ナポレオン三世の足跡を#06/パサージュ・クーヴェル
パレ・ロワイヤルを北にすこし行くとギャルリ・ヴィヴィエンヌGalerie Vivienneに着く。
「あら。こんなにパレ・ロワイヤルに近かったの?」嫁さんが言った。
此のパサージュは、僕のお気に入り書店ジュソームが入っているので、嫁さんもよく知っている。
「でも、ここって買うものなにもないパサージュなのよね」
「まあ、そう言うな。今回の目的はナポレオン3世に花開くフランスの栄華、その夜明け前を見ることなんだ。だから何も無くなったパレ・ロワイヤルを抜けて来たんだ。」
「ふ。それ、あなたの目的ね。私のじゃない。買い物するところが無ければ、散歩。」
すいません。 ま。散歩の続きだと思って付き合ってください。
「パレ・ロワイヤルが屋内ショッピングセンターとして成功すると、2匹めのドジョウを狙う連中がすぐに現れた。7月王政の前だ。
・・実はフランス革命ってぇやつは、ブルジョアたちの資金援助に乗せられて狂気のようにフランス全土に吹き荒れて、王と貴族と僧侶たちを殺しまくちた椿事だ。だから、いわゆる施政を司れるほどインテリジェントのある奴らは僅数しか残っていなかった。明治政府もそうだけどな、下克上で起きた政変は須らくその道を行く。
そして革命政府は、何とか自分たちの施政を守ろうと国債を出しまくったんだ。なりゆき構わずね。いまのアベ/クロダBOJと一緒さ。しかし所詮は素人集団の政府だから、あっと云う間に返済不能になった。そうなりゃアタマの良いヤツが出てくる。その紙くず同然の国債を買い集めて、それをバックボーンにしてパサージュを作る権利を政府に認めさせた連中が出たんだ。」
「パサージュ?」
「パサージュって抜け道って意味だ。当時、大通りには建物が連々と繋がっていて、交差点が少なくて、すごい不便だったんだ。パサージュってぇのは、その大通りを隣の大通りと結ぶ近道として造られたんだ。ついでに両脇に店舗を並べた。・・入り口に『ヌケラレマス』って表札だしてね。」
「それは嘘ね。『ヌケラレマス』は向島の花街でしょ。」
あ。気がつかれてしまった・・
「とにかく、このアイデアは秀逸だった。忽ち大人気になったんだ。そして雨風から通行客を守るために、ガラスと鉄柱でファザードを作った。だからただのパサージュじゃなくて、パサージュ・クーヴェル・・光の回廊なのさ。」