ広がったんだろうな。黒潮の流れる道だ。」
「縄文人も、弥生人と同じく南から伝搬したものだったのね。それも海洋民族だったわけね。学校では縄文人は狩猟採集民族だと教わったけど‥」
「ん。あたらしい調査は、それを覆している。原日本人である縄文人はスンダランドが沈み始めたころ、北進した古アジア人が長江流域から東シナ海を横断し、あるいは南西諸島を経由して、さらには南太平洋から黒潮を伝って筏や丸木舟で南九州に辿り着いた海洋民だったに違いない。まさに隼人の民だ。海幸彦だ。隼人盾とか縄文遺跡に多々出現する渦巻き模様がボルネオなどに残る渦巻き紋に酷似しているのは、そのためだ・・・そして鬼海カルデラだ。
「なに?鬼海カルデラって??」
「鹿児島県南方およそ50kmの硫黄島と竹島に跨る海底にあるカルデラだ。九大にいた方で地質学者だった本唯一が発見した。アカホヤと呼ばれている地層は、鬼海カルデラの爆発で広がった火山灰で出来ている。アカホヤが広がったのは約200万km2、体積は約100km3だ。アカホヤとうのは「何も役に立たない」という意味らしい。拡散は北海道を除いて日本全国に広がっているらしい」
「日本中に火山灰が広がるほどの大爆発が有ったの?」
「ん。約7,300年前にあった。猛烈な大噴火だった。その時は佐多岬沖40㎞の海底が中心だった。膨大な火砕流が海中海上を飛び回り、巨大な津波が起きた。」
「エーゲ海のサントリーニ島と同じね」
「ん。あの爆発でエーゲ海に有った文明は一夜で消え去った。鬼海カルデラの爆発もそうだ。7000年前に日本列島まで北進してきたスンダランド系の文明は、すべてこの大爆発で消え去ったんだ。とくに最後に起きた幸屋火砕流は巨大で、1000年近く爆心から近かった屋久島は無人地帯になっている」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgeography/118/6/118_6_1254/_pdf
「そんなにすごい大爆発だったの・・」
「ん。人類史上最大はインドネシアのスンバワ島にあるタン ボラ火山の爆発(1815)なんだ。タンボラ火山は直径60km海抜2850mの火山でね。 何回かに渡って起こしている。1812年から始って15年4月に大きな爆発を起こた。最後の爆発は３ヵ月も続いてね。こ約1万人が死亡し，そのあと餓死・病死者がスンバワ島で38,000人，隣のロ ンボク島で44,000人が出た。死者の総計は92,000人．犠牲者数でも史上最大の爆発だった。おそらく鬼海カルデラ大爆発はタン ボラ火山爆発級だったのかもしれない。」
「そんな大爆発が有ったなんて、初めて聞いたわ」
「2016年に大きな海底調査隊が起こされている。このときに直径約10 km、高さ約600 m、体積約30 km3の巨大な溶岩ドームが確認されてる。そして現在もなお活発な噴火活動が続いていることが判った。単一の火口に由来する溶岩ドームとしては世界最大規模なんだ。この溶岩ドームからは今でも火山性ガスの気泡が噴出して。。おそらく地下に今でもマグマ溜りが存在するんだろうな。それなんで薩摩硫黄島はランクAの活火山に指定されている」
「爆発の可能性はあるの?」
「ある。それも史上最大ともいえる爆発になる可能性を秘めている」
「おそろしいわね・・」
無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました