見出し画像

カスティヨン07/サンテミリオン村歩き#59

https://www.youtube.com/watch?v=ULBANDQOABs

Château d’Aiguilheを出たのが16時過ぎになった。M氏のVTCは南進しD123へ向かった。
「時間が有れば近くにサン・フィリップ・デギュイユSaint-Philippe-d'Aiguille村がございますが、今日はあきらめましょう」M氏が言った。
「シャトー・デギュイユのデギュイユもサン・フィリップ・デギュイユという聖人の名前なのね。カスティヨンの村って聖人の名前が多いのね」嫁さんが言った
「そうです。使徒フィリポのことです。村の中央には聖フィリポ教会Église Saint-Philippe(Bourg-Ouest, 33350, Saint-Philippe-d'Aiguille)がございます」M氏が言った。
「使徒フィリポ?」
「12使徒の一人だよ。ペテロやアンデレと同じ、ティベリア湖畔のベツサイダ出身のガリラヤ人だ」
僕が言うと、M氏がバックミラー越しで僕を見た。
「もともとは洗礼者ヨハネの弟子だ。ヨハネの福音書Évangile selon Jeanにその話がある」
「あ・じゃ今まで出てきた聖人の中ではヨコヅナ級なのね」
「その通りだ」僕が通訳すると、M氏が「YOKOZNA!」と言って哄笑した。
D123は葡萄畑の中を走る道だ。途中、右側にChâteau la Pierrièreへの小さな看板を嫁さんが見つけた。
「この辺りもワイナリーが多いのねぇ」
「Château la Pierrièreは素晴らしいワイナリーですよ」M氏が言った「カスティヨンにもう一泊していただければ、もう少し色々とご案内できるのですが・・」
Clos Puy Arnaudには15分ほどで到着した。予約をした時間を大幅に越えていたが、レセプションは笑いながら受け入れてくれた。
Clos Puy Arnaud - Thierry Valette(7 Puy Arnaud, 33350 Belvès-de-Castillon)
http://clospuyarnaud.com/
レセプションに手続きを済ませて、ツアーに参加した。
「此処は19世紀に作られたワイナリーなんだが、いまのオーナーのティエリー・ヴァレットだ。彼はパヴィ一族の一人だよ。彼が此処を買ったの2000年。当初からビオディナミを目指していたらしい。2006年に認証を取っている。ニコラ・ジョリーというビオディヴァンが管理している」
「ここもビオディナミなの?」
「ん。製法に特徴があるな」
僕は目の前の開放槽を指差した。ツアーの女性はClos Puy Arnaudの特徴として、機械を使わない馬での耕作。そして農薬ではない天然ハーブによる成長剤(シュタイナー法)すべて手摘みによる収穫。天然酵母による発酵。ノン・フィルターで瓶詰めすることの説明をしてくれた。そして最終発酵はアンフラ樽に仕込む。大きなアンフォラ壺が幾つも並んでいて、嫁さんは驚嘆していた。
「実際に使われているアンフォラは初めて見たわ!」
ティスティングに移ると何種類かのボトルが並べられた。
「見てごらん。エチケットに五芒星が付いてるものがあるだろう?」
「ええ。サッポロビール?」
「ヒトデ石灰岩の意味だ。サンテミリオンのグランクリュ地帯を構成している石灰岩と同じ地域だという意味さ。海だったころに繁殖していたヒトデや小さな貝の化石だ。硬質だけど砕けやすいのが特徴で、大理石のような石灰岩と大きく違う。特有のミネラル感を産み出してくれる」
「ふうん。なるほどね。だから説明がないとサンテミリオンワインと勘違いしちゃうのね」
「おお、サンテミリオンと見ますか!それは素晴らしい」
ツアーの途中で僕がシュタイナー式の成長剤の話をするとガイドの彼女は喜んで、小さな琥珀色の板状になった成長剤をティスティングの時に皿に入れて持ってきてくれた。

「成長剤はボウズ・ド・コルヌ Bouse de CornとコルヌシリカSilice de Corneから作り上げます。水溶性なので、これを水で溶いて畑に散布します。だいたい100リットルくらいに薄めます」と説明してくれた。
「ぜひ触ってみてください。大地の息吹を感じてください」
嫁さんは恐る恐る、琥珀色の破片を手にした。そして僕にそれを手渡した。
「シュタイナーの成長剤も初めて見たわ!今回は初めて見た話ばかり・・」


無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました