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ジョージアムーン

コロナ騒ぎで休業中に、調子に乗って店にストックしていたハードリカーを大半飲んじゃった。仕方ないので自宅にストックしてるハード系のものを持ってこうかなぁと物色中に、口が開いてるジョージアムーンを発見。おやおや。そう思って呑み始めた。

ジョージアムーンって、密造酒時代の雰囲気を満々に持ってるコーンウィスキーで、ごく普通のピクルスかなんか入っていそうな瓶に入れられて、安っぽい薄茶色のラベルが貼ってある。それでラベルには「蒸留して30日以内」と書いてある。ついでによく見ると「ジョージアの丘の秘密」とも書いてある。いいねぇ。moonshinerの時代の伝統をきちんと守ってますよってぇ意味だ。

moonshinerというのは、密造者のことね。
彼らは真夜中、月明かりに乗じて山奥で密かにウィスキーを作った。で。ムーンシャイナー・・というわけ。
なぜ密造したかというと、ジョージ・ワシントンのせい。

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ジョージ・ワシントンが、英国との戦争に勝った後、国費を稼ぐためにウィスキーへ課税することにしたからだ。
アメリカ国内のウィスキーは、メイフラワーの時代に続く第二世代の入植者によって1700年代から作られている。原料はライ麦と普通の大麦。作っていた人々の大半はアイルランドからの移民だった。したがってアメリカ製ウィスキーは凡てwhiskeyと書く。アイルランド語だ。対してスコットランドはwhiskyね。こちらは英語だ。ちなみに日本製はwhiskyと書いてある。

独立戦争が終わって、ようやくアメリカは国らしい形になってくんだけど、国家としてまだまだ貧しかったからね。ジョージ・ワシントンは、ウィスキーに課税して、その収益を国費に充てようと考えたわけだ。
しかしこれは巧く行かなかった。
「ふざけるな!」ってわけでね。酒造者たちは皆んな揃ってさっさと南部に逃げちまったんだ。そして南部で、くさるほど有ったトウモロコシを使って独自のウィスキーを作り始めた。それが今のバーボンになったというわけ。
南北戦争に至る利害の確執は、このへんからも始まってるわけですな。

えっと・もちろん最初のコーンウィスキーは樽に入れて貯蔵したりしてなかったんですよ。蒸留したままのやつを、そのまま飲んでた。まあ謂わばカストリ酒みたいなもんね。当時のコーンウィスキーは、目ぇ散るなんて云う酷いもンが、当たり前に氾濫していたようだ。
西部の男たちは、これをショットグラスでキュッ!と一気飲みしてた。

樽に入れるようになったのは・・密造だったからね。バレないようにニシンを漬けてた樽に入れて隠したのが最初らしい。でも、そのままじゃニシン臭くてどうしようもない酒になっちまうから、樽の中を焼いて臭いを飛ばすようにするというアイデアを思い付いた牧師が出てきて、それを皆んなが真似するようになったからだという。
おかげでバーボンは、スコッチみたいに有色になった。

ジョージアムーンは、そんな風に色を付けて、まるでスコッチみたいな面した「何年物・何年を謳う」コーン・ウィスキーを蔑むように「バーボンなんて、所詮下種な酒なんだよ」と、言いたくて作られている酒だ。

あれぇぇ。
講釈書いてるうちにジョージアムーン、飲み終っちまった・・

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無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました